塀の上に立っていた僕らを見て、一瞬嬉しそうな顔をした
その瞳が目に焼きついて離れなかってん。
3.散歩
せっかく、は僕のモノにする為に一歩近づけたかと思うたんやけど。
お饅頭のおかげか、阿散井君との仲は急速に深まってもうた。
つまり、僕に許していたことを彼にも許してしまったということ。
「なんや、つまらん。これから毎晩、独占できるかと浮かれてもうたやないの。」
ボソリと呟かれた言葉は、自分でも驚くぐらい寂しげやった。
せやけど、そういう事や。
は僕でも阿散井君でも一緒に寝る事を問題とせえへん。
それやったら、これからはの気分次第で、隣に寝る男を選ぶ可能性がある。
「まぁ、ええか。僕が勝てばいい話やし。」
「何か勝負してんの、ギン?」
を自分のモノにする決意をすると同時に、本人が居間へ入ってきた。
「気にせんといて。それより、朝ごはんが欲しいんやけど?」
「はいはい。じゃあ、今日は和食にでもしようか。」
昨日のご飯を出すだけになるけど、と付け加えるとは台所へ行く。
僕も後ろをついていった。
「ごちそうさまでした。」
「当たり前でしょ。」
食べ終えた食器を片付けるのを手伝おうとすると、に注意された。
「ペットは、そんな事しない。」
なるほどと理解できたから、すべて彼女に任せた。
・・・ただ、待ってるだけなんも退屈やな。
洗い物をするに後ろから抱きしめてみた。
柔らかくて、暖かくて、気持ちええ。
「どうかした?」
「ご主人様に構って欲しくなってん。」
「それは良いけど・・・私より恋次の相手してやってよ。」
後ろを振り向けば、困惑した阿散井君の姿が視界に入った。
・・・ホンマに、彼は僕の邪魔をすんねんな。
の服の下に忍ばそうとした手を嫌々離した。
「しゃーない、様の命令や。ポチ、遊ぶで。」
「俺は、アンタと遊びたいとは思わねーけどな。」
急に態度がでかくなってきよって。
昨日までは、ここにいることすらビビッてたいうのに。
「二人の睨めっこ、見てるこっちが退屈なんだけど。」
何時の間に洗い終わったのか、が呆れていた。
「なんなら、様も参加せえへん?」
「しない。私には、二十分も睨み合う根気が無いもん。」
「嘘つけ、そんなに睨み合ってねぇよ。」
「・・・ポチ、一人でお留守番してる?」
また何処かへ出かけるんや。
「何処行くん?」
「あんた達の散歩でもさせた方が良いかと思ったんだけど。」
ちらりと横目で恋次を見ると、は大げさなくらいにため息をついた。
「ポチは行きたくないみたいだし、ギンだけ連れて行こうかな。」
「行く、行く!行きます、行かせて下さい、様!」
「ええー、ポチも行くん?」
「アンタは、黙ってろ。」
「喧嘩するなら、ゴンも置いていくよ。」
あ、僕もまだその名前を付けられる可能性があったんか。
「ああ、そうだ。散歩は夜だからね。」
昼間に出かけるのは、僕らとしても問題があったから助かるわ。
でも、何でが夜にしたがるのかが気になる。
「夜?わざわざ、それまで待てっていうのかよ。」
「私は吸血鬼だから。」
阿散井君が変わりに聞いてくれたけど、は茶化す。
仕方ないから、その話に乗っておいた。
それもご主人様の為やな。
「そういや、僕らが初めて会ったのも夜やったなぁ。」
「滅多に出かけないから、会えたのは奇跡だね。」
「出かけない?お前、毎日何やってるんだ?」
「生きてる。」
またしても話がそらされた。
「ええやん、別に。の手料理も美味しいんやし。」
「作ってないよ、私?全部、インスタント。」
その代わり、別に知りたくもなかった事実が発覚する。
なんや急に昼ごはんが気になってきた。
「なぁ、今日の昼は何食べるん?」
「うーん・・・うどんで良い?」
かなり手抜きしとった事に、なんで気づかへんかってんやろ。
散歩してる時に何かマシな物を買うように頼んでみようか、と本気で考え始めた。
-back stage-
管理:かなり明るいお話になってしまって。
ギン:せやから、全部、彼のせいやろ。
恋次:俺!?管理人に決まってるだろ!
管理:ふっ。管理人=何でもあり、だよ?
恋次:(横暴すぎる!)
ギン:ああ、これからシリアスってゆーか、ダークになるんで気をつけてな?
恋次:さらっと大事なこと言うなよ、あんたも。
2005.10.18
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