when to cry
-chapter 5-



男子と海を過ごすことを遠慮し、森の中へ涼みに行った女子。
毎度の事ながら、はそれに参加していなかった。
彼女は朝を寝過ごし、皆とは遅れた時間に外へ出た。


海に行けば誰かに会えるだろうと砂浜へ向かうと、確かには三人の仲間の姿を目にした。

三人の男メンバーが、ナンパをしているところを。

面白そうだと判断したは、声をかけずに彼らの様子を伺った。

何度頑張ってもフラれる彼らを笑わないよう、声を漏らさないのは辛い。
だが、最後の女性が実は男だったとは、も予想外。
とうとう声に出して笑い出したが、幸いにも精神的ダメージが強かった三人には聞こえていなかった。


腹筋が痛くなるほど笑い続けると、はいつの間にか砂浜に三人の姿がなくなっていた事に気付く。
探すにも検討がつかないので、仕方なく別荘に帰るとまた睡眠をとった。









幾月に対シャドウ兵器であるアイギスを紹介された夜、は当然のごとく存在していなかった。
メンバーも既にいない事に慣れてしまっている。
アイギスに指摘されてから、彼女の事を思い出していた。

さんにも是非、挨拶をしておきたいであります。彼女はどこでしょうか?」
「そういや、一日見てなかったなぁ。部屋にでもいるんじゃね?」
「悪いが、をここに連れてきてくれないか?」

美鶴が、リーダーに用事を頼む。
彼は頷くと、の部屋へ向かった。







の部屋に辿り着くと、彼はドアを軽く叩いた。
返事は無い。もう少し強くノックしてみる。
それでも、反応は無かった。


ドアノブに手をかけて、部屋に入ってみる。
中は夜だというのに、電気が点いていなかった。
彼女が居るのか確認するため、見渡す。
ベッドにがいるのを見つけると、枕元に近づいた。


彼女は、彼の存在にも気付かずに眠り続けている。
その寝顔が愛らしく、彼は少しの間、見入っていた。
だが、他の仲間が彼等を待っていることを思い出す。
肩を揺らして起こしてみるが、は気持ち良さそうに目を瞑っている。
また揺らしてみれば、は唸った。

「もう少し眠らせてよ、ジン」

彼女の呟いた名が誰なのかは知らない。
彼は不思議に思いながらも、また彼女を起こそうと試みた。
やっと、彼女は体を起こす。

「起きればいいんで・・・あれ、リーダー?」

寝ぼけているに、彼は用を伝える。
しかし、はそれ以上体を動かそうとしない。
このままでは時間が経つだけなので、彼はの腕を引っ張って皆の待つ場所へ戻っていった。









「あなたが、さんですか」
「んー。アナタは、誰?」

半分しか開いていない目で、はアイギスを見る。
彼女の腕には、まだ彼の手があった。
そうしないと、がバランスを崩して倒れるからだ。

「アイギスです。皆さんのシャドウ討伐に協力するであります」
「そっか、よろしく、アイちゃん」
「私の名前は、アイギスです」
「うん、だから『アイちゃん』」
「アイギスです」
「アイちゃん」
「・・・これ以上、彼女の今の状態で話をしていても埒があきませんね」

アイギスと話している間、は眠気に襲われたのか、彼の肩に寄りかかるように立っていた。
リーダーは、そんな彼女を支える為、肩に手を回しておく。
どこにいても自分のペースを乱さない彼女にメンバーは呆れることすらできなくなった。









「ふぁあ。よく寝た!」
「そりゃ、昨日一日寝てたんなら、そうでしょ」

旅行、最後の日。
海で過ごそうと順平が誘ってきたので、先に準備を終えたとゆかりは他の女子を待つべく、玄関にいた。
この旅行のおかげで、ゆかりはに気兼ねなく喋るようになっていた。

「結局、この旅行で恋バナができなくて寂しかったな」
「そんな話がしたかったの?も恋とか、興味あったんだ」
「意外?」
「かなり。まぁ、でも11月に修学旅行があるし、その時にすれば?」
「修学旅行?そんなの、あったの?」

美鶴と風花もアイギスを連れて現れたので、学校の行事にも無頓着な彼女を放ってゆかりは海へ足を運び始めた。







「そういや、先輩のペルソナって、どんなのなんスか?」

海で遊んだ後、休憩をとることにしたメンバーは、パラソルの下で休んでいた。
話題をふる順平に、は嫌そうな顔をして聞いた。

「そんなに知りたいの?」
「幾月さんに聞いてみても、先輩に聞けって教えてくれなくて、気になってるんスよ」
「知っても、得することなんて1つも無いのに」
「いいじゃないスか、聞くぐらい」

順平の押しには負けて、渋々彼女のペルソナについて話し始めた。

「私のペルソナは、影時間の時だけ私の身体能力を上げてくれる能力を持ってるの」

一階からビルの屋上に移動するのも簡単だし、目や耳も良くなってるから遠くの事も分かるんだ。
そう言い加えると、興奮気味の順平が叫んだ。

「すげー!ヒーローみたいな、超人になるって事か」
「まあね。ただ、弱点もすごいのよ」

はため息を吐いてから、続けた。

「力はそこそこ、身体機能は抜群だけど、魔法は全部弱いのよ」
「全部?それは、本当なのか?」
「本当だよ。火も氷も雷も風も光も闇も。状態異常も全部が弱点」

肩をすくめて、美鶴の問いに答える。
一人を除いて、皆は信じられないような顔でを見つめていた。

「だから、リーダーには私を使わせなかったの。私は、討伐には向いてないから。
 どっちかというとスパイとか忍者の方が似合うって言ってね」

ウインクをして冗談を言った彼女のおかげで、その場の雰囲気が和む。
それに便乗して、順平が楽しそうに発言した。

「女スパイか・・・うん、先輩には、お似合いっスよ!」
「とか言って、どうせまた、やらしい事考えてるんでしょ?」
「あ、バレた?」

ゆかりの冷たいツッコミで、またいつもの調子が戻る。
アイギスが、冷静にの話から解釈した事を口にした。

さんの武器は、拳銃。それは、不用意に敵に近付こうとしない為でありますか」
「まあ・・・そんな感じかな。召喚機と間違えないようにするのも大変だから、普段は使わないけど」

左足に召喚機、右足に拳銃。
過去に一度だけタルタロスへ入った際、メンバーは彼女の装備を見ていた。

だが、他にが装備していた物は無かったように見える。
疑問に思った明彦が口を開いた。

「だったら、普段は何を使ってるんだ?」
「自分の足。蹴りが、昔から得意で」
「蹴りって・・・ちゃん、モデルの仕事に影響しないの?」

モデルならば、足も綺麗に保っていなければならないのではないか。
そう考えた風花が聞いてみる。
しかし、は平然と答えた。

「シャドウには滅多に会わないし、そもそも私はモデルが本業じゃないからね」

皆が納得したところで、は立ち上がる。


十分に休息を得たメンバーは、別荘に戻って、カラオケなどで最後の日を楽しんだ。












-back stage-
管理:ヒロインが戦闘に参加しない理由をハッキリ述べました。
岳羽:普通に考えたら、魔法系全部が弱点って、ありえないよね?
管理:戦闘に参加させないよう、そう設定しただけだい。
山岸:あれ?でも、彼女のペルソナの名前とか言ってないけど・・・
管理:それは・・・・・・まぁ、置いといて。
桐条:そんな適当で良いのか。
管理:ぶぅ。『彼』とも二人きりになるのが、今回の目的だったからいいの!

2006.11.30

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