「しつこいな。俺は、もうお前のことが好きじゃないんだよ!」


どこからか、男の怒鳴り声が聞こえる。
こっちか?と後ろを振り向けば、書庫から男が出てきたのを目撃した。
そいつは、俺が見ているのに気づくと、バツが悪そうな顔をして走り去る。
何だったんだか、と考えなくとも、その後から現れた女の涙が全てを語っていた。


 ああ、こいつも捨てられたのか。


今回ばかりは、女に同情しちまうな。
俺も、数日前に付き合ってた恋人に振られちまったから。



そもそも、何で、あいつは俺と別れたくなったんだ?
納得がいかないって、どれだけこっちが言っても聞かねぇし。
急に嫌いになったってだけで、『はい、そうですか』と言えるわけが無い。



そんな事を考えてたせいか、詰所の前でと出くわした。
噂をすれば、というのは案外、マジな話かもしれねえな。


 「よ、よお、

 「こんにちは、阿散井副隊長」


動揺しまくってる俺とは違い、は落ち着いている。
他人行儀な挨拶に、引きつった笑みで答えた。


 「なんだ、今までずっと俺を下の名前で呼んでたのに。よそよそしいな」

 「他人ですから。どうぞ」


は笑わず、道を開ける。
俺が入らないでいると、会釈して先に入ろうとした。
その腕をとっさに掴んだ。


 「待てよ。まだ納得がいかねえ」

 「何がでしょうか?」

 「俺を本当に嫌いになったって言うのか?だから、別れたいって言ったのか?」

 「そうです。それ以外に、どんな理由があると思うんです?」


何の感情も示さない、冷たい目。
あんなにも暖かかった、俺の知ってるは、ここにいない。


 「離して下さい。仕事に遅れます」

 「俺の何が悪かったんだ・・・?」


呟くように出た疑問を聞いたは、初めて苦そうな顔をした。


 「貴方が悪いわけではありません。ただ、私が貴方を好きになれなくなっただけです」

 「友人としても、か?」

 「はい」


断言したの言葉は衝撃的で、自分はその場に立っていることで精一杯だった。
の腕から俺の手が離れたのをいいことに、そのままは仕事へ向かう。
後姿が見えなくなる前に、もう一度だけ訊ねた。


 「本当に、俺達はやり直せないのか?」


一瞬見せた優しさを無くしたが、俺を睨みつける。


 「しつこい。私は、もう貴方のことなんて、どうでもいいのよ」



もう笑うしかないな。
さっき聞いたばかりの言葉を俺が言われるなんて、誰の悪戯だ。



取り返せない思い












-back stage-

管理:恋次って、今も副隊長のままだっけ?
恋次:それぐらい確認してから書けよ。
管理:いや、別に違ってたら、まだ副隊長の時の話ということにしようと思って。
恋次:で、何で俺の失恋話なんだよ。
管理:書きたかったから。
恋次:・・・ああ、そうかい。

2006.02.09

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