賭けられていた挑戦





女性恐怖症という厄介な体質を持ちつつ、ガイはと交際することになった。
しかし、二人の間には相変わらず大きな空間がある。
好きな人であっても、ガイの体は無意識に彼女を拒んでいた。



ある夜、野宿の準備を手伝っているにガイは声をかけた。


 「今晩、ちょっと付き合ってくれないか?」

 「やぁだ、ガイってば皆の前で夜這い宣言!?」


アニスが欠かさず口を挟む。
すると、ジェイドも会話に参加した。


 「無理に決まってますよ、アニス。皆の前でヤバイ宣言なら通じるでしょうが」


彼の意味を掴めない三人は、首を傾げた。


 「もしかすると、ガイ無しでの戦闘を考えなければならないかと」


その言葉で、一同は何を意味していたのかを分かった。
彼は、ガイがに近寄ったりでもしたら何かしら反応を起こすのではないかと思ってるのだ。
アニスは、少し考え込むと答えた。


 「に近づこうとして気絶しちゃうとか?」

 「下手をすると、遠くへと逃げて一生帰ってこないかもしれませんよ」


好き勝手に話す二人を放っておき、ガイはに了承を得ると野宿の準備を続けた。







 「今日も特訓?」


仲間の元から少し離れた場所で、はガイと向かい合った。


 「ああ。あと少しなんだ」


ゆっくりと歩み寄るガイをは見守る。
二人の距離は、あと三歩程という所でガイは足を止めた。


 「ここまで来れば、十分だと思うけど?」

 「まだ目標には遠い」


ガタガタと体を震わせる彼にはため息が出た。


 「私としては、いつもこの距離で会話できたら嬉しいんだけどな」


は彼が自分の体質を気にしつつ、好意を寄せているのを伝えてくれた事だけで嬉しかった。
だから、彼が体質を治す努力をしてくれるのは、嬉しいし協力もしたい。


だが、青白い顔をした相手に話すのも気分は良くない。
無理をさせないよう言ってはみたが、ガイは首を横に振った。


 「せめて、手を繋ぐに変えたら?」

 「いや。誓いをたてたんだ。克服してみるさ」


一歩、また一歩と距離を縮める。
ガイは意を決して、に顔を近付けた。
震えながらも目的を果たそうとしたが、結局体が勝手に離れてまた二人の間は遠くなった。


 「やっぱ無理だよ、ガイ」


彼女にしたら、呆れてため息しか出てこない。


 「必ず・・・必ずやってみせるんだ」

 「無理だって。死ぬよ?」


血管がプツリと切れてと、は頭を指して言った。


 「どうしてもに俺がどれだけ愛してるのかを伝えたくてね」


好きな人と触れないだけで、本当に愛されてるのか不安になる。
今はそうでないとしても、いずれくるであろう時の為にガイは頑張っていた。


 「だからといって、キスは目標高すぎると思う」


近づきたいのに近付けないもどかしさにガイはどうしようもなく頭を掻いた。
このままでは、よりも先に彼があまりにも寂しすぎてどうかなってしまいそうだ。


 「ガイ」


悩んでいてのことを一瞬忘れていたガイは驚く。
彼女は彼の体が反応する前に素早く前に立っていた。
そして、触れたか触れないかの程度に柔かい唇がガイの唇を擦った。


嬉しさで舞い上がるガイの体は自然と彼女から離れる為、後進した。
しかし、途中で見えなかった石に躓き、派手に転んだ。
慌てては傍に寄ると、打ち所が悪かったのか、彼は気絶していた。


 「ほら、気絶だよ、大佐!」

 「いいえ、最初に逃げてたじゃないですか」


ガイの挑戦を見守っていた仲間は次々と木陰から現れた。


 「ぶぅ〜。賭けは私の勝ちです!」

 「両方してましたから、チャラということにしましょう」


人の苦労を賭け事にするな、と本人が起きていたら言っていただろう。


 「何言ってるの。私がキスしちゃったから、私の勝ちでしょ」

 「は参加できません」

 「ずるい!」


賭けに参加していたと主張するを交えて、彼らは抗議をし続けた。




気絶しながらもうなり声をあげるガイの苦労を真に理解してくれる者は誰もいない。








-back stage-

管理:書いちゃったよ、ガイ夢!
ガイ:しかし、俺はいじられてるわけか。
管理:・・・ごめんね?
ガイ:あー。まぁ、悪気があったわけではないのは、分かってるし。
管理:うん、そうなんだよ。愛ゆえによ。(ニヤリ
ガイ:(誤魔化された気もするが、気のせいか?)

2005.01.15

ブラウザでお戻りくださいませ。