ある昼休み。
B6達の要望で作られたケーキを食していた翼が部下に声をかけた。
「永田、。ケーキが余ってるんだ、おまえらも食べるがいい」
しかし、彼らは仕事中であるのを理由に断った。
「食べればいいのに〜。美味しいよ?ほら、ちゃん、アーンして」
「それとも、オレ様が食わせてやろォかァ?キシシシ」
「永田さんの分は俺が持って帰ろう。今日はデザート付きの豪華な夕飯になりそうだ」
永田がノーといえば、絶対に食すことはない。
それゆえに、悟郎と清春はで遊んでいた。
「食べた方がいいんじゃねぇか?こいつら、ずっと付きまとうぞ」
「はぁ……では、ありがたく」
一にまで言われては、も断れない。
仕事中に良いのだろうか、なんて思いながらも彼女はその場で一緒に食べた。
ただの苦味とは違った味がする気がしたが、山田の作るケーキは美味しいことに変わりはない。
意図せずとも、ぺろりと平らげてしまった。
「食べて良かっただろう?」
翼の言葉に、紅茶を飲んで和んでいたは頷くしかない。
「ところで、これはどんなケーキなんですか?」
「あー……先生に言うなよ?」
一が言い難そうに確認をとる。
には密告をする理由もないので、頷いた。
「これ、実はアルコール入ってるんだよな」
「大人な味でしょ〜?」
悟郎が明るく同意を求め、彼女は賛同した。
「そうですね。慣れない味がすると思ったのですが、アルコールだとは思いませんでした」
「さんは、お酒が苦手なのか?」
永田の分のケーキをタッパーに詰め終えた瞬が尋ねる。
そのタッパーの入った冷蔵庫に清春が向かったのは、見えていないようだ。
「苦手といいますか……飲むと記憶が飛ぶので、どんな状態なのか、私にも分からないのです」
「Interesting!面白そうだな、が酔うとどうなるかを調べるのは」
「でも、これくらいのアルコールじゃ酔わないよね。また今度、ちゃんを酔わせてみる?」
「いいなァ、それ!酔ったをバッチシ写真に収めてやるぜェ?」
さっそく企画を練り上げる彼らの間に挟まれ、は身動きがとれずにいた。
仕方なく終わるのを待っていたが、一向に収拾がつきそうにない。
どうするべきか、と悩んでいたら、30分が経っていた。
意識が朦朧し始めるの耳には、誰の声も届かなくなってくる。
「そういえば、ちゃんはどれくらい飲んだら意識が飛ぶのか、聞いてなかったよ!」
「そっか、それを聞かねぇと酔うのを通り越して眠っちまうこともあるもんな」
「いっそのこと、最初からマッコリを飲ませてみようぜェ?」
「仙道、さんを少しは労われ!弱いと言っている人間に無理をさせてどうする?」
「そうよ、清春君てば、意地悪ね。お姉さん、泣いちゃうんだから!」
「ほら、本人もそう言って……ん?」
違和感を感じた一同は、声の主を見る。
は不思議そうに首を傾げていた。
「なによ、皆して。私の顔に何かついてる?」
「え、あれ?なんで、ちゃんの態度がいつもと違うの?」
「おい、。この俺にタメ口とは……分かってやってるんだろうな?」
翼が怒りが爆発する前に、寝ていた瑞希がボソリと呟いた。
「……酔ってる……」
「瑞希ってば、何を言ってんだか。私がケーキくらいのアルコールで酔うわけないでしょ!」
本人の口から真相が判明し、まずは面白がった清春がに接近した。
肩を抱いた時の反応をまずは調べてみようと思ったのだ。
「オレ様的には?こっちの方がタイプかもしんねェなァ」
「触らないで。坊やが軽々しく女王様に触れられると思ってるの?」
冷笑を浮かべて、彼女は清春の腕を外す。
予期せぬ返事に、清春は硬直してしまった。
「ちゃん……格好良いけど、シビアなお姉様だ……」
「男は尻にひかれるくらいで、ちょうど良いのよ?悟郎」
足を組んで高慢な態度を示すを見ることが、よほどショックだったのだろう。
翼と瞬の落ち込む姿からは、暗いオーラが見えるようだ。
「酔っ払ってるとはいえ、ここまで性格が変わるものか?」
「真壁、ここは早く元に戻そう。酔いが醒めるまで眠ってもらうというのは、どうだ?」
「そ、それがいい。だが、問題はどうやってあの状態で眠ってもらうかだ」
「……おまえらさ、ショックなのは分かるけど、さんに聞こえたら危ねぇぞ?」
一の忠告で、彼らは大人しくなる。
しかし、をどうにかするべきだというのは、誰もが分かっていた。
一人を除いて。
「ゼッテェにギャフンと言わせてやンぜ!!」
「あら、可愛い。坊やったら、はりきっちゃって」
「坊やって言うんじゃねェ!」
怒鳴る清春には静かに近づくと、その口を彼女の口で塞いだ。
またしても起こった予期せぬ事態に、清春は頭の中が真っ白になる。
だが、今度はすぐに意識が戻った。
「な、何しやがんだ、テメェ!」
「何って……キスよ?もしかして、知らない?」
「知らないわけねェだろ!そうじゃなくて、何でしやがった!」
「調教してみるのも楽しいものよね」
「俺はペットかよ!」
すっかりの手の上で、清春は転がされている。
突然のことで戸惑いを隠せないでいる彼らの中から、瑞希が前へ出た。
「ずるい」
「ん?瑞希もして欲しい?」
を後ろから抱きしめ、思ったことを口にした。
すると、は快く手を伸ばす。
「おいで。してあげるから」
優しい声に導かれるがまま、瑞希もとキスをする。
「ダメだろ、瑞希!さんは酔ってるんだぞ、本人の知らない間にそんなこと……」
「瞬の言うことなんて無視していいよ、ちゃん!だから、ゴロちゃんもチューする〜!」
「おい、風門寺!真壁も草薙も黙ってないで、止めろ!」
唯一の良心がこの場を止めようと動き回るが、仲間はいなかった。
「あー……俺もできればチューして欲しいな、なんて……なぁ、翼?」
「お、俺はからキスしてきたら、避ける理由はないと思っているだけだ」
「瞬も……してもらうべき……」
「ほら、瑞希もこう言ってるんだし、受け入れちゃいなよ!」
「うっ……そりゃ、俺だって……いや、しかしやはり本人の知らないところでは……」
「残念だったな、ナナァ?なら、もう寝てるぜェ?」
清春の言葉に全員がを見る。
いつのまにか、ソファに寝転がって眠る彼女がいた。
「ゴロちゃん、まだチューしてもらってないのに!」
「そういう問題じゃない!まったく……良かったと思うべきなのか?」
ホッとしたような、残念なような。
複雑の思いを抱えながら、瞬の言うことに一は賛同した。
「確かに、いくら酔ってるとはいえ……他の男とキスしてるのを見るのはちょっと、な」
「見えないところでされてても困るぞ」
「それなら、ゴロちゃんに良い考えがある!」
元気良く手をあげた悟郎は、収拾をつかせる案を提示した。
「もう一回だけちゃんを酔わせて、ゴロちゃん達みんなキスしたら、お酒は封印ってことで!」
「Great!ナイスアイディアだ、悟郎。ならば、が目覚めれば、また酔わせるぞ!」
「俺たち全員が秘密を持つことで、封印しようということか。それなら、許す」
「瞬……そんなにキスしたかったのか?」
「ンだよ、つまんねェの。結局、全員一緒かヨ」
「……がまん……する……」
B6が好き勝手に話を進めていることに気づかず眠る、。
もしも悠里がこの場にいたならば、何故永田が止めないのか、とつっこんでいただろう。
PLEASE, never drink!
- back stage -
管理:酔っ払ったメイドヒロイン、B6編でござい。
真壁:その割には、T6で暴れていた姿は見当たらなかったな。
管理:子ども相手だからね、「坊や」程度で終わるんだよ。
仙道:アァ?つまり、俺はハナから相手にされてねェってことかよ?
七瀬:滑稽だな、仙道。
管理:あー、喧嘩は無しでよろしく。
斑目:僕の出番……もっと増やして……
管理:美味しいところあったから、それで許せ。以上、解散!
2009.06.19
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