「こんなのを見つけたのよ」


ミレイが珍しく重々しい表情で、生徒会メンバーに告げた。




呪われた人形





 「これって、ただの人形、じゃないですか」


木箱から現れた、黒髪のアジア人の顔をした人形。
その髪は腰にまで伸びており、奇妙な服を身につけていた。
恐ろしいものだと思っていたシャーリーは、呆気にとられる。


 「あれ、この人形。どうやって手に入れたんですか?」


生徒会メンバーの中で、人形に一番興味をもったのは、スザクだった。
彼には、このような人形に見覚えがある。


 「ここに越してきて、アッシュフォード家がプレゼントとしてニッポン人から貰ったらしいの」

 「え、これ、ニッポンの文化なの?」


リヴァルが感心して眺めている。
カレンは知っているにも関わらず、知らないかのように振舞った。


 「この人形が着てる服って、キモノとか言うんだっけ」

 「そうだよ。よく知ってるね、カレン」

 「あ・・・えと、よく寝込むから、色々と本を読んでて」

 「これがキモノかあ」


人形に触れようとしたリヴァルの手を無言でミレイが遮った。
彼女の顔色は良くない。
ニーナが皆を代弁して、訊ねた。


 「あの、ミレイちゃん。この人形がどうかしたの?」

 「言わなきゃ分からないですよ、会長」


ルルーシュは、彼女を即す。


 「実は、それ・・・呪われてるみたいなの」


生徒会室が静まり返る。
双子のが、それを破った。


 「またまた、ミレイったら。そんな冗談」

 「何だよ、怪談話でもして、この暑さを乗り切ろうとでもしてるのか?」

 「そ、そうですよ、会長。その一言で十分、涼しくなりましたから!」


恐がっていたシャーリーが苦笑する。
しかし、ミレイの顔は浮かばれないままだ。
カレンは問いただす。


 「何か根拠があるんですか?」

 「それがね・・・その人形、私が小さい頃に見た時より、髪が伸びてるの」


一同は、人形へ視線を向ける。
大きな黒い瞳が、不気味に見えてきた。


 「ま、まさか、そんな・・・ねえ?」

 「そ、そうだよ、ミレイちゃん。お化けなんて、いないって」

 「会長、疲れてるんじゃないですか。休んだ方が良いですよ」


リヴァル、ニーナ、ルルーシュの順で彼女の言葉を否定しようとしたが、効きはしなかった。


 「そう思いたいわよ、私だって!でも、さすがに、これは無視できないわ」


神父にお祓いを頼んだらしいが、それだけでは不安らしい。
髪が伸びる原因が分かれば、きっと彼女も安心できるのだろう。
は顔を見合わせた。


 「それなら、二日間、俺達に貸してくれよ」

 「え?良いけど・・・どうするの、これ」

 「知り合いにでも原因が分かるかどうか、聞いて回ってみる」


双子は笑顔でミレイに告げた。









 「ゼロ!見て、これ」


は、黒の騎士団の中では珍しいブリタニア人の団員である。
ちょうど部屋から出て来たゼロを捕まえて、は早速人形を見せた。
それを見たゼロは、問う。


 「まさか、髪が伸びる呪われた人形だとか言わないだろうな」

 「すごい!ゼロも知ってるの、そういう話?ねえ、どうして?本当に呪い?」


興味津々で訊ねられても。
彼は内心、たじろぐ。
まさか学園でルルーシュとして見たことは言えなかった。


 「どうだろうな。それを追求したいなら、自分で調べ上げることだ」


マントを翻して、彼は逃げることにした。
それを愉快そうに眺めていたC.C.に後でからかわれるとも知らずに。



次に扇に人形を見せに行くと、カレンが驚いて話に加わった。


 「が聞くっていうのは、ここの皆のことだったの?」

 「だって、ニッポンの人形なら、ニッポン人に聞いた方が解決できるかと思って」


最もな答えが返ってきて、カレンは黙るしかない。
彼女もまた理由が気になっていた。


 「うーん。見ただけじゃ分からんが・・・こういうのは、大抵の場合」

 「呪いよ、呪い。本当にあるんだから、世界には、そういうのが」


何かを言おうとした扇の口を井上が塞ぐ。
その顔は、何か企んでいた。
だが、は気付いていない。


 「本当に呪いなの?」

 「実は、そういう話、昔からあるんだけど。事件は未解決のままになってるのが多いわ」

 「じ、事件?未解決?」


怖がっている彼女の側に、藤堂と四聖剣が現れる。
人が集まって騒いでいたからか、原因を探る為に輪の中に入ってきた。


 「あ、藤堂!これ、本当に呪われてるの!?」


涙目で人形を突き出してくるを見て、何事かと驚かされる。
どうやって彼女を宥めるべきかを悩んでいると、後ろで朝比奈が馬鹿にしたように笑った。


 「何言ってんの、呪いのはずないだろ」

 「でも、髪が伸びるって・・・」

 「その話?なら、絶対に呪いじゃないね。実は、」


井上が止めようにも、朝比奈が真実を告げる方が先であった。










 「呪われた人形ね。なかなか、面白いじゃないか」


次の日、すっきりした様子のから人形を受け取ったは、ロイドに人形を見せた。
科学の力で解決できたら、と思ったのだ。
は原因が分からないと言っていたが、笑っていたので隠しているのだろう。
彼は、それが気になって仕方なかった。


 「解決できるか、ロイド?」

 「どれどれ」


人形を手に取り、手当たり次第に触れていく。
もし本当に呪われたらどうするんだろう、と焦ったと目を合わせると、彼はニンマリ笑った。


 「不思議なことって、あるもんだねぇ」

 「ええ!?ってことは・・・まさか・・・」

 「うん、原因不明の可能性が大きいよ」


だからは笑っていたんだろうか。
恐ろしくなってきた彼に、セシルが温かいコーヒーを手渡した。


 「ロイドさん、脅しすぎですよ」

 「だって、呪いかもしれないんだよ?」

 「だからって・・・」


部屋に現れた人物が、彼女が言おうとした言葉を中断させる。
ロイド以外は、緊張が走った。


 「シュ、シュナイゼル殿下!」


セシルとが慌てて敬礼する。
休むように彼が伝えると、目はロイドの持つ人形へ移った。


 「それは・・・」

 「ああ、君が持ってきたんですよ。髪が伸びる、呪いの人形です」


気味の悪い笑みを浮かべるロイドの手から、それを受け取る。
少し眺めると、人形はへと戻った。


 「君も意地悪な事をするね。呪いでもなんでも無いじゃないか」

 「へ?そ、そうなんですか、殿下?」


すっかり騙されたは、シュナイゼルから原因を聞くと、後にロイドへ報復した。
その時、既に傷ついていたのは、誰かが先に成敗していたからなのだろう。











 「へー、呪いじゃなかったんだ」


安心しきったミレイが、リヴァルの手の内にある人形を見る。


 「うん、本物の髪の毛を使ってる時があるらしくって、だから伸びるんだって」

 「髪って勝手に伸びるんだね」


の言葉に、シャーリーが感心する。
そして、ふと気づいた。


 「でも、それなら、ニーナも気づけそうなことだったんじゃないの?」

 「あ、あたしは、ちゃんと近くで人形を見てなかったし・・・」

 「良いじゃん、別に。原因は分かったわけだしさ。呪いじゃないってだけで、十分だって」


リヴァルのおかげで、その話が流れると、スザクが口を開いた。


 「あれ、そういえば、ルルーシュは?」

 「ナナリーとデートだとさ。久々に兄妹水入らずで出かけてるらしいよ」










 「ああ、そうだ。咲世子さん」

 「はい?何でしょうか、ルルーシュ様」

 「髪が伸びる呪われた人形の話って、知ってます?」

 「怪談話ですか?確かに、私達の文化ではよく知れた話ですね」

 「それって、本当にあることなんですか?」

 「さあ。それで人が亡くなっていることは確かですよ」



彼が真実を知る日は、まだである。














-back stage-

管理人:ギアスの皆で怖い話ー!
スザク:でも、出てくるキャラが限られてるね。
カレン:最初はコーネリアとかも出す予定だったらしいよ。
シャー:え、どこにも出てないじゃん!
管理人:君達、裏話禁止。
ミレイ:ていうか、これ、夢じゃないじゃない。
管理人:ギクッ・・・ちょっと無謀、でした・・・人数多すぎ!

2007.07.30