「ちゃんと帰ってきてね。あなたの場所は、此処にあるんだから」


彼女は自身の胸に手を当てて微笑む。
その笑顔があるからこそ、レイヴンは今まで頑張れてこれたのだと思えた。







make a promise








 「ところでさ・・・レイヴンとって、結婚の約束をしてたんだよね?」


世界を星喰みから守ったユーリ達が無事に帰って、二年。
久々に皆と顔を合わせようとエステルが提案し、彼らはオルニオンに集まっていた。
宿屋で休憩しているところで、カロルが唐突に口を開く。


 「そういえば、そうよね。決戦前だっていうのに、一緒にいたあたしらを放ってさ」

 「おっさんがにプロポーズしたんだよな」

 「あら。あれは、からプロポーズしたものだと思ってたわ」

 「どちらにせよ、いい雰囲気でしたよね、二人とも」


かつての仲間達が当時を思い出し、茶化し始める。
照れたレイヴンが慌てて話を先に進めようとした。


 「それで、何で少年は唐突にそんな話をしたわけ?」

 「あ、うん。どうして、二人はまだ結婚してないのかな〜と思って」


その言葉の意味をようやく理解できたエステルが血相を変えて、レイヴンを責めた。


 「駄目じゃないですか!のためにも、早く結婚してあげないと!」

 「落ち着け、エステル。それは俺達が口を挟んでも、どうしようもないことだ」

 「でも、が可哀想です!」

 「あのな。よく考えてみろ、二年経っても結婚してないんだぞ?もう別れたってこ」

 「俺達はまだ別れてないってば!」


必死にレイヴンが抗議して、なんとかエステルがユーリの言う事を信じないようにする。
そんな彼をどう思っているのか、はただ呑気に茶を飲んでいるだけだ。


 「あんたは、どう思ってんの?やっぱ、もういらないってこと?」

 「リタっちまで、そんなこと言わないの!」

 「いらない・・・のかな」


やっと口を開いたの発言に、レイヴンがショックを受ける。
落ち込んだ彼は、部屋の隅で膝を抱えて座り込んだ。
いじけたレイヴンを誰もフォローしないどころか、ジュディスとユーリが傷をえぐる。


 「それなら、イイ男を紹介するわよ?おじさまより、もっとイイ男を」

 「おっさんよりイイ男なら、ルブランでもいいんじゃねえか?」

 「二人とも容赦ないなぁ、相変わらず」


冷静にカロルが返すと、が否定した。


 「レイヴンがいらないってことじゃなくて。わざわざ結婚しなくてもいいかなって」

 「どういう心境の変化よ?プロポーズし合ってたくらい、仲良かったくせに」


リタに問われ、は唸った。


 「なんというか・・・この二年間は忙しくて、タイミングを逃したって感じ?」

 「そうやって先延ばしにしていって、結局、結婚しませんでしたというパターンね」

 「あまり良い傾向だとは言えねえな」

 「そういうカップルは最終的に破局するわよ」


リタの決定的な言葉に、レイヴンがまたもや傷つく。
それを知ってか知らずか、は笑顔で答えた。


 「でも、私はレイヴンと一緒にいられれば、それで良いから」


その優しさにレイヴンが甘えてしまっているのではないか。
すっかり元気を取り戻し、に抱きついたおっさんを見た全員がそう思った。
そして、その時、エステルに名案が浮かんだ。

















 「おはようございます、!早く支度して行きますよ!」


次の日、やけに楽しそうなエステルに起こされ、は眠たそうに目を擦った。
意識がはっきりとしないうちに、ジュディスと共に彼女の服を脱がしている。


 「それにしても、助かったわね。偶然、職人がいてくれて」

 「これはもう、やるしかないと誰もが後押ししてくれているんです!」

 「あのー。何の話?」


が訊ねると、様子を見ていたリタが熱中している二人の代わりに答えた。


 「あんた達の結婚式を今からするんだって。良かったわね、お金は全部あたし達で出すらしいわ」

 「結婚式って・・・い、いいよ、別に。また機会があれば自分達でするから!」

 「その機会が今なんです!さ、じっとして下さいね。お化粧もしなくちゃ」

 「世界一綺麗な花嫁さんにしてあげなきゃね」


エステルの世話好きに圧倒され、は大人しくする。
こうなった彼女を止められる者は誰もいないのだ。
今は抵抗するべきではない。


 「ねえ、こっちは用意終わったよ」


しばらくすると、カロルが戸を叩く音がした。
何やら騒いでいる声がするので、男は全員揃って来ているらしい。


 「こちらも、準備ができました」

 「とっても可愛く仕上がってるわ」


ジュディスがドアを開け、純白のドレスに身を纏ったの姿を見せる。
花婿はその姿に開いた口が塞がらなかった。


 「な、なんか、レイヴンがそんな格好してるなんて、変」


が恥ずかしそうに目を逸らし、レイヴンの白い正装への感想を告げる。


 「そ、そういうだって、俺様は可笑しいと思うけど?」


互いに目を合わせた途端、二人は笑った。
そして、笑うのを止めてから、一呼吸。
二人は隙を狙って、部屋から飛び出した。


 「あ、どこ行くんです!?」

 「ごめん、エステル!勝手に結婚式やってくる!」

 「そういうこと!あとは頼んだわ!」


二人の後を追いかけようとしたエステルをユーリが止める。
ジュディスとリタも、こうなることが分かっていたようで落ち着いていた。


 「いつまで経っても手間がかかるよね、あの二人って」


カロルも見守る中、レイヴンとは近くにいた馬に乗り、街を出て行った。














 「ここまで来れば、大丈夫でしょ」


周囲を確認してから、レイヴンは馬から降りる。
そして、に手を差し出した。
彼女はその手を取って、同じように馬から降りる。


 「エステルには悪いことしちゃったね」

 「平気、平気。青年達が上手くやってくれてるって」


軽くの額にキスをし、他の事を考えさせないようにする。
は嬉しそうにレイヴンの腰に腕を回した。


 「やっぱり、変」

 「何が?」

 「レイヴンのその格好」

 「え、それ、本気で言ってたの?」

 「うん」


あの場から抜け出すために言っていたことだと信じていたレイヴンが悲しんだ顔を見せる。
そんな彼の頬に、はそっとキスをした。


 「でも、そんなレイヴンも好きだよ」

 「俺様も、こんな美女と結婚できて幸せ者だわ」


の頬に手を添え、誓いの口づけをしようとする前に止められる。


 「浮気だけは、絶対に許さないんだからね」

 「するわけないっしょ、がいるのに」

 「じゃあ、今まで関わったことのある女の人との縁は全部切って」

 「それって、嬢ちゃんとかリタっちとかジュディスちゃんも含むわけ?」

 「当たり前」


どうやって縁を切ればいいのか悩んでる隙に、が誓いを終わらせる。


 「これで、主導権は私に決定」


にやりと笑ったに苦笑しながらも、レイヴンはもう一度幸せをかみ締めるように口づけをした。
















- back stage -

管理:すげー!1時間弱で書いちゃった、この夢。
レイ:そりゃ、元々考えてたネタと絡めてるんだから、早いでしょ。
管理:バラすな、おっさん。そんなに悲恋話にしたいか?
レイ:ちょ、首を絞めないで、首を!
管理:おっさんなら死なないから、大丈夫。
レイ:どういう根拠よ、それ!?
管理:とりあえず、形式的なことはレイヴンが苦手そうだと思って、こんな終わりにしてみました。
レイ:いや、元々の俺は真面目だったんだけど?
管理:知るか、これはレイヴン夢であって、シュヴァーンじゃないんだよ。

2009.01.08

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