when to cry
-chapter3-
7月7日。
次の満月の夜が訪れた。
「あれだけ、今夜は早めに帰ってくるよう言ったはずだが・・・」
寮では、眉間に皺を寄せる美鶴。
そして、それを宥めようとするメンバーが揃っていた。
「どうして、がここにいない!?」
「ま、まぁまぁ。もう少し待ってみましょうよ、ね?」
「もういい!山岸、敵の位置を探ってくれ。ついでにのもだ」
言われたとおり、風花はシャドウ反応を探る。
白河通りにシャドウを見つけた後、風花は言い難そうに続けた。
「先輩の反応も同じ所から見つかりました」
「何だと?」
彼女の意外な居所に、皆が驚く。
はシャドウを察知する能力があるのか幾月に聞いてみるが、彼女にはそんな力は無いという。
個人的にその場所に用事があるのか、と余計な事を皆は考え始めた。
「どのみち、今からそこへ行くんだ。本人に聞けば良いだろう」
明彦の意見により、メンバーは白河通りへと移った。
「では、の事は頼んだぞ、明彦」
寮で討伐メンバーに選ばれなかった明彦に美鶴が命じる。
彼は、大物のシャドウと戦えない苛立ちを隠せずにいた。
先にホテルの中へ入っていった仲間を見て、ため息をつく。
「まったく、何で俺がアイツの世話を・・・」
「あの、真田先輩。先輩は一階の奥の部屋にいるみたいです」
「分かった」
すぐにでも用を済ませたいのか、明彦は風花に振り向きもせず中へ進んでいった。
何やら外が騒々しくなり、はお湯の詮を止めた。
ポタポタと水滴が垂れるのも構わず、シャワー室から出て行く。
誰かが彼女の名を呼ぶ声がしたので、風呂場にあったバスローブに身を包んでからドアを開けた。
「・・・アキ?」
「!そこに居たのか」
「え、何でここにいるの?てか、どうやって入ったわけ?」
廊下でうろつく明彦の姿を発見して、は問いただす。
だが、明彦は彼女に近づくどころか遠のいていった。
「どうしたの?」
「お、お前!そんな格好で何をやってるんだ!?」
顔を真っ赤にした明彦に聞かれたは、自分の姿を再確認する。
どこにも問題が無いように思えて、は首を傾げた。
「シャワー浴びただけだけど?」
「ま、まさか、その・・・アレをするつもりだったのか?」
「アレ?ああ、セック・・・」
「わざわざ言わなくていい!」
アキは変なところで、恥かしがり屋だなぁ。
彼の気も知れず、は明彦の様子を楽しそうに見ている。
慌てふためく彼から今が影時間であることを聞くと、は明彦を部屋に招きいれた。
その方が、シャドウから身を守れると考えたのだ。
明彦が今夜の作戦について話してる間に、シャワー室でが服に着替えていた。
その時に、明彦も何故がホテルに居るのかを聞きだした。
彼女は、モノレール駅で適当にくつろいでいるところを知らない男に声をかけられたらしい。
『美味しいフランス料理を食べに行かない?』という誘いにのって夕食を済ませると、このホテルへ連れてこられた。
ようやく男が何を目的でに話しかけたのかを理解した彼女は、
影時間の前になるまで会話を粘り、風呂に入ると言って何とか男と寝ずには済んだ、と明彦に教えた。
そして、影時間の際にホテルから出て行こうと考えたことも。
「十七にもなって、食べ物に釣られるか?」
「フランス料理食べたかったんだもん。あ、その男が言うように美味しかったよ?」
「そういう問題じゃないだろ」
ベッドの上にある棺を見ながら、明彦は呆れた。
彼女は、自分が影時間を知らなかったら、どうやって逃げる気でいたのだろうか。
考え始めると恐ろしいことしか浮かばないので、彼は忘れることにした。
「それで?私たちは、これからどうするの?」
着替え終わったが、明彦の前に立つ。
しかし、明彦は話よりも、彼女の濡れたままの髪の方が気になった。
風呂場に無造作に置いてあったバスタオルを取って、の髪を乱暴に拭き始める。
「あいつらがシャドウを倒して帰ってくる時に合流すればいい」
「痛いよ、アキ。もうちょっと優しくして」
「だったら、自分で拭け!」
「ちぇっ。分かった、黙ってる」
「だから自分で拭け!」
手は休まずに、明彦はに怒鳴った。
と明彦は、シャドウ討伐を終了した他の仲間と合流するとホテルを出た。
簡単に彼女が何故ここに居たのかを説明すると、美鶴には二度と知らない人にはついていかないよう釘を刺された。
分かりました、と大人しく聞き入れたを信用しているのかどうかは、怪しいが。
先立って帰った明彦と美鶴の後を二年生の三人が追う。
その際、はずっとホテルの向かいにあるビルの屋上を見つめていた。
「先輩?置いて行っちゃいますよ?」
ゆかりがに声をかけて振り向くが、そこには誰もいなかった。
心配した方が良いか、ゆかりは悩んだ。
しかし、の今までの行動を振り返り、悩むことを止めた。
気まぐれで何処かへ行ってしまったのだと解釈し、そのまま寮へ帰っていった。
「お久しぶりですね、。元気そうで、なによりです」
「本当、久しぶりだね。タカヤ達も相変わらずそうで、なにより」
屋上で特別課外活動部を見ていた三人のもとへ、が辿り着く。
彼らが動じないのは、始めからが来る事を察していた事を悟らせた。
「それより、今までどないしとったんや?急に連絡が途切れたから驚いたわ」
「あはは。ごめんね、ジン。色々あったんだよ」
苦笑するに対して、ジンが指摘した。
「また知らん人についていったんか?」
「あ、それは今夜の場合だよ!」
「自慢できることやないやろ」
素早いツッコミに精神的に耐えられなくなったのか、は彼に抱きついて誤魔化した。
ジンは、仕方なく彼女の髪を撫でる。
それは、彼が彼女を許している証拠だった。
「それで、は今、彼らと過ごしてるわけですか」
「そうだよ。彼らがやってる事には、全くと言っていいほど参加してないけど」
「具体的に、何をやっているのです?」
タカヤに問われて、はジンの腕の中で考えた。
「別に、シャドウ討伐もハッキリした理由は無いかな。満月の夜に大物が現れるから、倒すだけ」
「そうですか・・・。これからも、情報をこちらに伝えてくれませんか?」
「良いけど、私への見返りは?」
「欲しいモノなら、何でも」
「ふむ。じゃあ、タカヤからのチューで」
なんて、冗談だよ。
そう言おうとする前に、タカヤはの唇を彼のと重ねる。
吃驚して口が聞けない彼女を放って、タカヤは不敵な笑みを浮かべた。
「契約成立です。では、情報が入った時は連絡を下さい」
消えていったタカヤを追うようにジンとチドリも消える。
は一人、そこに取り残された。
-back stage-
管理:うきゃvちょっぴりストレガ寄り?
真田:『ちょっぴり』じゃないだろう、これは。
伊織:良いじゃないっすか、先輩。俺とか、名前すら出てこなかったんすよ。
岳羽:あれ、本当だ。
山岸:あ、でも『彼』も出てこなかったよ。
管理:皆?ヒロインとストレガの関係とか知りたくないの?
桐条:それは、後に分かるのだろう。ならば、聞く必要もない。
管理:・・・書かないでやろうかな、関係。
全員:拗ねるな!
2006.11.9
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