一枚。

一枚。

また一枚。

闇の中、は丁寧に花びらを摘み、風の流れに乗せる。
野原に座る彼女の元から飛んでいく花びらは、綺麗に舞う。
そして、最後の一枚まで進むと、はその手を止めた。


 「いいえ」


残った花びらを見つめながら、彼女は呟く。
それが質問への答えだった。


 「花占いとは、また貴女には似合わないことをやっていますね」


見張りの交替の為、に声をかけたジェイドが嘲笑う。
彼女は何も言わずに花を見つめた。
占いを終わらせる気がまだ起こらなかった。


 「占いに頼っても、時間の無駄ですよ。結局は、自力で何とかするしかないのですから」


の隣に座り、彼は続ける。


 「相手の気持ちが自分へ向いてくれるだなんて、都合の良い事が簡単に起こるわけないでしょう」

 「何のことを言ってるのか、分からないよ」

 「良い結果が出なかったから、誤魔化すんですか?貴女の気持ちを」


睨むなど気にせず、ジェイドはさらに続ける。


 「知っていましたよ。貴女がルークに想いを寄せていることくらい」

 「なんで」

 「ガイとアニスも気づいているどころか、貴女に協力をしていましたね」


の顔が険しくなる。
そんな彼女に想われるルークが恨めしくなり、ジェイドの八つ当たりが増していった。


 「自力で仲を深めようとできなかった為に、彼は違う相手を選んだ・・・自業自得ですよ」

 「それは」

 「違うとでも?ですが、私から見れば、貴女はもっと積極的になるべきだと思いましたよ」


いつも彼に話す時はガイかアニスに付き添ってもらっていた状態で、想いが通じると?
馬鹿馬鹿しい、そうジェイドが吐き捨てる。


 「勇気を出せずに無駄に時間を過ごしていた想いなんて、本当に想っていたとは思えません」


聞く耳を持たなくなったのか、は手元の花を見つめている。
ジェイドには、無視されたことが余計に腹が立った。
醜い嫉妬から言いたくもない悪口を言う。


 「あのような子どもの何処が良いんですか。幼いが故に素直なだけじゃないですか」

 「まだ子どもである彼がティアを好いているのも当然ですね。母親を求めているようなものです」

 「貴女は彼の母親代わりにもなれないまま、ずっと想いを寄せているつもりですか」

 「それこそ、人生を無駄にしていますね。生きる意味なんて無いと思いますよ」


一方的に告げてみて、間を置いてみる。
は黙って最後の一枚を摘んだ。


 「いいえ」


占いの結果を口にしながら、花びらが無くなった花をジェイドに手渡す。
見張りを彼に任せて眠ろうと考えた彼女は、立ち上がる時にそっとジェイドの頬にキスをした。


 「ジェイドが私の想いに気づいているか、どうか」


彼のアドバイスに従い、積極的になってみたは微笑む。
おやすみ、と言って彼女は寝床に入った。


ジェイドは手渡された花を見つめる。
に言われたことが占いの質問であったことに気づいた途端、自分でも顔が赤くなるのを感じた。


 「見苦しい姿を見せてしまいましたか」


朝を迎えたら、彼が羨むルークのように素直に謝ることができるだろうか。
心配になった彼は、足元に生えていた一本の花を摘んだ。






花びらにキスを













- back stage -

管理:珍しくも、ジェイドが好意に気づかない設定で書いてみた。
ジェ:そんなことありませんよ。私だって、全てのことに関心があるわけではありませんから。
管理:・・・関心のあること以外はどうでもいいってことを言いたいんか。
ジェ:そうとも言ってませんよ。
管理:えーと、この書き方だといまいち読み手を騙せてなくて文章力のない自分にゲンナリしました。
ジェ:それが貴女の実力なんですから、仕方ないことでしょう。
管理:そっちがその気なら言わせてもらうが、貴方が花占いというのも似合わないよね。
ジェ:苦情というものは、登場人物にではなく書き手に伝わるものですよ。
管理:あ、そう。あと、お分かりでしょうが、ガイもアニスも彼女がジェイドを好いていたのは気づいてます。

2009.01.13

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