温もり
「雨竜、ツチノコ作って」
いつものように雨竜の家に遊びに来ると、は口を開いた。
「また変な物を・・・」
そう言いつつも雨竜はの相手をする。
「じゃあ、朱雀」
「却下。それに『じゃあ』って、繋がってないじゃないですか」
「しょうがないな。大サービスして、ソクラテス。ダメなら、ドン観音寺で」
「・・・本当に欲しいわけじゃないんでしょう?」
「バレたか」
ただ構って欲しかったは、とくに顔の筋肉を動かさずに応答した。
それを察することも無く、雨竜は問う。
「さん、ぬいぐるみが欲しいんですか?」
「ううん。雨竜が作った物が欲しいの」
「何でまた。」
「うーん。なんか、守られてるって気分になりたいのよ。」
壁にもたれかかって座っているは、窓の外を眺める。
よく意味が分からなかったが、雨竜は裁縫道具を確認すると玄関へ向かった。
「どこ行くの?」
「何を作るにしても、材料が無いので買ってきます」
財布を手に取り、彼は出かけていった。
「あ、おかえり」
出かけた際に虚に出会った雨竜は、一時間程経ってから家に着いた。
言葉だけで迎えてくれたの手にはアイスクリーム。
恐らく、近くのコンビニで購入したのだろう。
「出かけたんですか」
「うん。アイス食べたい気分だったのよ。あ、雨竜の分は冷凍庫に」
「その格好で出かけたわけじゃないですよね?」
勝手に着ている雨竜の白いシャツに、彼女には長すぎるズボン。
彼女の髪が湿っぽいことから、お風呂も勝手に入った事が分かった。
「赤いブラジャーを着ておいて、よくそのシャツ着れたな」
「店員は女の人だったから、大丈夫」
独り言のつもりで呟いた言葉に返事がきた。
「そういう問題じゃないんです」
「あ、そう。ところで、やけに時間かかったね」
今更な話題ながらも雨竜は答えた。
しかし、真実は述べない。
「偶然、友人に会ったんで立ち話をしていたんです」
「立ち話・・・雨竜が言うと、おばちゃんっぽい」
「変な事言わないで下さい」
いい加減に遊ばれるのが嫌に思った雨竜は、どうやって仕返しをしようかと考える。
そんなことを全く察していないは、彼が持っていた買い物袋をあさっていた。
「」
今まで敬語をしゃべっていたのを止める。
それは、にも意味は伝わっていた。
「何」
「僕の作った物が欲しいって言ったよね」
「言ったかな」
これから起こりうる出来事を避ける為に、惚けた。
だが、雨竜はお構いなしに話を続ける。
「それなら、良い物を作ってあげるよ」
「や、やっぱいい」
「聞いて欲しいな。頑張って考えたんだから。」
二人の距離が近づき、雨竜の手がの頬を撫でた。
「・・・何を作るの」
「ワンピース」
「お姫様みたいな派手なのは、止めてよ」
「シンプルに腰にリボンにするさ」
「色も抑えめでね。さっき買ってきた布の色は嫌」
「じゃあ、スリーサイズを調べさせてくれるかな」
そう言いながら、雨竜の手はすでにシャツを下からめくり上げていた。
「『じゃあ』って、話が繋がってないじゃない」
ぼそりと出てきた言葉に雨竜は耳を傾けず、の口を自らので塞いだ。
-back stage-
管理:相互リンクしてくれた恋に贈ります。
雨竜:これは恋のみ、持ち帰り/返品可能です。
管理:満足いかないようでしたら、いつでも言ってくだされ。
雨竜:こんな、君の自己満足の塊が喜ばれるとも思わないけど。
管理:う゛。
2005.09.19
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