一歩前進?
「さすが、だな。この間の作戦での活躍は目を瞠るものだったと聞いたが」
「いいえ。あれは周りが大げさに言っているだけですから」
仲良く話しこんでいる藤堂と。
それを恨めしそうに、遠くから隠れて睨んでいるものが一人。
「のやつ・・・藤堂さんに気安く喋りかけて・・・」
藤堂のためなら、たとえ火の中、水の中。どこでも飛び込める朝比奈だった。
レジスタンスの時から、あのカレンと同等の戦闘能力を持つと言われているを憎んでいた。
黒の騎士団に加わってから、藤堂は彼女を贔屓しているように思えたからだ。
「また覗いてる・・・楽しいのか?」
それを変な目で見る千葉が声をかける。
不満そうに睨むが、彼女は動じない。
「楽しいはずがないだろ、俺たちと藤堂さんの時間を妨害されて」
「私達が彼女とも一緒に話をすれば、別に妨害にはならない」
「それじゃ、俺の苛立ちは解決しないんだけど」
朝比奈が騒いでいたからか、は彼らの姿に気づいて手を振る。
それに軽く手をあげて答えた千葉が二人の会話に加わった。
嫌々、朝比奈も参加する。
「朝比奈さん、なんだか機嫌が悪いみたいですけど、どうしたんですか?」
「気にするな。男の僻みほど、醜いものは無い」
「僻んでなんてない!」
朝比奈が断固否定するも、藤堂は千葉の言葉を事実として受け入れる。
「そんなことでは、まだまだだな。精神が弱いようでは、強くなれないぞ」
「す、すみません・・・でも、次の模擬戦では絶対にに勝ってみせます!」
「な?僻んでるだけだ」
心配するに千葉が繰り返す。
叱られた朝比奈は、もう言葉を返す気にもなれなかった。
「でも、私の場合は実戦が少ないし・・・本当に強いのは朝比奈さんの方だと思います」
「敵に情けをかけられるなんて嫌だね」
冷たい態度ばかり示すというのに、は彼と仲良くなろうと必死になる。
だからこそ、千葉は少しでも話すチャンスを作るのだが、なかなか上手くいかなかった。
しかし、今日は藤堂がいるおかげか、素直な感情を見せている。
「そりゃ、俺もの腕は認めるよ。冷静に的確に判断できるうえに、瞬時に行動にうつせるんだから」
「あ、ありがとうございます」
「だけど、それとこれは別」
キッと彼女を睨みつけるが、千葉から見れば、まるで父親を取られた子のようだった。
「藤堂さん直属の部下は、俺たち四聖剣だけでいい。だから、は出しゃばらないでよ」
「つまりは、嫉妬だ。聞き流せばいい」
「さっきから、千葉はうるさいな!」
朝比奈に注意されても、彼女は黙らなかった。
「だが、それだけじゃないだろう?」
「他に何があるっていうんだ」
「に接する藤堂さんにも苛立ってる」
これには、も藤堂も不思議そうな顔をする。
首を傾げてる二人を見て、千葉はため息を吐いた。
どうして、こうも鈍い人が多いのだろうか、と。
「妬いてるんだろう、と仲良くできる藤堂さんに」
「そうなのか?」
「ち、違いますよ!千葉の言うことなんて、信じないで下さい!」
藤堂が再度、千葉を見る。
彼女の目は嘘を言ってるように思えなかったし、朝比奈の慌てぶりも怪しいものだ。
「そうだったのか。これからは気をつけるとしよう」
「だから違いますって!ていうか、何に気をつけるんですか!」
そう言われると、確かに何に気をつければいいのか分からない。
頭を捻る藤堂のペースに巻き込まれてしまう前に、千葉が彼を連れて離れた。
残された朝比奈は気まずいため、とんずらしたくなった。
「あの、朝比奈さん。私と仲良くしたいって思ってくれて、嬉しいです」
純粋に親交を深めるという意味で捉えたらしいが声をかける。
その反応は朝比奈にとって、少し物足りない感じがした。
「これから、もっと積極的に朝比奈さんに話しかけていきますね!」
「そういう意味じゃないんだけど・・・まあ、いいや」
模擬戦とはいえ、彼はに力において勝った試しがない。
答えを教えるのは、自分が彼女に勝って普通に接することができるようになってからでいい。
「次の模擬戦は、絶対に俺が勝ってみせる!」
「お手柔らかにお願いします」
話はかみ合っていないが、二人の間の距離は少し縮んだように見えた。
- back stage -
管理人:朝比奈さんは、素直な子供の性格を持ってる気がします。
朝比奈:それで、最初は藤堂さんの取り合いになるっての、可笑しくない?
管理人:可笑しいかな。君、それの時しか目だってないよ、アニメでは。
朝比奈:・・・何も言えないのが、悔しいんだけど。
管理人:何かを言わせられるほど私が君を知っているとも思えないしな。
朝比奈:だったら、最初から書くな!
管理人:ずっと書いてみたかったから、いいんだよ。私的には。
2008.07.11
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