じゃれる




最近の私は早起きだ。

誰も教室に入らない時間に密会をするために―。





 「改めて、おはよう」


自分の席について、手にした子猫を掲げた。

そう、密会の相手はこの子。


たまたま誰より早く教室についた日に、迷い込んだのを発見した。
その時に食べ物をあげたり遊んだりと可愛がったのだ。


そしてその次の日に子猫を心配して同じ時間に来たら、裏庭に放したはずがこの教室に来ていた。
どうやら、私に会いに来てくれたらしい。

それ以来、ずっと私は眠い目をこすって、この子に会いに来る。

でも、この事はクラスメートは知らない。
何時も誰かが来る前には、一階まで連れて行ってるから。
そうでなければ、こうして独占する事は不可能だと思う。


 「やっぱ可愛いな〜、お前は」

 「ニャ〜」


褒めてあげれば、鳴き返してくれた。
やっぱり可愛い。
子猫の真似をして、一緒に鳴いてみた。


 「ニャ〜」


子猫の目が細くなり、笑っていることが悟れた。


 「やっぱ可愛いよ、お前は」


何回言っても言い足りない。
今度は子猫の鼻の頭にキスをした。




 「さん」




突然、名を呼ばれて体がビクついた。
ふと顔をあげれば、石田君が教室に入ってくるのが見えた。


 「おはよう、石田君」


挨拶しながらも、この子猫をどうやって説明するべきか悩んだ。
勝手に動物を連れ込んだら、優等生の石田君は何か言いそうだったからだ。


 「どうしたんだい、その猫」

 「な、なんか部屋に迷い込んできたみたい」


私がこの子に毎日会っているだなんて、知らないだろう。
この半分嘘ではない言葉は通用するはずだ。


 「そう・・・猫、好きなの?」


別に誰かに言いつける雰囲気でない質問に、私は心を許した。


 「うん、大好き」

 「一緒に鳴いたり、キスするぐらい?」


よく分かってるね、と答えた後、思考が停止した。


 「何で知ってるわけ?」

 「見ていたからに決まってるだろう」


そうですか。覗き見をしていたわけですか。


 「だったら、その時に教室入ってきたら良かったのに」

 「邪魔したら悪いかと思ってね」


石田君は自分の席へと足を向けた。
すると、手にしていた子猫が彼の元へ飛び出した。

何をするのだろうと思えば、子猫は石田君の足に頭を擦りつける。
どうやら、彼の事を気に入ったようだ。


 「確かに邪魔されたかも」


あんなに私達は愛し合っていたと思ったのに。
子猫に裏切られて、拗ねていると石田君が子猫を手に近寄ってきた。




 「次にその台詞を言う時は、対象が変わっていれば良いんだけど」




そっぽを向いて呟かれた石田君の言葉に私は頭を悩まされた。
しかし、猫を手渡すと再び自分の席へ戻っていった彼に答えを聞くことはできなかった。





私は優等生の石田君と違って、頭が悪いんです。


 「遠まわしに言われたって、分からないに決まってる」


無意識に漏れた言葉に反応して、石田君が近づいてきた。



さて、彼の答えは何なのだろう?












-back stage-

管理:常連さんである、あいかのリクで書かせて頂きました。
雨竜:君ってさ、いつも彼女の要望に答えてないんじゃないのか?
管理:・・・答えてないのか!?
雨竜:い、いや僕の勘違いだったら、良いんだ。(勘違いでない気もするけど)

2005.10.23

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