「血が欲しいなぁ」
隣で黙って歩き続けるアッシュを見ても、反応は無い。
むしろ、その沈黙は彼女に黙るよう告げているかのように見えた。
「しばらく殺しに行ってないから、禁断症状出そう」
「悪かったな、今回も殺しじゃなくて」
ようやく口を開いたかと思えば、憎まれ口を言う。
機嫌が少々悪そうな彼を宥めようとは試みた。
「今回の任務が嫌だとは言ってないでしょう」
「ハッ。お前の愛しい死霊使いが待ってるからだろうが」
「でも、今回はレプリカがターゲットじゃなかった?」
「まぁな」
「だったら、ジェイドは関係ないよ」
きっぱりと言い切ったに、アッシュは安心した。
任務を忘れて、そっちに没頭されては困るのだ。
彼女には、念のための護衛として来てもらうのだから。
アッシュは歩調を彼女に合わせることもなく、目的地へ向かう。
その後ろをがついていった。
すると、二人の前に数人の男が現れた。
来た道を戻ろうと振り返るが、すでに彼らの仲間が二人を取り囲む。
「アッシュ、この人達は何だと思う?」
「さぁな」
「見かけからして、盗賊っぽいよね」
「本人に聞けば良いだろ」
余裕のあった盗賊たちの顔は、歪み始める。
金品を置いていくように伝えると、はアッシュに役目を譲った。
「あのレプリカと会う前に、ストレス発散しておけば?」
「それを言うなら、の方が血に飢えてるんだろう?」
「こんな不味そうな血を体に流してそうな連中、倒しても面白くないもの」
いつのまにか十数人に囲まれているというのに、二人は動じない。
その態度が気に食わなかった盗賊の一人が斬りかかってきた。
が、それを短剣で受け止める。
顔はアッシュに向けられたままだった。
「暇潰しにもならないけど、その分血を出そうかな」
「勝手にしろ。俺は先に行くぞ」
「アッシュはそこにいて、すぐに終わるから」
相手の剣を弾き、頚動脈を斬るのを合図に盗賊達は襲い掛かってきた。
を囲んできた四人の男に舞うように致命傷を与える。
その間に譜術を唱えて他の盗賊にもダメージをくらわせると、怯んでいる敵に隙を与える間も無く殺めた。
瞑想をしていたアッシュは、静けさが戻ったので目を開けた。
彼の足元にまで流れる、赤い海に顔をしかめる。
は、血を浴びた姿でアッシュに微笑んでいた。
「ね?すぐに終わったでしょう」
「俺の服にまで血を飛ばすな、汚れただろうが」
「ああ、そっか。着替え持ってきてないわね」
「俺は持ってきた」
「用意周到だこと」
「お前が一緒なんだ、ある程度予想はついてた」
再び目的地へと歩み始めたアッシュをが慌てて追う。
「ねえ、今から行く所にお風呂ってある?」
「あるが、水は通ってねえだろ」
「別荘なのに水が無いの?」
「使ってたのが何年前の話だと思ってるんだ」
「じゃあ、私、しばらく血だらけな状態なの?」
嫌がる彼女を黙らせる為、彼は言いたくもなかった事を口にする。
「安心しろ。お前の服も持ってきた」
「用意周到ね」
「お前が文句言うことも想像できたからな」
いい子だね、アッシュは。
笑顔で告げたの言葉に彼はキレた。
「やっぱ、そのままの格好でいろ」
「え、着替えを持ってきてくれたんでしょう?」
「さぁな」
何よ、アッシュの意地悪。
は、刀にこびりついた血を振り切ろうとしたのを止め、彼の袖に擦りつけた。
「何やってる、!」
「アッシュは着替え持ってるなら、汚れても平気じゃない」
彼の機嫌が悪かったように、彼女の機嫌も悪かったらしい。
普段は見せることのない、子供のような拗ね方にアッシュは呆れた。
「チッ。今日は持ってきたし、これからも持ってきてやるから、二度とやるなよ」
「アッシュは、優しいね」
の手の上に転がされてる気がするアッシュは、あまり喜べなかった。
that's why I love you, boy
-back stage-
管理人:ジェイドを殺めたいヒロイン設定。話としては、「別荘」という文字を見て分かるとおりなところです。
アッシュ:ゲームじゃあいつ等とは会わなくないか?
管理人:だ・か・ら、「念の為の護衛」なんだよ。
アッシュ:何とでも言い訳ができる、と。
管理人:おほほほ、そうよ、それのどこが悪いの?
アッシュ:開き直るな!それにしても、貴様にすれば、珍しい題名だな。
管理人:本当だね〜。長い!(笑)
20060.10.19
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