朝から雇い主の息子に頼まれ、はガイの部屋を訪れた。
『暇すぎてつまんねぇから、ガイ、相手しろよ』という伝言と一緒に。
しかし、ノックをしても返事が無い。
庭師のペールによれば、ガイは部屋にいるはずだ。
もしや、と思った彼女は、扉を開けてみる。
案の定、そこにはテーブルに伏せて眠るガイの姿を見つけた。
そのテーブルの上には、音機関らしきものが置いてある。
どうやら、徹夜して仕上げたようだ。
「風邪、ひくよ?」
声をかけてみても、反応が返ってこない。
は箱入り息子が何と言うか恐れつつも、ガイに毛布をかけると退出しようとした。
その時、何やら金属の音が足元から聞こえた。
下を見ると、そこには小さな刃のかけらのような物が落ちている。
これをは蹴ったのかと拾い上げ、ゴミだと判断した彼女は一緒に持って出て行った。
苦労の末に
昼になっても現れないガイに腹を立てたルークは、自分から彼の部屋へ向かった。
怒ってやろうと大きく息を吸ったのに、先に使用人に邪魔される。
「無い!無い!無い!!」
部屋の中で喚いている彼は、ルークの存在に気づかない。
何があったのか問いつめようと近寄れば、怒声を浴びた。
「動くな、ルーク!踏み潰したら大変だろう!」
「何を踏み潰すってんだ?」
「MR-0023562だよ、そこらへんに落ちてなかったか?」
「えむあーる?」
「だから、MR-0023562だって」
何の話をしてるのか理解できないルークは、頑張って答える。
「よく分かんねぇけど、なら何か知ってるかもしれねぇな。朝、お前を呼ぶように俺が頼ん」
「サンキュ!」
ルークが喋り終わる前に、ガイは部屋を飛び出していた。
「俺のMR-0023562を知らないか!?」
は、困った。
屋敷内の掃除をしてる最中にガイが現れたかと思えば、第一声がこれなのだ。
何をどう突っ込めば良いのか分からない。
とりあえず、彼が女性恐怖症でなければ、に飛びかりそうな勢いでいるガイを落ち着かせることにした。
「はい、喋る前に大きく深呼吸」
「そんなことより、俺のM」
「状況を説明できるように、深呼吸して」
渋々といった感じで、ガイは深呼吸をする。
取り乱していたことに気づいたのか、彼は先に謝った。
「で、その製品番号は音機関のパーツか何か?」
「ああ。あと少しで完成するところだったのに、睡魔に襲われたみたいでさ」
仕事を始める前に完成だけはさせておこうと思ったら、一つ部品が足りない。
部屋の中を探してるうちに、焦りが先走って冷静さを失ったらしい。
情けない声で、ガイは事の説明をした。
「そんなの、見てないと思うけど・・・どんな物なの?」
「先が鋭くて指が切れそうな、小さな金属板だ」
「え、あれ、パーツだったの?」
「知ってるのか!?」
喜ぶガイを前に、は苦笑する。
ゆっくりと彼女が指したのは、ゴミ箱へ向けられていた。
「ま、まさか・・・」
「捨てちゃった。ごめんね?」
手を合わせて可愛く謝ってみるが、ガイは見えていない。
喪失感にとらわれている彼が復活するには、時間がかからなかった。
「今なら、まだ残って・・・」
「ついさっき、ゴミは収集されていったよ」
残された僅かな希望すら失い、ガイは地に手をついた。
「俺のMR-0023562・・・二万もしたのに・・・」
「二万ガルド!あんな小さいので?」
「給料を溜めに溜めて、ようやく全パーツを購入できたんだよ!」
どうしてくれるんだと言わんばかりに睨まれても、はどうしようもなかった。
「ただの雇われメイドに弁償しろとか言わないでね。そんな大金、無いから」
「分かってるさ・・・とりあえず、二度と勝手に物を捨てないでくれ」
あまりの元気の無さに、さすがのルークも今日はガイに話しかけるのを止めておいた。
-back stage-
管理:お題が「音機関」だったので、それに沿って書いてみました。
ガイ:ただ俺が一人騒いでるだけの話じゃないか。
管理:それ以外に浮かばないに決まってるやん、音機関について何も知らないんだから。
ガイ:そういえば、製品番号は適当に作ったのか?
管理:おう、かなり適当に数字を並べただけさ。
ガイ:・・・コピペしないで、今、言えるか?
管理:無理。
2007.03.31
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