what you want
-chapter 12-



明日も夕飯を一緒にするか。

明彦の誘いを受けたは、だらしなくソファで寝転がって待っていた。
約束していた時間になっても、彼は帰ってこないのだ。

「お腹が空いた・・・ひもじいよー」
「真田サンに連絡だけしておいて、食べにいけばいいじゃん」

一人用のソファで雑誌を読む順平が提案する。
向かいのソファでパソコンに触れていた風花は苦笑していた。
だが、は力なく返事した。

「無理。もう動く気力もない。喋る気力もない」
「有り合わせで作ったモンでもいいなら、食うか?」

香ばしい匂いを放つ真次郎は、チャーハンを手にしていた。
それを寝転がったままのが手を伸ばそうとする。
肯定ととらえた彼は、片手をの背に回して体を起こした。

「ちゃんと座って食え」
「いただきます」

黙々と食べるを放ってどこかへ行ったかと思うと、今度は飲み物を持っての隣に座った。
それをテーブルに置く。
手を休めたが、それを取った。

「そこまで腹空かしてたのか」
「美味しいよ、シンジ」
「だからと言って、慌てて食う必要はねえだろ」

笑いながら、真次郎はの口元に手を伸ばした。
彼は人差し指に摘んだ米粒を見せる。
は平然とその指を銜えて米粒を取った。
真次郎は目を見開くが、すぐにため息を吐く。

「お前、今のは絶対に他の奴らにするんじゃねえぞ」
「知らない人には、やってないってば」
「当たり前だ。てか、知ってる奴でもするな」

二人の会話が耳に入ってしまう順平は、ちらりと風花の様子をうががった。
彼女も照れくさいらしく、顔を赤くしてパソコンの画面を眺めている。

こんなバカップルみたいな会話、天田が聞いてたらどうなってたんだろうな。
勉強をすると言って二階へ上がった乾の顔を思い浮かべ、順平は冷や汗をかいた。

「ごちそうさまでした」

コーヒーテーブルに空になった皿を置き、が合掌する。
それを取り下げようと真次郎が手を伸ばしたが、その前には彼の膝の上に頭を置いた。

。動けねえから、どけ」
「食べると、眠くなるよね」
「知るか。立ち上がるぞ」
「アキが帰ってきたら、よろしく言っておいて」

は、仰向けになると微笑んで目を瞑る。
数秒後には寝息が聞こえた。

「寝るの、はやっ!」

ツッコミを入れた順平と同じ思いでいながら、風花は真次郎の身を案じた。

「あの、荒垣先輩。ちゃんは放って動いた方が良いですよ」
「あ?俺が動きたくなったら、起こせばいいだろ」
「いやいや、そうじゃないんスよ。こいつ、いつもソファでそのまま朝を迎える事が多くてですね」

真次郎が根は優しいことを分かっている二人は、の習慣を教える。
そうでなければ、彼はきっと朝まで彼女に付き合っているだろう。
彼らの言わんとすることが分かった真次郎は、ポケットから手を出した。

「仕方ねえ。部屋に運んでくる」

舌打ちをして、彼がの頭部に触れた時だった。
慌ただしく明彦が寮に帰ってきた。

「悪い、!遅れて・・・」

大声を出していた明彦は、が眠っているのを見つけて声を静めた。
だが、彼女が真次郎に膝枕をしてもらっている事を不審に思う。
彼らに近寄ると、真次郎は顔をあげての伝言を口にした。

「お前に、よろしくだとよ」
「夕飯は食べたのか?」
「俺が作ったのを一瞬で食ったな」

真次郎の手がまだの頭に触れているのを見て、胸の奥が痛む。

名も知らない仲だと言っていたわりには、馴れ馴れしいものだ。
心の中で吐き捨てると、明彦はの体を抱えた。

「アキ?」
を上に運ぶんだろ。俺がやっておく」
「ああ・・・頼む」

真次郎は明彦の有無を言わさぬ雰囲気に従った。
そして、同時に思う。
ここまで態度に表れているのに、どうして本人はが好きだという自覚がないのかと。




三階の部屋に入り、彼女のベッドに体を休ませる。

明彦は安らかに眠る顔を優しく見守りながら、布団をかけた。
するとは呻き声をだし、彼女を起こしたか心配になる。
しかし、彼女は起きる様子は無く、寝言を発した。


「タカヤ」


その名前を明彦は聞き逃さなかった。





確かに、は『タカヤ』と言った。

彼女の寝言を聞いて、数日が経つ。
明彦は、ずっと悩まされていた。

何故、彼はその一言に悩んでいるのか理解できなかった。
しかし、無意識に彼女の呼んだ相手が誰なのか、気になって仕方ない。
授業も上の空だった。

困った明彦は、朝からラウンジのソファで盛大なため息を吐く。
それを見たゆかりが話しかけてきた。

「どうかしたんですか、先輩。この間から様子が変ですよ?」
「ちょっと悩んでるだけだ」
「悩み事って、のことですか?」
「な、どうして分かったんだ!?」

誰だって、見てれば分かるわよ。
顔を赤くした明彦を見て思う。
しかし、思った事は口にしないで、ゆかりは悩みを聞いてみた。

「実は、あいつの寝言を聞いたんだが・・・『タカヤ』と言っていたんだ」
「で、先輩はその『タカヤ』という男が、とどういう関係なのか気になるんですね」
「すごいな。岳羽は、超能力者か?」

だから、分かりやすいんだってば。
呆れながらも、彼女もその人物が気になったので、明彦に協力することにした。

「分かりました。私が今夜聞いてみますんで、先輩も夜は居てくださいね」

ゆかりに感謝すると、先ほどよりは元気になった明彦は学校へ向かった。







その夜、ゆかりはとダイニングテーブルで雑誌を読んで楽しく話し合っていた。
カウンター席では明彦がグローブを手にし、たまに脇に立っている真次郎に話しかけたりしていた。
しばらくすると、ゆかりは本題に入った。

「ところでさ、。『タカヤ』って、誰なの?」
「え?」

それまで笑っていたの表情が固まる。
その名を耳にした真次郎も注意深く話に聞き入った。

「この間、寝言で言ってたから、気になってたんだ。もしかして、好きな人?」
「えーっと、タカヤっていうのは、友達だよ」
「友達?それだけ?」
「え、それだけって聞かれても・・・」

タカヤはストレガ。
そんな事は口が裂けても言えないと嘘を考えるが、なかなか思いつかない。
答えないでいると、真次郎がに近づいた。

。この間の飯代、払え」
「へ?なんのこと?」
「チャーハンだ、チャーハン。残り物で作ったとはいえ、食費が無駄にかかったからな」
「シンジのケチ。それぐらい、良いじゃん」
「よくねえから、言ってるんだ」
「はいはい、分かりました。ごめんね、ゆかり。ちょっと部屋に行ってくるわ」

駆け足で階段を上がっていくのを見届けると、真次郎はカウンター脇に戻った。
その様子を見た明彦とゆかりが疑問を抱く。


彼も、その人物について知っているからを助けたのだ。
それは、一体何故なのか。
彼らの間に通じ合っているものは何なのか。

結局、お金を渡しに帰ってきたに、二人はそれ以上聞くことはできなかった。







-back stage-
管理:シンジ・オンパレード(笑)
岳羽:笑い事じゃないわよ!出てくるキャラが偏ってきてるじゃない!
管理:けっ。どうせ、シンジは、すぐいなくなるじゃん。
アイ:ヤケクソになっているでありますね。
桐条:リーダーと天田の登場をもう少し増やすことも考えたらどうだ。
管理:・・・考えておく。

2007.03.22

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