あら、奇遇ね。
「桃ちゃんもやるな」
花火大会があるから、一緒に行こうよ。
そう桃ちゃんに誘われて、浴衣まで着て洒落こんだのに。
夜、待ち合わせ場所で一方的に断られた。
女の友情は脆いとは言うけど、ここまでだとは思わなかった。
だって、仕事が終わった後、一緒に途中まで帰ったのよ?
その時も、また後でね、と明るく別れたはず。
なのに、この始末。
やけ食い以外に、何をしろというんだか。
中身が詰まっていない財布を手に、私は屋台を回る。
そこに金銭面での救世主が二人も現れた。
「じゃないか。どうした、迷子にでもなったのか?」
「浮竹隊長。朽木隊長も。えーと、浮竹隊長の付き添いですか?」
まさか、朽木隊長が花火を楽しみに来たわけではないだろう。
そう思って聞いてみると、彼は頷いた。
「私は来たくなかったのだが、無理矢理連れられてな」
「そんな事言うなよ。に会えたし、いいじゃないか」
苛立ちから食べる気満々な私の目に入るのは、浮竹隊長が持つ数々の食べ物。
わたあめ、たこ焼き、りんご飴、焼き鳥、とうもろこし。
他にも買ってるみたいだ。
どうやって持っているのか分からないけど。
でも、目の前にある。
それをずっと見ていると、浮竹隊長は優しいことに笑顔で視線に答えた。
「どれか欲しいか?全部でも良いぞ」
「じゃあ、全部」
彼の手から、食べ物を奪う。
早速、焼き鳥を味わっていると、後ろから嫌な一言が聞こえた。
「太るぞ」
「要らない事は言わないで、恋次」
「心配して言ってるんだぜ?それ以上太ったら、どうす」
「うるさい」
言い終える前に、りんご飴を恋次の顔に塗りつける。
べとべとした顔に文句を言われたが、怒ることより顔を洗うのを優先した彼は人混みの中に消えていった。
よし、これで邪魔されずに食べ続けられる。
と、思ってたんだけど。
どうしてか、この世界では聞いてはならないはずの声がした。
恐る恐るその声がした方へ視線を向けると、喜助がさも当たり前かのごとく存在していた。
「喜助。何で、こんな所にいるわけ?」
「さんに会いに来ちゃいました」
「いや、そうじゃなくて。ここを追放されて、入って来れないはずだよね?」
「それは、愛の力で解決しました」
「絶対に可笑しいから、それ。確か、コミックス8巻で入れなかったはずだよね?」
「さん・・・原作の話を持ってくるのは、タブーっスよ」
いつの間にか、隣にいたはずの浮竹隊長と朽木隊長は姿を消している。
大方、私に取られた食べ物を補充しに行ったんだろう。
こういう時こそ必要とするのに、いないんだから。
「とりあえず、誰かに見つかる前に帰って」
「今、来たばっかなんスけどねぇ。せっかくのさんの浴衣姿ですし、もう少しぐらい」
「帰らなきゃ、自分の命が危ういとか思わないわけ?」
緊張感の無い人なんて放って、勝手に祭りを楽しんだ方が良さそうだ。
焼き鳥を食べ終えた後のゴミを押し付けてから、わた飴を摘む。
すると、さらに在りえない人物が目の前に現れた。
「全くだ。一度追放した死神を受け入れるとは、やはり死神は変だ」
「はい、そこの眼鏡のお兄さん。貴方も、何故ここに?」
この子は、確か滅却師の・・・そう、石田雨竜。
やちるに『えんぴつ』というあだ名をつけられていたっけ。
彼は恥かしそうに私の質問に答えた。
「たまたま彼の店を訪れたら、ちょうど変な扉に入っていった姿を見かけてね」
「彼ってば、アタシが開いた道に勝手に足を踏み入れてきたみたいで」
「扉があれば、誰だって気になって開けるだろう」
「人様の家で勝手に扉を開けようとは思わないでしょ、普通」
この子も普通の子じゃなかったのか。
旅過にも、まともな人っていないんだなぁ。
普通でない、と言えば。
オレンジ色の頭が浮かんでくる。
いや、でもさすがに彼が出て来る事なんて無いよね。
「お、いたいた。おい、!久しぶりだな」
「黒崎。何で、君がここに?」
「なんだ、石田もいたのか。なんで、こんな所にいるんだ?」
「それを僕は、君に聞いてるんだが」
出てきたよ、旅過。黒崎一護。
まさかと思い、訊ねてみる。
「喜助の家から来たわけ?」
「ああ、なんか変なドアがあったから開けてみたら、ここに来てたな」
「黒崎さん、勝手に開けないで下さいよ」
「あんな変な場所にドアを作ったお前が悪いんだろ!」
山本総隊長ぐらいなら、この子達が来てる事に気づいてそうなんだけど。
何の連絡も情報も伝わってきていない。
私にどうしろと言うの?
厄介な事というのは、減ることは無い。
困っていれば、朽木隊長が帰ってきた。
・・・これは大変な事になった。
オレンジ頭の旅過を目にした隊長の目が鋭くなる。
恋次から聞いていたけど、そこまで嫌いなのか。
遠くから彼に向けて、焼きとうもろこしを投げつけた。
旅過が上手い事交わした後、私はそれを地面に落ちる前に掴む。
食べ物を粗末にしちゃ駄目だよね。
「いきなり何しやがんだ、白哉!」
「何故、ここにいる」
焼きとうもろこしを食べながら、朽木隊長が他にも食べ物を投げかける様子を見守る。
喜助も器用にそれらをつまみ食いをしていた。
私達の行動に焦った滅却師が、頑張って真似をしてみるけど成功しない。
そんな彼にもお裾分けをして、適当に時間を潰す。
「おや。始まったっスね」
頭上を見上げた喜助につられて、私も上を見る。
夜空に咲く満開の花が散り始めた。
「綺麗ねぇ。朽木隊長、いっちー!そろそろ休憩したら?」
「こんな状況で、できるわけねえだろ!」
「・・・がそう言うならば」
「て、止めれるなら、もっと早くにしろよ!」
まだ文句たれる少年を無視した隊長が隣に来る。
花火の光が綺麗だ。
のんびり眺めていると、喜助が帽子を被りなおした。
「さて。アタシ達は、そろそろ帰りましょうか」
「まだ途中なのに、帰るの?」
「人が他の事に気をとられている間に、帰るんスよ」
「ああ、一応、捕まることを気にしていたの」
別に大丈夫じゃないかと思ったけど、言わないでおこう。
だって、朽木隊長は喜助の存在に気づいていない。
ここで変に引き止めて、後で大変な事が起こるのは嫌だ。
その責任が私に回ってきそうで。
「そう。じゃあ、旅過の二人も帰るの。またね」
「軽っ!もう会えない前提で喋る気、無えのかよ」
「今日、会ったじゃん。また会う可能性が無いとは言えない」
この少年、ツッコミが激しい。
まだ喋りそうな勢いの彼を眼鏡の子が止めた。
「黒崎。早くしないと、置いてかれるぞ」
「あ、ああ」
「それでは、さん。お騒がせして、すみませんでした」
この子は、礼儀正しい。
ちょっと堅くなりすぎなくらい。
三人の姿が見えなくなってから空を見上げたら、ちょうど最後の一発が放たれていた。
周りに集まっていた観衆が、少しずつ散っていく。
「終わっちゃいましたね」
何も映らないのに、ずっと目線が上に向いてる朽木隊長に話しかける。
それで、花火が終わった事に気づいたのか、彼は少し驚いた顔をしていた。
「もう終わりか」
「ええ、寂しいですね」
人気がすっかり無くなる。
冷たい風が、私の身を震わせた。
その様子を見た隊長が微笑む。
「すまぬ。の体が冷えきる前に、帰るとするか」
何の違和感もなく差し出された手に自分のを重ねて、私達も帰ることにした。
-back stage-
管理:喜助は絶対にボケになって、一護は絶対にツッコミになる。
朽木:・・・だから、何だと言うのだ。
管理:えーと・・・ギャグが書きやすい?
朽木:ならば、その二人がここに来た方が良いのでは?
管理:いえ、一応リクが貴方寄りなんで。
朽木:・・・そうは見えない内容だな。
管理:やっぱり、他のキャラがでしゃばりすぎた?
朽木:作品を気に入ったかどうかは、人それぞれだろう。
管理:これは、あいか様のみ返品/持ち帰り可能です。
2006.10.19
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