虚との接触から、三日。
は、部屋から出てくることは、無かった。
6.お仕置き
「さすがに、確認した方が良いんじゃないすか?」
生きてる人間が、三日間も飲まず食わずな生活をしてる。
阿散井君が、不安がるのは、当たり前や。
嫌がるのを承知で、僕らはの部屋へ向かった。
だけど、その途中で本人が姿を現した。
心配して落ち着かない阿散井君は、すかさず問いただす。
「!お前、大丈夫か?」
「大丈夫か、て何が。」
顔が青白いのに、無理しとる。
そない、見栄を張らんともええのに。
「三日も食事してへんやろ、様。」
「・・・してたわよ。」
まだ見栄を張るんかいな。
呆れてため息を吐くと、の眉間に皺が寄った。
「最低限の食事は、しました。非常食でね。」
閉じこもってたわりには、ちゃっかりしてるわ。
どこにそないな物あったんやろ?
「地震の時の為に用意してた、鞄の中にあったの。」
「勝手に人の心を読むんじゃねぇよ。」
「あんた達の顔を見れば、それぐらい分かるって。」
「さすが、ご主人様や。」
「ちなみに、乾パンを食べてたわけじゃないから。まぁ、不味いのは変わらないけど。」
その味を思い出したのか、の顔から、さらに血の気がひいた。
今度、その鞄に入ってる非常食を口にしてみようかと思うてたら、が聞いてきた。
「食事といえば、あんた達は?三日間食べてないんじゃないの?」
「お前とは違って、ちゃんと食ってたぜ。市丸隊長が用意してくれたんだ。」
「金は、様から借りたんやけどね。」
「・・・まさか!?」
さっきまで元気がなかったが、急に台所へと走っていった。
あちゃー。もうバレてもうた。
慌てての後を追った阿散井君をのんびり追いかけた。
案の定、台所には拳を握って、飛び掛りそうなぐらいに怒ったがいた。
「ギン。どういうこと?」
「はて。僕には、何が何やら。」
「とぼけないで。私のヘソクリに手を出したでしょ!」
阿散井君が、驚いた表情でこっちを見てくる。
せやかて、そこに置いてある金以外に僕らの食事をまかなう物は、なかってん。
「しゃーないやろ。僕らやって、死にたくないし。」
「市丸隊長の馬鹿野郎!に殺されるだろうが!」
必死になって、阿散井君が謝るように即してくる。
済んでしまった事は、どうしようもないと思うんやけど。
しかも、怒りは僕やのうて、阿散井君にうつったみたいやし。
「あら、ポチ。誰が誰を殺すって?」
「・・・お、俺、何も言ってませんよ、様・・・」
あー、怖い、怖い。
良かったわ、僕が怒られんで。
「そういや、さっきから『隊長』って言ってるけど、何なの?」
一応、気になってたんや、呼び名に。
「何やと思う?」
「『隊長』っていうぐらいだから、軍人?でも、ギンは軍人に見えない。」
「うん、ハズレやね。には、一生かかっても解けへんと思うわ。」
死神の存在を知っていたら、出会った瞬間に分かってたはず。
でも、何の反応も示せへんかったし、誰かに教えてもらうまでは、分からんままやろ。
「話してくれないの?」
「まだ体調が悪そうな人に、小難しい説明するのは、酷やろ。」
新聞と一緒に入っていたピザ屋のチラシをの前に差し出した。
「頼んでも、ええ?」
「嫌だと言っても、注文するんでしょ?」
は諦めて、僕の言うことを聞いてくれた。
すると、阿散井君に顔を向けた。
「恋次、何食べる?」
「俺が選んでいいのか?」
「もちろん。だって、食べるのは私と恋次だけだから。」
・・・なんで、僕は含まれてないん?
不満そうに見つめると、は笑わなかった。
「勝手に人のお金を使った罰よ。今から二十四時間食べることを許しません。」
「そんな殺生な。」
「さあ、恋次。今日と明日のご飯は豪華な物を食べよっか!」
「市丸隊長が好きな食べ物を食うってのも、良くねぇか?」
「いい子だ、恋次!その提案、のった!」
僕にとっては、辛いことやけど・・・
が元気になったから、ええとしとこ。
-back stage-
恋次:またシリアスとか言いつつ、思い切りコメディだな。
管理:嘘ついたのは謝るけど、シリアスがずっと続くのは駄目な事なんだよ?
ギン:シリアスが続く場合に緊張をほぐすシーンを入れるんは、劇の話やで。
恋次:シェークスピアみたいな才能持ってないんだから、真似なんてするなよ。
管理:・・・話が進むにつれて、二人とも冷たくなってきてない?
恋次:気のせいだろ。
ギン:気のせいやって。
管理:絶対、嘘だ!!!
2006.03.22
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