イレブンにある、広大とは言えない、しかし緑以外何も見えない場所。
ジェレミアは久しぶりにそこを訪れた。
無知は罪
『オレンジ事件』として人に知られる失敗により、軍部内では自分の身が狭い。
それをネタにからかう輩もいる。
ゆえに、ジェレミアは癒しを求めて、人里離れた場所に足を運んだ。
インターホンが無い家の玄関先で家主を呼ぶと、エプロン姿の女性が現れた。
「いらっしゃい、ジェレミア。何年ぶりかしら?」
「忙しくて、なかなか来れなかったことぐらい、察してくれ」
「知らないわよ。でも、その様子じゃ、イレブンの治安は良くならない一方なのね」
彼女は廊下を渡ってジェレミアを中へと案内する。
適当にくつろいで、と言うと、キッチンへ入っていった。
家の中には、何やら甘い匂いが漂う。
「ケーキでも焼いていたのか、?」
着ていたマントをリビングにあるソファへかけて、問う。
と呼ばれた彼女は、ミトンをつけたまま彼の前に姿を現した。
リビングに置いてある食器棚に用事があるらしい。
ミトンを外し、皿やカップを取り出しながら、は答えた。
「ええ、旬のフルーツでタルトを作ったの。飲み物は、コーヒーでいい?」
「ああ」
コーヒーテーブルに出来たてのタルトと一緒に飲み物が出される。
彼女も腰を下ろすと、ジェレミアはコーヒーを口にした。
「旬だと言っていたが、それは何だ?」
「オレンジよ」
思わずコーヒーを吹きだした彼をは不思議そうに首を傾げた。
彼女はメディアに目を向けないゆえ、どうしてジェレミアが反応したのか分からなかった。
たまにやってくる近所の人との世間話で情報を仕入れるぐらいだが、田舎のため、情報は古いものばかり。
だから、からかわれる事もないと思って、ジェレミアは安心してに会いに来ていた。
まさか、もうそのニュースを知っているのか?
ジェレミアは疑問を抱くが、彼女の顔を見るかぎり、その様子はない。
「ジェレミア、オレンジは嫌いだった?」
「・・・好きではないな」
複雑な気分でそう伝えれば、は悲しそうにする。
常に女性には優しく格好良い自分を見せたいジェレミアとしては、なんとしても彼女を喜ばせたかった。
その思いだけで、タルトを一切れ食べる。
「嫌いだとは、言っていないだろう」
問題なく食すジェレミアに安心して、も食べ始める。
これで解決した、と胸を撫で下ろしたジェレミアだったが、まだ試練は残っていた。
「あ、たくさん実ってるから、軍の人達へのお土産にどうぞ」
「・・・ワザとか?俺に何が起こったか知ってて、やってるのか?」
「え?」
オレンジというニックネームをつけられた彼が、軍部にオレンジなど持って帰ったりすれば、ますます笑われる。
さすがに、それだけは避けたくて、彼はの好意を断った。
は残念そうにするが、格好つけたい自分の思いをグッと抑えた。
「うーん、オレンジがいっぱい生ってるから、対処法に困ってるんだけどな」
「そんなに多いのか?」
「二本の木と考えると、少ない方だけど。食べる人がいないから」
食べる前に悪くなっちゃうことが多いのよ。
苦笑したは、何を思いついたか、嬉しそうに手を叩いた。
「そうだ。ジェレミア、オレンジの収穫、手伝って!」
「は?」
過去に告げられたギルフォードの言葉が甦る。
究極の侮辱を受けた台詞をまさか実行する羽目になるとは考えもしなかった。
今では、オレンジを軍部に持ち帰ることが簡単にできるように思えるぐらいだ。
「いや、私は、すぐにトウキョウへ戻らねば・・・」
「こんな田舎に来るんだもの、どうせ休みをとってるんでしょう?夜に帰っても明日には間に合うわ」
「だ、だが・・・」
「しつこい!紳士なら、女性の頼みを断らないの!」
安らぎを求めて、彼女に会いに来たはずだというのに。
普段よりも多く傷つきながら、ジェレミアは一日を過ごすこととなった。
-back stage-
管理:オレンジ苛め第3弾!ちなみに、まだ一つネタがあります。
オレ:まだあるのか!?
管理:確かに、究極のイジメは、これで書いちゃいましたねぇ。
オレ:どうして、夢小説なのに私は、こんな仕打ちに合わなければならないんだ!
管理:それが、貴方の『宿命』だから?
オレ:すでに『運命』ですらないのか・・・
2006.03.27
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