who's angry?
「とりゃあ!」
勢い良く投げられた雪玉は、珍しくもジェイドの顔に命中した。
勝ち誇ったの高笑いが広場に広がる。
「勝った!ジェイドに勝ったわ!」
叫ぶだけでは物足りないのか、彼の周りを飛び跳ねる。
ジェイドは、ハンカチで濡れた顔を拭いていた。
あくまでも冷静に振舞う彼に向かって、は地面から雪を掻いた。
「雪玉を当てたら、この泥を含んだ雪を食べる約束をしてたわね」
「覚えてない」
「て、言いながら、譜術で雪を溶かさない!」
覚えてるんじゃない。
溶けてしまった雪の代わりに、新しく雪を掴む。
もう一度試みようと体を起こすと、ジェイドは既にその場を立ち去ろうとしていた。
「卑怯者。逃げるんじゃないわよ」
はとっさに作った雪玉を再び投げつけるが、難なくかわされる。
そして、それは違う人物に当たった。
「ジェイ・・・わぶっ」
「あ、サフィール。何でいるのよ」
顔面に雪をぶつけたが、は悪びれる様子はない。
むしろ、サフィールを邪険にしているように見える。
泣きべそをかきながらも、彼は懸命に答えた。
「ネ、ネビリム先生が、二人を呼んで来いって」
「お前ら、遅刻だぞ」
サフィール一人では、不安だったのだろう。
共に現れたピオニーに対し、ジェイドは眉を寄せた。
「が邪魔してきたからだ」
「ジェイドが素直に負けを認めないからでしょ」
雪玉を手にするを睨むが、そのままネビリムの元へ行こうとする。
は慌ててピオニーに声をかけた。
「ピオニー!あんたも協力して!」
「俺も?でも、先生を怒らせるのがなぁ」
「ネフリーの手作りケーキをあげるから!」
「よし、のった!」
ピオニーが隣を通り過ぎようとしたジェイドを捕まえた隙に、が雪玉を投げる。
自分の体を動かせなかったジェイドは、脇に立っていたサフィールを盾にした。
「へぶっ!」
「さすが、ジェイド。これくらいじゃ、倒せないか」
「関心してる暇があるなら、ジェイドをやっつけてよ、ピオニー!」
は、まだ続けるようだ。
何時までも彼女に付き合うのが嫌になったジェイドは、ため息を吐いた。
「仕方ない。勝負に勝ってから、行けば良いか」
「お、ジェイドもやる気になったみたいだな」
「そうこなくっちゃ!」
ジェイドは、の正面に立つ。
ピオニーは、の隣に並ぶ。
サフィールが、ジェイドの後ろに控えていた。
「が、頑張ろうね、ジェイド!」
「一人でも平気だから」
「ふふふ。サフィールという足手まといがいる状態で、勝てるはずがないわ!」
「確証は無いだろ。さっき、サフィールを自分の身代わりにしたような奴だぞ」
互いに作戦を練ってから、顔を見合わせる。
準備ができたのを確認すると、が声を上げた。
「記念すべき100回目の雪合戦!罰ゲームもすごいのを用意しちゃうんだから」
「違うよ、。まだ99回目だよ」
意気込むも、サフィールの指摘でフライング。
恥かしさで顔を赤くしたは、叫びなおした。
「ゲームを始めるよ!」
「無視か」
「お前、今のは恥かしすぎだろ」
「だから、始めるって言ってるでしょうが!」
ジェイドとピオニーに突っ込まれた彼女は、投げる構えに入った。
しかし、それを投げきる前に女の子の声で止まる。
「皆、何やってるの!先生がカンカンになって待ってるんだから」
「邪魔しないで、ネフリー。私達は、今、神聖なる戦いを始めようと・・・」
「先生が怒ってるなら、帰るか」
「そうしよう」
「ま、待ってよ、ジェイド」
颯爽とネフリーの元に集まる三人に、が怒声を発した。
「こらー!勝負するって言ったの、ジェイドでしょ!協力するって言ったの、ピオニーでしょ!」
「言ったか、そんな事?」
二人が恍けると、彼女は両腕で雪をかき集めて体当たりをしてきた。
おかげで、雪合戦に参加していないネフリーの服も濡れた。
のやりすぎな悪戯に我慢できなくなったジェイドが、静かに詠唱し始めた。
「げっ・・・ジェ、ジェイドってば、怒ってる?」
「謝れ、!今なら、命乞いが間に合うかもしれないだろ!」
顔面蒼白なに、ピオニーが助言する。
今のジェイドには妹の声も聞こえないらしく、その努力は報われなかった。
殺される!
誰もが、そう思った時だった。
ジェイドの殺気よりも恐ろしい気をまとって、ネビリムが登場した。
「あんた達、いつまで待たせる気!?授業が始まらないでしょう!」
彼女の声で我に返ったジェイドは、詠唱を止める。
安心した子供達は、その場に力なく座り込んだ。
「さすが、先生。助かったぁ」
「俺、寿命が2年ぐらい縮まったかも」
「こ、怖かった・・・」
泣き止まないサフィールの横で、ネフリーは心に誓った。
この三人には二度と関わらないでおこう、と。
彼らに怒鳴ろうとしたネビリムは、格好を見て呆れた。
「もう。授業を始める前に、着替えなさい。びしょ濡れじゃないの」
処罰は後でします。
教室まで戻ってから、ネビリムは着替えを用意する。
それを一人ずつ持たせると、ネフリーに振り向いた。
「ほら、女の子が先にね。あっちの部屋を使いなさい」
「だとさ、ネフリー。着替えてこい」
ピオニーが優しく声をかける。
解せないは、思いきり手を伸ばした。
「ちょっと。ここにもレディがいるでしょうが」
「・・・どこに?」
ジェイドは、鼻で笑う。
ディストは、首を傾げる。
ピオニーは、腹を抱えて笑う。
三人の声が重なった事に腹が立ったは、またも叫び始めた。
収拾がつかない四人をネビリムが怒鳴り、大人しくも着替えに行った。
「ああ、そうそう。授業へ遅れた罰として、色々と考えておきますからね」
残された三人に向けられた、彼女の笑みはジェイドですら恐れるほどのものであった。
-back stage-
管理:ネビリム先生も口調も分からないから、適当です。すんません!
ジェ:おやおや、随分と私が酷い扱いされている気がしますが?
ピオ:それを言うなら、サフィールの方が酷くないか?
ディ:それは、ジェイドが悪いのです!
管理:お前らは勝手に喋るな。話がずれるだろ。
ディ:ですから、それはジェイドが・・・
ピオ:俺ら、皆が酷い扱いされてるかもな。
ジェ:そうですね。ああ、この作品は黒月様のみ返品/持ち帰り可能です。
2006.10.25
ブラウザでお戻りくださいませ