俺達がの家に転がり込んで、もう二週間が経った。



5.言う事きけないの?



 「何時になったら、接触するんだか。」


屋根の上で青空を見つめる。
今日は気味が悪い程に天気が良かった。


悪い事が起こらなきゃいいけど、と願うと下からの声がした。


 「恋次!おやつ用意したよ。」

 「せんべいなら、食い飽きたぞ。」

 「・・・ギン、ポチはシュークリーム要らないってさ。」

 「だぁぁ!ごめんなさい、俺が悪かったです!」


俺は何でか失敗が身につかないままだ。
この状態が続けば、俺、一生遊ばれ続けられるのか?


下に降りて、ギンの隣に胡坐を組むと、あからさまに嫌そうな顔をされた。


 「なんだよ?」

 「が隣に来て欲しかったんやけどな。」

 「俺だと菓子が不味くなるとでも言うのか?」

 「そうやで。」


この人は、本当に嫌な人だ。
の前で平気でそういう事言えるんだもんな。
素直すぎるのもどうかと思う。


 「私が買ってきた物が、不味いわけないでしょ。」


食べる準備ができると、は俺の向かい側に座った。


 「え〜。せめて、僕の前に座ってもらえません?」

 「黙って食えよ。」


シュークリームを手にして口にしようとすると、ギンがいきなり俺の掴んでいた手を握った。
そのせいで、持っていたシュークリームは圧力で中身が飛び出した。


 「ああ!てめぇ、何しやがる!」

 「ごめんな。ハエがいたかと思ったんやけど、気のせいやわ。」

 「嘘つくな、嘘を!」


喧嘩をし始めた俺達は、何かを叩く大きな音がしたのを聞いて止まった。
目を向ければ、が机に両手を置いてこっちを睨んでる。


 「どっちでも良い。カスタードを綺麗に拭きなさい。」


言われてから周りを確認すれば、黄色いクリームが机だけでなく畳の上にも散らばっていた。
素早く雑巾を使って汚れを拭くと、は怒りを静めた。


 「何でそんなに喧嘩ができるのよ。」

 「のせいやって事、気付かないんか?」


大きなため息をつくにギンは告げた。


 「え?」

 「が僕と阿散井君、両方を選ぶからやろ。」


急に真剣な顔して、どうしたんだ?
落ち着くように即すと、ギンは一瞬だけ目を開いた。


 「君かて、ええ加減この状態から解放されたいやろ?」

 「ちょっと待ってよ、ギン。あなたが何を言いたいのか分からないんだけど?」


慌ててが口を割ると、今度はギンがため息を吐いた。


 「は、僕と阿散井君、どっちが大事なん?」

 「どっちって・・・どっちも大事だよ。」

 「危機に陥った時一人しか助けられんとしたら、どっちを選ぶん?」


問い詰められて、は黙り込んでしまう。
俺も助けてやりたかったが、答えが気になるのもあって何も言わなかった。


がようやく口を開こうとしたその時。
近くで馬鹿でかい虚の声がした。


霊圧をたどろうとすると同時に、この庭に虚が姿を現す。
どうやら、俺達死神の匂いをかぎつけたようだ。


 「隊長は、をお願いします!」


斬魄刀を手にして、俺は庭へと飛び出した。


 美味そうな匂い・・・


相手が何かを呟いたが、それを無視して斬魄刀を振りかざす。
だが、難なくかわした虚はそのまま俺に手を伸ばしてきた。


 「駄目!攻撃しないで!」


の声で気をとられた俺は、不覚にも攻撃をまともにくらってしまった。
なんとか飛ばされるのを防ぐと、蛇尾丸を解放させた。


 「恋次、お願い!もう止めて!」


そんな事言ってたら、お前も危ないって事を知らないのか。
隙を見せた虚を思い切り斬った。










 「どうやら、僕らの仕事は終わりそうやね。」


何でか落ち込んでいるを横に、隊長がぼやいた。

あ、しまった。
すっかり市丸隊長と呼ぶのに戻っちまってる。
虚が現れた今となっては、の前で呼び方を気にする必要はないが。


 「。あれが、何なのか知ってるのか?」

 「知らない。皆、知らない。」


膝の上にのせてるの手は震えていた。
できれば、これ以上追求はしたくないんだけどな。


 「ほんなら、まずは僕らの話を聞いてみい?」

 「嫌。」


うつむいた頭からは、表情が見えない。
痺れを切らした俺は、思わず叫んでしまった。


 「いい加減にしろ!テメェは何か知ってるはずだ!それで俺達は来たんだよ!」

 「なによ!ペットとして来たなら、ご主人様の言う事はちゃんと聞きなさいよね!」


まさか言い返してくるとは思ってなかったから、の顔を真正面に見て驚いた。


 「な、何で泣いてるんだよ。」


俺がそこまで酷い言い方をしたかと慌てた。
は袖で涙を拭うと、部屋の出口まで歩いて止まった。


 「さっきの質問。」

 「へ?」

 「危機に陥ったとき、どっちを助けるかって話。」


そういや、そんな話をしていた。
どちらかを選ぶ気になってたのかが気になり、俺も隊長も黙って聞いていた。


 「私はどっちも助けないよ。危機に陥ってる時ってことは、私も危ないってことだからね。」



振り向かずに放たれた言葉に俺達は何も言えなかった。












-back stage-

管理:シリアス気味。まだちょろっと続く。
恋次:その割には、最初はコメディだったな。
ギン:・・・・・・
管理:およ?ギンさん、どないしたん?
ギン:この話って、確か「微エロ」も含んでるんと違ったん?
恋次:あ。そういや、最初に少しでてきただけだな。
管理:・・・・・・
恋次:今度は、こっちが黙りやがった。

2006.02.01

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