when to cry
-chapter 6-
「理解できん。何で、が2位なんだ?」
旅行から帰ってきた翌日。
期末テストの結果発表が掲示されたと聞いて、明彦はと共に廊下へ出た。
「授業を真面目に聞いてるからじゃない?」
「お前、試験勉強はしてなかったはずだよな?」
「だから、授業をちゃんと聞いておけば点は取れるでしょ?」
何を言ってるのか分からないとでも言うような顔で、は返す。
そんな彼女がよく分からないと、明彦は思った。
「は、授業を聞かずに眠ってるようなイメージがあったんだが」
「正しいけど、正しくない。アキは、一つ重要な事を忘れてる」
「何だ?」
「私の将来がかかってるから、授業中は寝ないの」
そういえば、そうだった。
がシャドウ討伐に協力すると言った理由は、高校の成績が良ければ高収入の仕事をもらえるからだ。
思い出した明彦は、納得がいく。
そこに、美鶴が現れた。
「明彦。。どうだった?」
「バッチシ!美鶴の後にひっついてるよ」
「満足のいく結果だった」
彼女も自分の名を確認してから、を褒めた。
「グッジョブだ、。これなら、私も桐条グループを引き継ぐ時の不安が減るな」
「美鶴ってば、気が早いなぁ。でも、ありがとう」
「私は事実を述べたまでだ。何なら、私が社長の座に就いた際、専属秘書にでもなるか?」
「それは、遠慮しておく」
美鶴の元で働いていたら、休みなど全く無さそうだ。
仕事に縛られたくないは断っておいた。
「では、私はどこで寝れば良いのでしょうか」
朝、アイギスはリーダーの部屋を訪れ、そこを拠点にすると言った。
止めようとしたゆかりが、彼女の部屋を用意すると言ってみたものの。
三階の女子の部屋は全て埋まっていた。
「誰かと部屋を共用してもらうしかないな」
「それでしたら、やはり彼の部屋に・・・」
「だから、それは駄目だってば!」
三階の広間で女子が集まっている。
美鶴の案に対して、が手をあげた。
「それなら、アイギスは私と共用する?」
「良いのか、?」
「うん。寝る以外は、あんまり部屋使ってないし、物も無いし」
アイギスも了承した為、この問題はすぐに解決した。
あっという間に、学校は夏休みに入った。
それを良い事にはモデルの仕事を増やしていた。
だが、抜け目の無い美鶴は彼女のマネージャーのような役割を担当し、満月の夜には絶対に仕事を入れぬよう話をつける。
これで、なんとかがシャドウ討伐に協力するよう仕向けることができた。
夏休み一日目。
がラウンジでテレビを見ていると、順平が隣に座った。
「先輩、ずるいっスよ!いつのまに、ゆかりッチと仲良くなってたんスか?」
「ゆかりと仲良くなる事に、何か問題でもあった?」
突然の質問に動じることもなく、はテレビを見つめたまま聞いた。
すると、順平は拗ねながら文句を言った。
「俺だって、先輩とタメで喋りたいなぁって思って」
「なら、そうすれば?私は、するなと言ったこと無いよ」
「え、イイんスか?」
「どうぞ、ご自由に」
「よっしゃー!んじゃ、あらためてよろしくな、!」
「うん。ところで、じゅんぺーは試験どうだった?」
「・・・お前な、それをこのタイミングで言うんじゃねえよ」
が笑って謝っていると、夏休みは寮で暮らすことになった乾が会話に混じった。
「なんだか、楽しそうですね」
「これが楽しそうに見えるか?」
「・・・誰?」
素っ頓狂な声でが聞く。
乾は、に微笑んだ。
「夏の間、ここでお世話になる天田乾です。よろしくお願いします」
「どうも。。よろしくね」
「知ってます。先輩、モデルをやってるでしょう?初等部でも人気ですよ」
二人の世界を作り始める雰囲気に耐えられなくなった順平が割り込む。
「で、お前は出かける為に降りてきたんじゃないの?」
「ああ、そうでした。それじゃ、先輩。またあとで」
「バイバーイ」
乾に笑顔で手を振ると、は立ち上がった。
「さて、私も出かけようっと」
「ん?何か予定でもあったわけ?」
「夜にはあるけど、昼はないよ。映画でも観て暇つぶしをしようかと思ってさ」
部屋に戻ろうとしたが、立ち止まる。
ソファに座ってリモコンを操作している順平に声をかけた。
「なんなら、じゅんぺーも一緒に行く?」
「待ってました!もちろん、行くに決まってんだろ」
元気よくソファから離れての隣に並ぶと、二人で出かける準備をしに階段を上がった。
映画を観終えた二人は、近くのカフェで感想を述べ合っていた。
「、ホントにアレが観たかったのか?」
「フェザーマンを馬鹿にしちゃダメよ、じゅんぺー」
「馬鹿にする気はねえけど。まさか、アレが好きだとは思わなかったぜ」
「なかなか奥が深かったでしょ?」
「まぁ、あんな展開になるとは思わなかったな、確かに」
ジュースを飲んで、一息入れる。
相変わらずを読み取れない順平は、気にせず映画の話で盛り上がった。
「やっぱ、正義のヒーローってのは、憧れるよな」
大分その場で時を過ごした後、順平が呟く。
その言葉には力強く頷いた。
「憧れる、憧れる。今でも、ヒーローになれたらいいと思うもん」
「でもでも、俺達だって一応知られてないだけで、それ相応の事してるじゃん?」
「あはは!じゃあ、アレだ。私たちメンバーを色分けしなきゃね!」
「お、それ面白そうだな。じゃあ、まずは俺がレッド!」
胸を張って主張する順平にが拍手を送る。
それに気を良くしながら、順平は色分けの案を出した。
「真田先輩は、ブルーだろ。ゆかりッチは、ピンク」
「私の案も出して良いかな?」
「何?」
「まず、順平はグリーン」
さっきの拍手は何だったんだ。
少し傷ついた順平は、テンションが下がった。
「アキが、レッド。ピンクは、ゆかりでしょ。ブルーは美鶴で、イエローがアイちゃんってのは?」
「イエローにアイギス?俺じゃなくて?」
「最近の戦隊ヒーロー観たら、イエローが女の子になってたし、問題ないと思って」
「ふうん。んじゃ、残った風花とアイツは?」
腕を組んでしばらく唸った後、は閃いて指を鳴らした。
「ふーちゃんは皆のサポーターで、リーダーはシルバーかな」
「ふうん。で、は?」
「私は・・・ヒーロー達が救う、囚われの姫で、どう?」
「は、大人しい姫って柄じゃねーだろ」
茶目っ気たっぷりに答えたを笑う順平。
冗談で言ったつもりのは、面白くなさそうに頬を膨らませた。
その様子を見て、順平は慌てることもなく宥めた。
「ま、俺っちも隊員なわけだし?何かあれば、すぐに姫を助けに行くぜ」
「勝手にすれば」
笑顔で宣言した順平を直視できず、は飲み物を口にすることで誤魔化した。
その夜、はポートアイランド駅にある裏路地を訪れた。
適当に階段で休んでいれば、三人組が近寄ってきた。
「残念ですね、」
タカヤが声をかける。彼女は苦笑した。
「やっぱり、ダメか」
「当たり前です。影時間を消すなど、阻止しなくてはなりません」
三年前、影時間に足を踏み入れることになったを助けたのは、ストレガの三人だった。
それ以来、交流を深めていたには、もちろん彼らの信念が分かっている。
特に責める気もなく、質問をした。
「その情報、どこから仕入れてきたわけ?」
「彼に聞いたんですよ。あなたも知っているでしょう?」
誰の事か分からず、はジンに助けを求めた。
「夏でも帽子とコートを着て、いつも手をポケットに突っ込んどる男や」
「ああ、彼か。よく、この溜まり場にいる人ね」
納得して頷いてから、質問を続けた。
「でも、それなら私が情報をもらす必要って無いんじゃないの?」
「いいえ。彼は、いつ再び彼らの仲間になるか分かりませんからね」
「私は念のため、てこと」
厄介な事に巻き込まれた、と愚痴るにタカヤは誘った。
「我々についてきませんか、?あなたなら、歓迎しますよ」
「断る。私は、あっちについてなきゃ、就職ができないの」
即答した彼女の意見をジンが再確認する。
の気持ちは揺るがなかった。
「お前らしいわ、敵味方より自分の道を選ぶのは」
「答えられそうな質問だったら、答えてあげるよ。どっちの味方でもないからさ」
「いや。これで、さよならや」
ジンの言葉には笑みを失くす。
一人一人じっと見つめるが、三人は本気だ。
「本当に、これで最後なの?」
「次に会う時は、敵同士や」
静かに告げたジンの言葉が、の心を突き刺した。
手で胸のその痛みを抑えようと試みたが、彼女は上手く笑えてなかった。
「私は、敵だとは思わないから」
「勝手にすればええ。それでも、容赦はせえへんからな」
「それでも、敵だと思いたくないから」
何も答えずに去る三人の姿を見送ると、は仕方なく寮へ帰った。
-back stage-
管理:天田少年のことを危うく忘れそうになりました。
天田:ええ!?そんなぶっちゃけ話、いりませんよ。
伊織:まあ、夏休みは長いんだし、何か話を入れようと思ったら入れられるだろ。
風花:順平君は、ご機嫌だね。やっぱ、これでいっぱい登場したからかな?
管理:うーん。夏休みは、あとアキで終わらせようと思ってたよ。
岳羽:早いよ、それ!?コロマルとか、どうするわけ?
管理:・・・ソレも忘れてた・・・
美鶴:ちゃんと細かいところまで、構成を考えておけ。
2006.12.07
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