人に絶対などという言葉はない
それを証明する為に
僕は愛しいと思うモノ全てを
破壊し尽くすんだ
この手で
ガシャン、と手から滑り落ちた皿が音を立てる。
散った破片を何の感情も持たずに、僕はただ突っ立ってみていた。
「先輩、大丈夫ですか!?」
それも長くは無かったが。
ドアの向こうから聞こえた声に、慌てることもなく迎え入れる。
「やあ、ちゃん。どうしたの、そんなに慌てて」
「先輩、無事ですか!」
「うん。何も問題ないけど?」
いつも浮かべてあげる笑顔を返せば、彼女は胸を撫で下ろす。
一体、どんなことを想像してたんだろう?
彼女はいつも突拍子も無い考えにいたるから、それはそれで興味深い。
「良かったぁ。何か割れる音がしたから、心配しました」
「ごめんね、気を遣わせちゃって。皿を落としちゃっただけなんだ」
「いいえ!あたしが勝手に心配しただけですから」
申し訳無さそうにすると、ちゃんがまた慌てる。
どうして、そこまで焦る必要があるんだか。
・・・駄目だ、またちゃんのことを考えてしまう。
これは、止めなきゃいけないことなのに。
「あ、お皿。片付けるの、手伝いますね」
「うん、ありがとう」
僕が出してきた箒とちり取りで、壊れた皿がゴミ袋へ捨てられるのを見届ける。
その視線が不自然だったか、ちゃんは恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
「このお皿、思い出でもありました?」
この子は、どうして僕の見せない心を見透かせることができるんだろう。
そんな事をされたら、益々、君の事が気になってしまう。
それは、いけないことだ。
「別に。気に入ってはいたんだけどね」
少し刺のある言い方になってしまったけど、彼女は違う反応を示した。
「残念でしたね。新しいのは、買えないんですか?」
「買えるけど、もう買う気は無いかも」
「そんなに、思い出が詰まってたんですね」
思い出なんて無い、と言ったはずなのに。
この子は、どうして僕の見せようとしない心に触れてくるんだろう。
それとも、『優しい神城綾人』にとっては、代わりで補えるものでないと思ったのか。
自嘲的な笑みを浮かべたのを自分でも感じながら、話を変えた。
「そういえば、ちゃん。僕に何か用があったんじゃないの?」
「あ、そうだった。あの、今度の日曜、一緒に遊びに行きませんか?」
僕は、何時死ぬのか分からない身。
この世に未練を残したくないと願っている。
だから、人と関わるのも最低限に抑えておきたかった。
「ごめん。そんな気分には、なれないんだ」
もっとハッキリと断れば良いのに。
切り捨てた言い方だって出来ただろうに、止めてしまっていた。
残念そうにする彼女の顔を見ると、言い加えたくなったんだ。
「その日は、用事があるからさ」
気を遣いでもしたら、また彼女が誘ってくるだろうことは分かってるのに。
口にしてから、後悔した。
もっと自分の心を鬼にしなくちゃならない。
親しくなりすぎた人を切り捨てたことは、過去にもあったんだから。
今回も、できるはずだ。
「それじゃあ、また今度、一緒に出かけましょうね」
微笑む彼女は、やっぱり諦めていなかった。
どうして、割れた皿のように簡単に壊せないのか。
自分はモノに執着してはいけないんだ、と伝えれば良いだけなのに。
「うん、また今度」
思いとは裏腹な言葉が出てくる。
ああ、彼女との関係を終わらせなければならないというのに。
すでに彼女に心を奪われていた僕は、違う答えを出す。
「よければ、明日の放課後、一緒に帰らない?」
彼女の笑みが輝いて見えるのは、彼女に未来があるからだろうか。
さあ、壊すなら今しかない。
「はい!楽しみにしてますね」
今から僕が口にする残酷な言葉に、君はどう反応するんだろうね。
これを聞いた後も、僕の傍にいると望むだろうか?
今みたいに微笑んでいてくれるだろうか?
「ねえ、ちゃん。実はね、」
僕は、もう死んでるんだ。
-back stage-
管理:月さんが書いた詩を頂きました。
神城:それで、こんな話を書いたわけ?それにしちゃ、ちょっと違うよね、解釈が。
管理:うーん。黒い神城が書けなかった。題名は、詩に繋げた私なりの答えです。
神城:君の持ってる僕のイメージは「弱い」だもんね。
管理:そ、そうだよ、書きながら思ったよ、神城より雅紀向きかなぁと。
神城:・・・どうして、僕のことは下の名前で呼ばないわけ?
管理:覚えてないから。逆に言えば、雅紀も名字が分からん。
神城:・・・ねえ、君、本当にこのゲーム好きなの?
管理:若コンビは大好きだよ。あとレンレンも覚えてる。
神城:それ以外は興味ないんだね(呆れ
2007.05.08
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