この繋がれた鎖を解きたい。


そんな事を思ったのは、何時の事だったのだろう。

今では、首輪をつけて飼われているのが当たり前のようになっている。
離れることの無い、重い金属に居る場所を決められて過ごしている。


主人の帰りを大人しく待つペット。


彼にとっては、私という存在は、それだけのもの。
私は人間以下なのだから、人間のような扱いを受けるべきではないのだ。






必ずしも良いとは思えない扱いをしてきた主人は、ある日、テレビをつけたまま出て行った。

『見ておけ』と命じられたから、テレビの前にずっと座って待っている。

『私の栄光に輝く姿を見ておけ』と仰っていたから、主人の姿を見逃さぬよう目を凝らした。



だけど、そこには彼の描いていたものが映らなかった。



誰が見たって不可解な言動を起こし、自分の任務を放棄した主人の姿。
人々の目の前で醜態をさらすのを見て、思わず笑ってしまった。


ああ、なんだ。
この人も私と一緒じゃないか。


そう考えたら、もっと笑えて。

もっと呆れて。

もっと泣いていた。



何故だろう。
急に胸が締め付けられるように痛くなるのは。
憐れみ?それとも、自分が自由になれないことへの不満?

よく分からなかったけど、その時の私に出来たのは、ただひたすらに泣く事だけだった。







しばらくして、主人が家に帰ってきた。
やる気を失ったのか、力なく私の鎖を解放してくれる。
これは、つまり自由を得ることができたと思っていいのだろうか。


 「どこにでも行け!」


動かない私に痺れをきらして、怒鳴る。
それならば、と私は何も考えずに貴方の隣に座った。


 「しつこいぞ。貴様は、もう自由なんだ。自分の行きたい所へ行け!」


分かってるよ。
だから、私はここに残る。
貴方の傍にいることにしたよ。


 「ねえ、貴方の名前は?」


だから、まずは自己紹介をしよう。
だって、ずっと一緒だったのに、私は貴方の名前を知らない。


 「そういうのは、自分から名乗るものだろう」


相手になる気になった貴方が喋ってくれたけど、私に名前なんて無い。
それは、貴方のペットとなった時に、捨てられたじゃない。


 「そう・・・だったか?なら、教えてやる。貴様の名は、だ」



そんな名前だったっけ、私?

まあ、良いか。
貴方がそれで私を呼ぶのなら、それが私の名前だ。

これからは、何かあればその名前を呼んで。
いつでも、隣にいてあげるから。


 「・・・変な女だな」


あ、人間になれた。
何でか、その事だけで幸せな気分になる。
その時の私の顔がよっぽど可笑しかったのか、貴方は優しく笑った顔を見せてくれた。



just call me










-back stage-

管理:ピクチャードラマ5の時点で、君が下等な人間を飼うとは思えないんだけどね。
オレ:昔に浮かんだネタだから、そのまま採用したというわけか。
管理:おうよ、実は他の苛めネタと同時に浮かんでたんだよ。
オレ:では、何故すぐ公開しなかったんだ?
管理:オレンジばっか更新してたら、文句言われるかなぁと思って。
オレ:だったら、最初から書かなければ良いだろう。
管理:あ、書かないほうが良い?
オレ:・・・・・・浮かんだら、すぐに書け。

2007.06.12

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