when to cry
-chapter 8-


「犬だ」
「ワンッ」

朝、ラウンジに現れたは、一歩下がった。
銀髪の毛をした犬が、首輪をして寮にいる。
瞬時にここで飼うことを悟ったが、誰が拾ってきたのだろうか。
黙ってその犬を見つめていると、風花が話しかけてきた。

「おはよう、ちゃん。この子ね、コロマルって言って、新しい仲間なんだよ」
「へえ、新しい仲間・・・犬がペルソナ使いなの?」
「ビックリするよね。でも、この間、一人でシャドウと戦ったぐらいなの」
「それは、すごい」

は試しにコロマルを撫でてみる。
嬉しそうに尻尾を振るのを見て、も笑顔を浮かべた。

「ところで、じゅんぺーがやけに騒いでたけど、何かあったの?」

コロマルの頭を撫でながら、風花に聞く。
呑気な彼女の様子に、風花は首をかしげた。

「明日からの夏期講習が嫌なんだと思うけど・・・ちゃんは、知ってた?」
「知らなかったけど、それで今週は仕事が入っていない理由が分かったよ」

美鶴がやりそうなことだ、と遠い目をして呟く。
風花は苦笑するしかできなかった。

「私は成績に問題ないのに、何で参加しなきゃいけないんだろ」
「この寮に住んでる人は、全員参加で申し込んだらしいから」
「別に行かなくたって、テストには影響ないのに」

気が乗らないを風花は落ち着かせようとする。
結局は逆らえないことを彼女は理解しているからこそ、不機嫌になっていた。

「出かけて、気分紛らわしてくる」

貴重品を持って、は風花とコロマルと別れた。







「やっほー、ジン。今夜のご飯は何?」
・・・何で、お前がここに居るんや」

スーパーで買い物中のジンに出くわしたは、にこやかに近づいた。
面倒臭そうな顔をする彼を無視して、彼女は買い物カゴを覗く。

「野菜が多いね。鍋でもするの?」
「言うとくけど、は来たらアカンで」
「そんな事言わないでさ、ね?」

敵同士やと、この前言うたばかりやろ。
そう思っても、ジンは彼女を振りきろうにも振りきれない。
言ったところで、は黙ってついてくるだろう。
それに、振りきったとしても、は彼らがどこで生活をしているのか知っているのだ。
追わずとも会いに来る。

「今回だけやで」
「やった!久しぶりだね、皆の家に遊びに行くの」

嬉しそうに夕飯を楽しみにするをジンは横目で見て呆れた。
緊迫感が全く無い。
これでは、敵だと宣言した意味が成り立たなくなっていた。






「お邪魔しまーす」

静かだった部屋が、の声で明るくなる。
二人は、呑気に彼女を迎え入れた。

「この間振りです、
「元気そうね」
「うん、なんか久しぶりに家に帰ってきた感じ?」

ジンは台所で夕飯の支度をしながら、三人の会話に入った。

「ええんか、タカヤ?も一応、敵やねんで」
「それでも良いから、彼女をここに連れてきたのでしょう、ジン?」

図星だったジンは、材料を切ることに専念した。
相手をしてもらえなくなった三人が、ちょっかいを出してくる。

「お腹空いてるから、早めにお願いね」
「それが作ってもらう者の言う台詞か!」
「ジン、煩い。口より手を動かして」
「カルシウム不足ですかね。気をつけた方が良いですよ」
「黙れ!もう夕飯無しにしたろか!」

逆ギレをしちゃ駄目だよ。
ちっちと人差し指を揺らしたを睨んでから、彼は準備を続けた。

材料を切りそろえて食卓へ行けば、三人は自分達が食べるための準備をして待っていた。
チドリにいたっては、待ちきれずに箸を手にしている。
ジンは何も言わずにガスコンロと鍋を用意した。
そして、鍋の中の水が沸騰する間に自分の食器を用意する。

「ところで、何で俺の分だけ用意してくれんかったん?」
「へ?用意しなきゃいけなかった?」
「ああ、すみません。つい、いつもの癖で忘れてました」
「自分の物は自分で用意すればいいじゃない」
「お前らな・・・!」
「あ、お湯が沸騰したよ!」
「それでは、食べましょうか」
「お肉争奪戦の始まり」

ジンを無視して早速食べ始める三人に怒鳴っても効果は無い。
これもいつもの事だとジンは諦めて、肉を食べようとした。
だが、皿にはすでに野菜しか残っていない。

「俺の分の肉食いよって!」
「だって、ジンてば食べないんだもん」
「ああ、すみません。つい、いつもの癖で忘れてました」
「早い者勝ち」

そう言っているうちに、用意された野菜も無くなっていく。
ジンは何も喋らないでおこうと決心し、頑張って残りの野菜を奪おうとした。







「ごちそうさまでした」
「また来てくださいね、
「いつでも歓迎するから」

元気に別れを告げる三人とは対称に、ジンは疲れきっていた。

「結局、白菜しか食べられへんかった・・・」

しかし、彼の嘆きを聞く者はいなかった。





:報告書

 確かな出身地、生年月日は不明。
 捨て子の為、戸籍情報に書かれている事は孤児院に保護された際、作られたものである。
 2歳頃、養子として子供に恵まれない若夫婦に引き取られる。

 養父母に愛されて育っていったが、彼女が中学校へ上がる前、家族旅行で交通事故に遭い、親を失う。
 目の前で最愛なる人を失い、精神的に病んだ彼女は養父母の親戚に引き取られる。
 しかし、彼女を元気づけようとする親戚の努力を嘲笑うかのように、彼女の友人を含む、周囲の人が亡くなっていった。

 このような経験から、彼女は人に依存せず生きようと考え始め、高校へは行かずに就職する事にした。
 親戚から紹介された仕事を得てからは親戚の家を出、援助をうけながらも一人暮らしを始めた。
 その仕事で出会ったファッションデザイナーのモデルになることもあった為、金銭的な問題は無かった。
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 彼女は、しばしば、知らぬ人についていく悪い癖があり、三度ほど警察に保護された事がある。
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                              ・
 彼女の私生活がどのようなものであったかは、ほとんど知られていない。』











-back stage-

管理:夏休み第3弾、ストレガ。皆、ヒロインを甘やかし放題です。
ジン:ちょい待て!俺らは敵同士やろ!?
管理:あー・・・ドンマイ?
ジン:何がドンマイやねん、書いてるのお前やろ?!
伊織:それに、『ドンマイ』って古くね?
管理:ディスコフィーバー(※戦闘終了ポーズ)な君には言われたくないわい。
山岸:あの、コロちゃんとの話は?
管理:これで終了かな。
コロ:クゥーン(寂しそうに項垂れる)


2006.12.28

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