驚きと戸惑いと





 「どうせなら、君を腕の中に閉じ込めたまま眠りたいね」

 「いいけど……それなら、先に本を用意してもいい?」

 「構わないよ。僕と一緒に夢の中で過ごして欲しかったけど、が眠れないなら仕方ない」


バカサイユの中で談話していると清春。
しかし、この時の清春は普段と違っていた。


その様子を外から覗いてる者が二人。


 「す、すごいわ、ちゃん……あの寝ぼけた清春くんに動じないなんて」

 「ああ……いつ見ても、あの清春は不気味だってのに……」


B6の担任である南悠里に、B6の一人である草薙一。
例の如く、寝ぼけた清春と関わりたくなくて、避難中である。
は平気だと言って、バカサイユに残った結果が、先ほどの内容へと繋がる。


が外にいる二人に対して、オッケーサインを出す。
清春が寝て安全になったらしい。
二人がバカサイユに戻ると、清春はを抱きしめながら寝ていた。


 「本当に抱きしめて寝てる……ちゃん、いいの?」

 「いつものことだし……起きた後のキヨの反応が面白くて、止められないんだよね」


毎度のことなのに、目覚めた清春が驚いて騒ぐことをは楽しみにしていた。
それに、と付け加える。


 「いつもは出さない、優しい部分が寝ぼけてる時に反動で出てるだけだと思えば平気だよ」

 「……なるほど、と言いたいけど、私には慣れるのは無理だわ」


悪戯三昧な彼を相手にして、どうすればそのような心の余裕がもてるのか。
ふと、悠里は気になることを口にした。


 「そういえば、清春くん、あまりちゃんに悪戯しないわね」


その問いに、も一も曖昧に笑う。
あの清春が悪戯をしないことには、やはり理由があるようだ。


 「何かあったの?」

 「えーと……まあ、キヨの優しさを垣間見れるエピソードだよね」

 「そう言える……かもな。ていうか、が危なっかしすぎるだけだろ」


余計に謎が深まる悠里のために、一が話した。


 「最初の頃は、も清春の悪戯の対象だったんだ。けど……は引っかかりすぎた」

 「え?それなら、清春くんが喜びそうよ?」

 「それだけならな……」


は耳が痛い話なのか、本を読むことに集中しようとしている。
そんなを見ながら、一は続けた。


 「清春の悪戯に引っかかって驚いたは、いつも変に体を動かして……余計な怪我ばっかするんだ」

 「怪我……してない人の方が珍しいと思うけど」

 「は異常だ。代わりに治療費出してた翼が嫌になるほど、引っかかるたびに病院通いだぜ?」


廊下を滑りやすくすれば、は肩を脱臼する。
捕獲のトラップを張れば、は首を縄に引っ掛けて窒息する。

おかげで、B5はの心配をして悪戯に引っかからないように気をかけ、
清春は清春で怖くなって悪戯を仕掛けなくなった。


 「運動神経が無さ過ぎて怪我ばっかするんじゃないかって、俺たちの中じゃ解決してるけどな」

 「そ、そう……納得してるなら、良いと思うわ」


運動神経だけで片付けられる問題ではないと思うが、悠里は放っておくことにした。
話が一段落ついたところで、ちょうど清春も目覚めたようだった。


 「ンア・・・ゲッ!なんで、オレ様がを抱いてンだよ!?」

 「おはよう、キヨ。今日は早い目覚めだね」


体を離して騒ぐ清春には平然と挨拶をする。


 「おい!なんで、オレがオマエを抱いて寝てンのか、答えろ!」

 「さあ、分からないよ、そんなこと」

 「ゼッテェに知ってるだろうが!」


手の上で転がされてる清春は、聖帝の天使以外の相手と考えれば、確かに珍しいものである。
感心しながら見ていた悠里だったが、小悪魔の表情は突然に変わった。
それは、何か企みが閃いた時の顔だ。


 「そうか、そうか。オレとそんなにイチャつきてェなら、最初からそう言えっつーの」


そう言うと、清春はを押し倒した。
彼女の手から本が落ちる。
さすがに一も黙っておくのは可哀想になり、口を挟んだ。


 「おい、清春。そこらへんで止めとけ」

 「アー?しょうがねェだろ、がそうしたいって言うんだからよ」

 「言ってません!」


悠里も加勢し、清春の立場が危うくなる。
彼は下敷きになっているを見た。


 「オマエは、どうなんだよ?オレにこうされるのは嫌か?」


近づいた清春の目に見つめられ、は真っ赤になって答えた。


 「そ、それは……嫌、じゃない……よ……」


予想外の反応に、清春も唖然とする。


 「ンだよ、だったら何もオレが我慢することなかったじゃねェか」

 「へ?……んぅっ……」


重ねられた唇の隙間から舌が絡み合う。
次第にの腕が清春の首に巻きつき、居心地が悪くなった一と悠里は慌ててバカサイユを退散した。


 「ん?どうした、二人して。何かあったのか?顔が赤いようだが……」

 「つ、翼くん……」

 「な、なんでもねぇよ。それより、今日はバカサイユに出入りは禁止にしておいた方がいい」

 「What?だったら、俺は今からどこで休めばいいと言うんだ」

 「とりあえず、今日は駄目ったら、駄目なの!もし入るって言うなら、補習を倍にするわよ!」

 「む、むしろ、今からでもいいと思うぜ、先生!」

 「何を言ってる、一!担任も、担任だ!まずは状況を言え!」


混乱している二人から事情を聞きだし、翼がその場を離れるまで、清春とがどうなったかは誰も知らない。
しかし、次の日に清春が上機嫌で悪戯をし回っていたことから、大方の予想はついた。













- back stage -

管理:か、書きにくい、キヨ……!
清春:ハァ?書けてンじゃねェか、ちゃんと。
管理:書けてる!?書けてるのか!?
清春:何が気に食わねェっつーんだよ。
管理:君のその口調だ!どこでカタカナ使うんだ!?
清春:ンなの、適当でいいじゃねェか。
管理:……そうしたいのに、変にこだわってできない……
清春:一生、悩んでろ、ヴァーカ。

2008.06.09

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