響く音




ズキズキ。ズキズキ。


頭が割れるように痛い。
これだから、雨の日は嫌いだ。
いつの間にか、先生の声が耳に入ってこない。


ズキズキ。ズキズキ。


痛くて痛くて、起きていられなくなる。
今度は、目の前が真っ白になった。
前の席の子の背中も、手にしているはずの教科書も見えない。


ズキズキ。ズキズキ。


ああ、もう体を起こしている事が辛い。
だのに、横になろうにも目が見えなくて何もできない。
力を抜けば、簡単に倒れられるだろうか。


ズキズキ。ズキズキ。


頭痛は、どんどんひどくなる。
さっきから、痛みを感じる音だけが耳に入ってくる。
他の音は、全く聞こえてなかった。


 「先生。が具合悪そうなんで、保健室連れて行ってきます」


ズキズキ。ズキズキ。


あれ、誰だっけ?
ふいに聞こえた声が、誰のなのか思い出せない。
腕をとられて、私は引っ張られるように何処かへと連れて行かれた。


 「大丈夫か、?」


ズキズキ。ズキズキ。


頭にガンガン響く音しかしなかったのに、この人の声は聞こえる。
だけど、私は立とうにも歩くたびに頭を抱えて、先へ進めなくなっていた。
すると、目の前が真っ白になった――今度は、彼の大きな背中だった。


 「早く乗れよ」


ズキズキ。ズキズキ。


見えなかった視界も、彼だけは見えるようになる。
オレンジ色の髪が見えなかったとは、どれだけ頭痛が酷いんだろう。
最後の力を振り絞って、言われたとおり黒崎一護の背に乗った。


ズキズキ。ズキズキ。


振動が頭に響くのに、黒崎一護の背は暖かくて気持ち良かった。
目を瞑っても、一度耳にした声と目にした背中が頭から離れない。
黒崎一護、と彼の名を呼んでみた。


 「どうした。頭に響くか?」


ズキズキ。ズキズキ。


彼の話す言葉も、頭に響いて辛い。
これ以上話すのも億劫で、答えないでおいた。
そんな私に、彼はぶっきらぼうに言う。


 「あとちょっとで保健室だから」


ズキズキ。ズキズキ。


頭痛が少し和らぐ。
同時に、胸が痛み始めた。
また悩みのタネを増やすような事が起こらないで欲しいと願う。


 「着いたぞ」


ズキズキ。ズキズキ。


保健室の扉を開けようとする彼の姿が目に入る。
それを制止しようと、彼の髪の毛を引っ張ってみた。
何事かと頭を少しだけ後ろに向けて、私の反応を待つ。


 「もうちょっと、こうしていたい」


ズキズキ。ズキズキ。


視界が、どんどん広がる。
頭の痛みが、無くなってくる。
今感じるこの痛みは、何だろうか。


 「無茶言うなよ」


ズキズキ。ズキズキ。


ああ、心が痛む。
というより、私は何時の間に黒崎一護を好きになっていたんだろう。
彼の背中に、しっかりとしがみついた。


 「頭に響くって文句は、聞かないからな」


ズキズキ。ズキズキ。


胸の痛みがひいていく。
変わりに、再び動き出した黒崎一護のせいで、また頭が痛くなる。
その足は、屋上へと向かっていた。


 「痛い」

 「文句言うなって、言っただろうが」


ズキズキ。ズキズキ。


ぶっきらぼうな声が、頭に響く。
だけど、頭痛とは少し違う、暖かい気持ちが心に染み渡る。
ありがとう、と彼に伝えて、私は目を瞑ることにした。





-back stage-

管理:はい、そこ意味不明とか言うな!
一護:いきなり意見を言わせない気かよ。
管理:ていうか、関西の梅雨は、いずこへ?(雨の日がかなり少ない)
一護:俺が知るか。お前は、雨じゃない方が過ごしやすいんだろ?
管理:うー。せっかく、一護を苛めずに書けた作品なのにー。
一護:俺の髪が引っ張られてる時点で、苛められてるっつーの!

2006.06.14

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