「英語はなかなか難しいもんですよね。」


部屋に入り、喜助さんは被っている帽子を脱いだ。
あぁ、なんで私はこの人に助けを求めたんだろう。


 「しかし、珍しいっスねぇ。さんがアタシを呼ぶなんて。」


呼ぶつもりなんて、なかったんです。
えぇ、これっぽっちも。
たまたま、他の人達が忙しくて呼べなかっただけなんです。


 「喜助さん、英語できるの?」

 「人を呼んでおいて、それはないでしょう。」

 「じゃあ、できるんだ。」

 「少なくとも、さんよりできますよ。」


いちいちかんに障る言い方するなぁ、この人は。
とにかく、早く課題を終わらせよう。
そして、この人に帰ってもらおう。


 「では、まず発音からいきましょうか。I love you.」


て、何言ってるんだ、この人は!
その後『りぴぃと あふたー みぃ(今の言葉を繰り返して)』とか言わないでよ。


 「では、リピート アフター ミー♪」

 「繰り返せるか!」


思わず怒鳴ってしまった。
いけない、いけない。
喜助さん相手に気力を無駄に使っちゃあ身がもたないわ。


 「つれないですねぇ。こんなにもアタシはさんの事愛してるのに。」

 「I don't love you.」

 「おや、否定文をつくれるんですか。偉い、偉い。」


あぁ、この人は私の気持ちを分かってくれない。


 「ちなみに、『love』の発音は『ラブ』でなく『ラヴ』ですよ。」


急に真面目に教えられても、こっちは反応できません。
だけど、喜助さんとの英会話はまだ続く。


 「I want you.」

 「私は喜助さんのものじゃありません。」

 「仕方ないっスね。では。」


何をするかと思いきや、喜助さんは私の手を取り、口付けをした。


 「I want to kiss you.」


キスしたいて、もうしてるじゃないですか。
この人には何を言っても、通用しないんだろうな。


 「Do as you like.」


すっかり上機嫌になった喜助さんは、結局私の課題を助けることなく甘えて帰っていった。




-back stage(あとがき)-
喜「なんだか、私が悪い人間に見えるんスけど。」
管「あ、気のせいじゃないですよ?」
喜「・・・・・・」
管「い、いいじゃん!最後は様に『もう好きにして』って言われたんだし!」
喜「まぁ、確かに。それがなかったら、アタシの紅姫で亡き者にしてましたよ。」
管「(こわっ。目が光ってる!)」

2005.09.04

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