夏祭り
キムラスカ・マルクト・ダアト。
それぞれが協力し合って開催される祭りへは訪れていた。
「ルーク達も店を出してるんだよね。どこから行こうかな?」
悩みながら、人混みの中を突き抜けていく。
すると、ナタリアが彼女を呼んだ。
その方向へと進んでいくと、水色に大きな赤い花が咲く浴衣姿のナタリアを見つけた。
隣では、紺色の甚平姿のアッシュが髪を結って焼きそばを作っている。
頭にタオルを巻いているのは、さすがルークのオリジナル、というべきだろうか。
「焼きそば屋かぁ。アッシュ、暑そう」
「ええ、私も手伝うと言ったのですが、アッシュが自分じゃ客寄せできないから接客を任せたいと」
そりゃ彼女に任せられないだろう。
料理があまり得意としないナタリアの心を精一杯傷つけまいとする彼に涙しつつ、は話を変えた。
「でも意外だな。ナタリアはてっきり、ルークと一緒に屋台出すかと思ったんだけど」
「ええ、そのつもりでしたわ。でも、アッシュが私と一緒に店を出そうと言ったので・・・」
「二人が喧嘩して、別々になったのね。てことは、ガイはルークと一緒?」
「そうですわ。確か、射的か何かをやるって言っていました」
二人の話が区切れそうな時に、アッシュが山盛りになった焼きそばを持って間に入る。
「持っていけ」
「あ、ありがとう。いくら?」
「金を取るつもりはねえ」
作業に戻ったアッシュを気にして、はナタリアに代金を払おうとするが、それも断られた。
「彼が要らないと言うのですから、必要ありませんわ」
礼を述べて、は次の屋台へ回ることにした。
人だかりができている所を覗いてみると、紐を引っ張って商品を得るくじを行う店があった。
「あれ、じゃん。いらっしゃい!」
桃色の裾が肘上までしかない浴衣を着たアニスが出迎える。
この人の多さは、彼女の客寄せが上手くいっているからかもしれない。
普段と変わらない服を着ているイオンが、店の前に座っているのだ。
「こんばんは、」
「こっちも大変そうだね、色々と」
導師がいれば、人が一目見ようと駆け寄ってくる。
それでも楽しいから苦ではないと微笑むイオンに誰もが癒されていた。
「もやっていきませんか、くじを」
「そうね、やってみようかな。いくら?」
「代金は100ガルド、500ガルド、1万ガルドの三択だよ」
最後の値段に、耳を疑う。
「1万ガルドって聞こえたんだけど?」
「払えば払うほど、当たる確率が上がるんだ」
「・・・嘘でしょ、それ」
「きゃわーん、ってば、そんな冗談言わないで」
他の客の手前か、アニスが可愛い子ぶって誤魔化す。
下手すれば1ガルドの価値すら無い物が当たりそうな予感がして、は早々に引き上げた。
「ムキ―――――!!」
甲高い叫び声がする。
行きたくはなかったが、この声がするということは、ジェイドもいるのだろう。
はそっちへ足を運んだ。
「なんで、私だけ無視され続けられるのですか!ありえません!」
「うるさいですね。静かにするよう、貴方からも言ってくれませんか」
「僕が言うより、あんたが言った方が聞くと思うけど。ていうか、何で僕がこいつと一緒なわけ?」
「確かに、サフィールはジェイドの言うことしか聞かんな」
ジェイドとピオニーの焼き鳥の店の隣で、ディストとシンクがわた飴を売っている。
両方とも女性客が多い状態ではあるが、喚いているディストには誰も近寄っていなかった。
「うわあ、露骨に表れてるな、モテ度」
「ではないですか!貴女はもちろん、この私に会いに来たのですよね!?」
目に痛い紫色の浴衣を着た彼にここまで歓迎されるのも辛いところである。
は目を合わせずに答えた。
「ディストの声を聞いてやっては来たけど、ジェイド目的だった」
「がーん・・・そんな、どうして皆、陰険ジェイドを・・・」
「おいおい、は俺に会いに来たんだろう?」
黄唐茶色の甚平に身を包んだピオニーが差し出す。
焼き鳥を受け取ると、は礼も言わずにTシャツ短パンと楽な格好をするシンクへと歩み寄る。
わた飴を貰うと、笑顔で感謝した。
そのあからさまな態度に、藍色の浴衣を着たジェイドが愉快そうにピオニーを苛めた。
「彼女にとっては、貴方もディストも同じ扱い・・・いえ、相手にされないからディスト以下かもしれませんね」
「サフィールごときが俺に勝るっていうのか、ジェイド」
「分かりません。ですが、少なくとも、私は貴方に勝っていますよ。ー」
「なあに、ジェイド」
「ほら」
何もせずとも、呼べばすぐに答える。
悔しいピオニーは、キレての手を取った。
「だったら、店はお前に任せて、俺はを他の奴らのところに案内してくるぞ」
そろそろ接客にも飽きた頃だしな。
いつのまにやら人ごみに消えた彼に対して、ジェイドはブウサギを焼いて売ろうかと考えだした。
「よお、ガイラルディア。繁盛してるか?」
ナタリアがに教えた情報は、少し違っていた。
射的であることに偽りは無いが、大賞を得られる的が酷過ぎる。
「さんも来てくれたですの。ボクに当たると、すごい物が貰えるそうですの」
「ミュウ・・・今の自分の状況、理解してないでしょ」
幸いにも、今のところ、ミュウを狙う客は現れていないようだ。
他の的は普通の商品だというのに、何故こんな形式をとったのだろう。
「他の屋台と違うことしねえと目立たないだろ?」
「悪い。俺も、一応止めたんだが・・・」
ナタリアと同じく水色の甚平を着るルークは、特に罪に苛まれていない。
浅緑色の浴衣を着こなすガイが代わりに謝った。
「別にガイが謝る必要は無いと思うけど。ルーク、それは止めておこうね」
「そう、か。目玉商品が取られない、良い方法だと思ったんだけどな」
「動く的が欲しいなら、サフィールでも呼ぶか?」
「陛下、それだと確実に当てられます」
ルークは何を的にするか真剣に悩み始める。
ティアはどこにいるのかが聞くと、彼らは店の場所を教えてくれたので、一人で向かった。
ピオニーは的に関して一緒に考えてみると言って、その場に残った。
「二人とも、綺麗・・・」
柄の色違いの黒い浴衣を着て店に立つティアとリグレットを前に、が思った事を口にする。
ヴァンも錫色の浴衣を着て売り込みをしてたが、それが最初は目に入らないほどであった。
「あら、。どうしたの、そんなところで」
水風船を子供達に売っていたティアが、に気づく。
まさか、普段は見えないうなじで、彼女の色気に酔っていたとは言えない。
適当にはぶらかして、も水風船を買うことにした。
「閣下が用意して下さった水風船だ、大事にしてくれ」
「へえ、ヴァンも作ったんだ」
「気をつけた方が良いぞ、。中には、振り回しすぎると爆発する物も用意したからな」
微笑んで注意したヴァンに、もティアも固まる。
「に、兄さん。そういう冗談は笑えないわ」
「はは、さすがにこれは無理だったか」
だから、笑えないって。
気が抜けたは、水風船を振り回す。
すると、突然、ヴァンがその水風船を奪って人気の少ない所へ投げた。
後から小さな爆発音が聞こえる。
「閣下。冗談ではなかったのですか」
「どうやら、一つだけ混じっていたようだ」
そこは笑うところじゃない!
とティアが心の中で盛大にツッコミをいれる。
身の危険を感じたは、ティアを残して逃げることにした。
「これで、一通り回ったはずだよね」
あとは花火があがるだけ待つだけ、と道を歩いていると、誰かと肩がぶつかった。
千歳緑色の浴衣を着た誰かにが謝る。
「ちゃんと見て歩けよ」
口の悪い緑色の髪をした彼は、一瞥して去っていく。
その顔は、イオンやシンクと同じ顔であった。
「・・・・・・・・・あれ?」
誰であるか判明する前に、彼の姿は人ごみの中に消えていた。
-back stage-
管理:最後は、だーれだ!
ジェ:聞かなくても皆さん分かってますよ、それぐらい。
アッ:それにしても、無駄に長いな。
管理:うー。男性陣は、浴衣と甚平で悩んだしな。
ガイ:それ、関係ないぞ、アッシュが言ってることと。
管理:ガイが一番、色に悩んだ。オレンジじゃさすがに・・・ねえ?
ガイ:・・・結局、被害は俺にくるのか?
管理:各キャラの服の色は、和色の名前。色を知りたい人は調べてみて下さい。
2007.08.08