when to cry
-chapter 11-


9月5日の夜。
今回の討伐では明彦、真次郎、乾が彼らのリーダーによって編成された。
残ったメンバーは、休むことも無く仲間をサポートする風花を見守る。

その中で、は大きくため息を吐いた。
少し散歩をしてくると言って、単独行動をした後のことだった。
それに気づいた美鶴が気遣う。

「元気がないな、?」
「ちょっと厄介な事になったなぁと思って」
「は?」
「いや、こっちの話」

影時間になった事で、超人的能力を得ている状態のは言葉を濁した。


は、ストレガの一人であるチドリが順平と接触したのを見つけてしまった。
順平が心配ではあったが、チドリも無意味に人を殺めることはしない。
彼女は黙り込んで、討伐に行った仲間が早く帰ってくる事を願った。


しかし、ゆかりはその言葉を違う意味にとらえた。
にやついた顔で、の腕をつつく。

「なになに?誰を選ぶか悩む、とか思っちゃってるの?」
「選ぶ?何のことを言ってるの?」
「またまたぁ。モテまくってるじゃない、ってば!」

大変だろうね、とゆかりが言葉を繋げて話し続ける。

「強くて格好良い真田先輩に、年下なのにしっかり者の天田君。
 それに、無愛想だけど優しい荒垣先輩。誰が気になってるわけ?」
「え、気になるって、別に、私は・・・」
「これは、恋バナというものでありますか、ゆかりさん?」
「そうよ、アイギス。一緒に白状させましょ!」
「了解であります」

二人がじりじりと近寄り、は美鶴に助けを求めた。
だが、彼女もその話で盛り上がる。
よほど待機しているのが退屈だったのだろうか。

「無愛想で優しいといえば、リーダーもそうだな。どうなんだ、?」
「どうなんだ、と言われても」
「白状するであります」

問い詰める彼女達に、は逆に質問をした。

「ていうか、彼らが私を恋愛感情で好きだとは思えないよ」
「何言ってるの。天田君は、思いきりアプローチしてるじゃない」

自覚はしていることをつかれて、言い返せなくなる。
それをいい事に、ゆかりは力説した。

「真田先輩だって、分かりやすすぎ。本人が気づいてないのが驚きなくらいだよ」
「あいつは、恋沙汰など興味が無いからな。仕方の無いことかもしれない」
「それにしたって、ひどすぎますよ。明らかに他の子との接し方が違うのに」

本人がいないのを言い事に、彼女は言いたい放題喋り続ける。

「荒垣先輩も、と話す時は少し雰囲気が和らぐのよね」
「それなら、恋愛感情でなくてもなるでしょ」
「これは女の勘よ!絶対に荒垣先輩ものことが好きだわ」
「確かに、さんと話している時の彼は動悸が激しくなっています」

アイギスの言葉で、ほらみなさいと、ゆかりはを睨む。
は心の中で、互いに皆には言えない秘密があるからではないかと考えた。

「リーダーの場合は、誰にでも優しいから有り得ないだろうし。
 順平もゴスロリの女の子が気になってるっぽいから除外でしょ」
「除外するのに、何で睨まれなきゃならないの、私は?」
「そうだぞ。伊織はともかく、リーダーもに好意を寄せていたら、どうする?」
「それは絶対にありません!」

美鶴に食いかかる勢いに、二人はたじろぐ。
話に参加していない風花やコロマルまでもが、彼女の圧迫感に押されていた。

とりあえず、今はそういう事にしておいた方が良さそうだ。
そう判断して、彼女の邪魔をしないことにした。

「で?は誰が好きなわけ?」
「白状するであります」
「この際、言ってしまったらどうだ?」

またしても三対一で不利な立場に陥ったは、帰ってきたメンバーの姿を見て駆け寄った。

「リーダー、助けて!皆が怖いの!」
「あ、!彼の後ろに隠れてないで出てきなさいよ!」

彼の背中にしがみつくを見たゆかりが怒る。
まぁ落ち着いて、と彼が宥めていると、乾が彼らを引き剥がした。

「そういう時は、僕に助けを求めてよ」
「そんな事は、どうでもいい。それより何をもめてたんだ?」

ライバル心むき出しな乾にも気づかず、明彦は問う。
それに美鶴が応じた。

の想いを寄せている人が、誰なのかを聞きだそうとしただけだ」
「だから、私は・・・」
「あの、すみません。ちょっと、いいですか?」

少しざわついた男達を前に、風花が口を開いた。

「順平君の反応が見つかったんですが、一人じゃないみたいなんです」
「・・・ストレガかもしれないね」

順平の事を忘れていたが、付け加える。
その場は一気に緊張が張り詰めた空気になり、メンバーは急いで寮に帰ることにした。
全速力で走る皆の後をついていた真次郎は、隣のに話しかけた。

「大丈夫か、お前は」
「相手はチドリだし、なんとかなると信じたいかな」

そうか、と彼はそれだけを呟いた。







「ストレガの様子は、どう?」

チドリを病院に軟禁して一日が経つ。
玄関で出会った明彦は、の質問に答えた。

「まだ精神的に話が聞ける状態じゃないな」
「そっか。それは、辛いね」
「まあ、ゆっくりやるしかないさ」

は、疲れた笑みを浮かべる明彦の頭をそっと撫でる。

「何をやってる?」
「元気が出るおまじない。て、今決めたんだけどね」

ぺろりと舌を出して微笑んだ彼女の気遣いに明彦は感謝した。
微笑み返すと、彼女の手に財布があるのを見つける。

「なんだ、今から出かけるのか?」
「あ、うん。夕食をまだ食べてなくて」
「それなら、一緒に買いに行くか?俺もまだなんだ」
「行く、行く!」

その夜、二人は海牛で食事をした。









-back stage-
管理:ゆかりッチは、やっぱ主人公が好きだという設定で。
伊織:だから、話にあまり出てこなかったのか。
管理:そうなんですよ、主人公寄りにしたら思い切りゆかりと戦ってもらう事になるから。
岳羽:た、戦うって・・・激しそう。
管理:激しいのよ。ドロドロなのよ。だから諦めモード。
アイ:ですが、これは「逆ハー」でなければならないのです。
管理:だから頑張って、また出したよ?主人公。
コロ:ワワン!
アイ:この程度では駄目だと言っています。

2007.02.06

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