「はい、これ」



貴方に手渡したモノは、きっと貴方を怪訝に思わせるだろうね。

実際に、それを手にした貴方は、小さい紙切れを乱暴に扱ってる。



 「『の所有権』?何のつもりだい」



ほら、やっぱり。

眉間に皺をよせちゃって。
眼鏡がズレ落ちちゃうよ?



 「そのままの意味だよ。ちなみに、有効期限は、今日から」



裏返して見るように即すと、雨竜は書いてある文字を読み上げた。



 「『有効期限:今日から、石田雨竜が所有したくなくなるまで』」



ずれた眼鏡をかけなおして、ため息を漏らす。
あらら。どうやら、お気に召さなかったようだ。



 「。有効期限と書くなら、ちゃんと日付を記入しておきたまえ」

 「あ、そうか。忘れてた」



うっかりしてたよ、と舌を出して笑ってみたけど、雨竜は険しい顔をしたまんま。
どうにも、お手製の所有権について説明をしなければ、納得しないらしい。
壁に寄りかかって座った私は、手足をだらしなく置いた。




 「雨竜の人形だったら、なっても楽しいかなぁと思ってさ」




毎日、貴方が心をこめて作る衣装を身にまとって。

その細長く綺麗な指で、私の髪は整えられる。

細かいことにもこだわる貴方は、きっと指の爪まで飾ってくれるだろう。


永遠に、私が美しくいられて、貴方の傍にいられる。




それ以上に幸せな事は、無い。




ああ、本当に。

本物の人形になれるなら良いのに。

貴方の望む私を 貴方の目に焼き付けて欲しい。


その為なら、この命を落とすことさえ、気にならない。

若く、美しくいられる間に死ねるなら、早死になんて怖くない。



 「今もこれからも。雨竜しか、私に触れる権利はないから」



嫌だな。こっちは頑張って、微笑んでるというのに。
雨竜は、眼鏡を外して、目頭を押さえていた。

なんで、貴方が泣くかを聞くのは、残酷すぎるかな?



 「だから、誰にも私を触れさせないでね?」



顔を覗き込んで、しっかりと約束を守らせる。
すると、雨竜は諦めがついたのか、話をあわせてくれた。



 「分かったよ。は、僕のモノだ」



そっと私の手を握った雨竜の顔は、切なそうだ。
だけど、私は手から伝わる、貴方の体温がすごく嬉しかった。






毎日、貴方が私に着せたい服を着こなして。

それに似合う髪形を綺麗に仕立てられる。

もしかしたら、指先まで手入れしてもらえるかもしれない。



そんな毎日が、たとえ、私が死んだとしても続けば良い。

ずっと、ずっと。

私の存在を永遠に心に焼き付けてくれるなら。


遊んでいいよ









-back stage-

管理:雨竜に飾ってもらえるなら、かなり可愛くなるでしょうね。
雨竜:というか、どんな設定で書いたつもりなんだ?
管理:・・・・・・・・・それは、皆様の豊かな想像力で。
雨竜:考えてなかったんだな。

04.2006

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