「だったら、一緒に暮らせば良い」
自分でも、口から出てきた言葉に驚かされた。
突然ですが。
「え?」
ほら、みろ。
相手も何を言ってるか分からないといった顔をしてる。
くそっ。
どうして俺は、あんな台詞を言ったんだ。
恥ずかしすぎるだろ。
「いや、だから、その、なんだ」
早く何か言え、俺!
今なら、まだ誤魔化せるはずだ。
だが、を前にしてると、何も言葉が出てこない。
よし、考えよう。
そもそも、どうしてこんな事態になったか振り返るんだ。
そう、こいつに会ったのは、ついさっきの事だ。
捨て子だったを教団で育ててたとか言うヴァンが、俺たちの拠点に連れてきたんだ。
何度か教団で心地の良い笑みで迎えてくれてたが、これから一緒に行動することになって。
そうしたら、拠点も同じ方が良いだろうから移り住もう、という話を聞いたんだったな。
ただ、急に決まった話だ。
まだの為の部屋が無い。
それなら、と俺の部屋を代わりに使えば良いと言おうとしたはずが、さっきの台詞だ。
つまり、俺はに俺の部屋を一人で使えと、訂正すれば良いんだ。
「つまりだな・・・」
待てよ。
それは、逆に俺がと一緒に過ごしたいと思わないと捉われるんじゃないか?
だが、それをこっちが否定してしまえば、弁解に聞こえるかもしれない。
「アッシュ」
チッ。
大分待たせてたみたいだな。
まだ何て言えばいいのか、思いついてないぞ。
「いいの?一緒に部屋を使って」
意外な質問だな。
は大体の意味を掴んでくれていたらしい。
一緒に使う、という誤解は解けていない。
「嫌じゃないのか?」
「六神将の中じゃ、アッシュと交流が多かったし。一番、居心地良いと思うんだ」
微笑まれたら、俺が一人で慌てふためいてたのが馬鹿らしく思えてきた。
問題が一つ残ってるが。
「本来なら、リグレットさんやアリエッタちゃんの所に行くべきなんだろうけど」
「が問題ないと言うなら、俺は構わない」
俺が理性を保ってられるかが、問題なだけだ。
一緒の部屋で生活するってことは、もちろん、こいつの寝顔とか見れたりするんだよな。
はよく寝坊するって話だし、もしかして俺が毎朝起こしてやるのか?
ぐずるを見ていて平気でいられるのか怪しい自分が情けない。
違う方向に思考が飛んでるが・・・これって、まるで。
「新婚生活、楽しみだね」
「な!?」
俺の心の声を読み取られたのかと思っただろうが。
冗談だよ、と笑ったが少し顔を赤くして告げる。
「でも、アッシュとなら・・・私、良いよ」
何が良いんだ、何が!
「な、何を言ってる」
平静さを装ってみれば、が残念そうな表情を浮かべる。
周りが静かなせいか、小声だった彼女の言葉が丸聞こえだった。
「さっきの、プロポーズじゃなかったんだ」
「わ、忘れろ、さっきの事は!」
自分でもそうだとは思ったが、人に指摘されると余計に恥ずかしいだろうが。
「良かった。やっぱり、プロポーズだったんだ」
「な、何を根拠に・・・」
「アッシュなら『忘れろ』じゃなくて、『違う』ってハッキリ言うでしょ?」
自信満々に見せる笑顔から目を背ける。
確信をもって言われると、そうでは無いと言い難かった。
一応、のことを想ってるっていうのがあるしな。
「新婚生活、楽しみだね」
同じ台詞で嬉しそうに言う。
何でか素直に頷くこともできず、俺は残念ながら事実を自らの口で述べた。
「同居だ」
-back stage-
管理:え、と・・・照れるアッシュ?
アッ:何処がだ、阿呆。
管理:いや、君ってば、かなり捻くれてるから照れさせるにも一苦労よ。
アッ:ほお。レプリカだったら、やりやすかったとでも言うのか?
管理:そりゃあ、ねえ。あっちはただの馬鹿だから。
アッ:・・・それ、褒めてんのか?
管理:しかも、君の場合、顔に出ない方が多いから大変だよ。
アッ:今すぐ転生させて客の要望に答えられる作品を書けるようにしてやろうか。
管理:ひぃ!?ご、ごめんなさい!
2007.06.19
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