ルークは物音を耳にして、目を覚ました。


ここは、旅の途中に寄った町。
日が暮れたので、仲間は宿で休むことにした。


人と共用することを嫌がったルークの為に、彼の部屋だけは一人で使用していた。
とは言っても、ミュウも同じ部屋で眠っている。

ルークは、それが寝返りでもうって音を立てたのかと、問題を解決させた。
もう一度眠ろうと目を瞑ると、首筋にひやりと硬い物があたる。
何なのか疑問に思って目を開ければ、誰かが枕元に立っていた。


慌てて体を起こそうにも、首にあたる物で押さえつけられて動けない。
その時、初めてそれがナイフであることが分かった。


 「貴方。自分の身の危険ぐらい、早く気づいた方が良いわよ」


どこかで聞いたことのある声がする。

しかし、彼は誘拐されて以来、屋敷にずっと閉じ込められていた。
今までの旅で出会ってきた人々の数はしれている。


 「誰だ?」

 「名乗る必要は無いけど、教えてあげる。よ」

 「?」

 「そう。忘れたの?前に会った事あるわよ」


言われて、彼女がジェイドの戦友であった事を思い出す。
彼女は彼を目の敵にしていたのではないのか、とルークは不思議に思った。
少なくとも、自分がに狙われる理由が分からない。


 「別に貴方を殺しに来たわけじゃないから、安心して」

 「誰が、お前の言う事を信じられるかっつーの」

 「わざわざ、お坊ちゃまが目覚めるのを待ってあげたじゃない」


ナイフを突きつけている手は緩めず、が微笑んだように見えた。
背筋が凍る思いだったが、ルークは叫ばないよう口を紡ぐ。


 「ちょっとは考えたみたいね。偉いじゃない」

 「人を馬鹿にすんじゃねえ」

 「だって馬鹿じゃない、貴方」


それとも、とは言葉を続ける。


 「愚か、とでも言った方が良いのかしら」

 「意味は同じにしか聞こえねえぞ」

 「貴方の耳は、確かね」


悪びれる様子も無く、ナイフを喉元から離す。
その隙にルークは彼女から逃げようとしたが、今度は彼の左目にナイフを刺すように向けた。


 「動いたら、その目を見えなくさせるから」

 「お前が用事あるのはジェイドの方だろ!俺は関係ねえ!」


つい怒鳴ってしまえば、は声を出して笑い始めた。
何を考えてるのか分からないルークは、怯えるだけ。


 「貴方、やっぱり存在する価値なんて、無いんじゃないの?」

 「なんだと!?」

 「ただ自分だけが可愛い、お坊ちゃま」


殺す価値すらない人間と、同じね。
ルークの頬に切り傷をつける。

ナイフについた血を舐めるのは、彼女の癖なんだろうか。
ルークのを舐め取ると、は一歩下がった。


 「今の騒ぎで、貴方の幼馴染がすっ飛んでくるわね」

 「もう辿り着いたぜ」


荒々しく開かれた扉から、ガイが入ってくる。
その後から、他のメンバーも集まってきた。


 「ルーク、大丈夫?!」

 「ガイ!ティア!」


明かりがついた部屋の中で、仲間はが窓際に居るのを確認した。
彼女は、動く気配が無い。
気をとられないよう、それぞれが戦闘態勢に入った。


 「あら、珍しい。ジェイドは、いないの?」

 「私なら、ここですよ」


ゆっくりと部屋に入ってきたジェイドは、を睨みつける。
は気にせず、一方的に話をした。


 「怖い顔してるわよ。安心して、私はルークに会いに来ただけだから」


箱入り息子というのはどのように成長したか、見てみたかっただけよ。
手にしていたナイフを仕舞いこみ、は手をあげた。


 「恐ろしいほど、何も知らないのね、この子」


ルークに近づいて、彼の長い髪を手に取る。
軽く口づけをしてから、は窓際に戻った。
視線は、ルークに向けたままだ。


 「次は、貴方が絶望している時にでも、会いましょう。その時にでも、殺すか生かすかを考えるわ」


が、窓から舞い降りる。
窓に寄ったガイが行方を知る前に、彼女の姿は消えていた。


 「ルーク。今の事は、忘れなさい。貴方を混乱させるだけです」

 「あ、ああ」


ジェイドに言われたものの、ルークは口づけされた髪を手に取る。
ナイフを喉につきつけられた、その時の冷たさを思い出した。


 「次、か。いつの話なんだろ」


片手で自分の喉をやんわりと掴むと、意識が遠のく気がした。




呪(まじな)い










-back stage-

管理人:ジェイドを殺めたいヒロイン設定、第何弾目だ?
ルーク:またこの設定で書くぐらいなら、連載でも作れよ。
管理人:終わらせる自信は無いから、嫌だ。
ルーク:断言するほど嫌なのか。
管理人:同一主人公ってだけで、苦手なんだもん。どうしてかっていうと・・・
ルーク:あー!もう言うな!この話の裏話する時間なくなるだろ!
管理人:アニスちゃんは、イオン様を守るため、この場にいません。
ルーク:おい、「まだ長髪の頃の話なんだ」とかねえのか?
管理人:うーん。あとは、ルークもアッシュ同様、扱いやすい。
ルーク:え。

2006.12.07

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