教室で奇怪なうめき声を発しているのは、私です。
暖かさに包まれて
「さっきから何やってるんだい?」
手元に集中していた私は、雨竜が近づいてきていた事すら気づかなかった。
今の私の手の動きからして、手芸部所属のこの男が分からないはずがない。
上手く事が進まない苛立ちを彼にぶつけた。
「何してると思う?」
「あ、いや・・・そこまで睨まれると言い難いというか、なんというか」
私から離れようと後ずさりをされると、こっちの機嫌は更に悪くなる。
「そうですね、どうせ私は不器用ですよ」
「そんな事は言ってないんだけど」
「言ってるようにしか見えない。」
確かに、編み物をしているだけで雄叫びを上げ続けられるような人は珍しいだろうけどさ。
・・・マフラー作ってるはずなんだけど、面影が全くない。
「貸して。まずはやり方を間違えてる」
雨竜は編み針を握ると、私がぐちゃぐちゃになっていた箇所も一瞬にして上手く誤魔化して編み上げた。
「こうするんだ。分かった?」
「分かるわけないでしょ。スピードが早すぎ」
人に教える気があるのか、と意味合いをこめて答えてみても彼には褒め言葉としか聞こえなかったようだ。
照れくさそうに頭をかいていた。
「ゆっくり編むことできないわけ?」
ストレスが溜まって仕方の無い私は、その気持ちを編み物を投げつけることで解消しようとする。
だけどあてられた本人はさほど気にしていなかった。
「できないわけがないだろう。誰に聞いてるんだい?」
「どっかの編み物ができることを自慢するのが大好きな人?」
冷ややかに答えれば、雨竜はちゃんと教える気になったのか彼の家に招待された。
「寒い」
「当たり前だろ、暖房がついてないんだから」
放課後、雨竜の家にやってきては良いが床が冷たい。
足の裏から冷えて、心まで冷えてしまいそうだ。
「だったら暖房つけてよ」
「電気代がもったいないな」
その言い草は何なんでしょう。
女の子にそんな態度は良くないと思います。
ふてくされていると、頭から重いものが覆いかぶさった。
重すぎて首が折れちゃいそう。
顔を暗闇から覗かせれば、重いものの正体は毛布だった。
「それにでも包まっていてくれ」
ありがたく毛布で体を暖めていれば、眠気が襲ってくる。
気持ちいいなぁ・・・
「寝ない」
今度は硬い物が頭の上に置かれた。
見上げれば、雨竜はマグカップを手にしていた。
「牛乳を温めたんだ」
「それは私に眠れと言っているようなものだね」
「なら、これは僕が飲む事にするか」
「頂きます」
冷えた手を突き出して、辛うじて飲み物を受け取ることができた。
危ない、危ない。
ホットミルクも飲み終えて、ようやく私たちは編み物に取り掛かることにした。
雨竜からきちんと編み方を習ったおかげで、順調に作業が進む。
「」
「何か用?」
「用があるから、声をかけたんだけど」
「真面目に返さなくていいから。で、何?」
「何でこの時期に編み物を始めたんだ?」
誰でも不思議がるだろう質問をぶつけられても困る。
イベントにのっかってプレゼント、なんて考えてないし。
というより、間に合わないな。
「やってみたかったから」
「・・・それだけ?」
「それだけ」
「誰かにやるとか、そういう気は」
「無い」
ああ、雨竜が話しかけてきたから失敗しちゃった。
益々やる気が失せてきた。
「止めた。飽きた」
全く進んでない毛糸の塊を放り投げて、隣の雨竜に寄りかかった。
頭上からは彼のため息が聞こえた。
「もうちょっと頑張れば良いのに」
「どうせ私は色気より眠気ですよ」
そのまま雨竜の膝に頭を置くと、雨竜の顔が目の前に現れた。
「まあ、が僕以外の人間にプレゼントしようという考えがなくて良かったよ」
「私が雨竜以外の人間の為に努力するとでも思う?」
ニヤリと口元を歪めると、彼も微笑み返した。
「思わないね」
頭を優しく撫でられ、心地良い気分になった私は深い眠りへとついた・・・
-back stage-
管理:1万ヒットお礼フリー夢・雨竜編でございます。
雨竜:持ち帰る前に誤字があれば、是非とも知らせてくれ。
管理:て、作品持って帰る人が此処を呼んでくれてるかも微妙か?
雨竜:平気だろ。ところで、今回は冬がテーマな割には・・・
管理:あまり沿ってないとか言うな、眼鏡。
雨竜:(分かりやすい反抗だな)
2005.12.26
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