「のう、。一緒に花火をせぬか?」
太公望が花火を懐から取出しに見せる。
その花火の小ささに彼女は驚いていた。
「ドカーンと空に大きく舞散るやつじゃないの?」
「太乙のやつが手頃に遊べるものを、と作ったものを盗ってきた」
元が元なので、は不安になった。
何か変な事が起こったらどうしよう、と。
「案ずるでない、安全性はあるようだ」
その言葉を信じることにして、は参加表明を出す。
「おぬしもどうだ、王天君」
二人の傍らに生えていた木の上で休む王天君に声をかける。
彼はだるそうに呟いた。
「めんどくせぇ」
「一緒にやろうよ、王天君!」
「ほれ、も誘っておるぞ」
「チッ。やりゃあいいんだろ」
恐れもせず木の上から飛び降りて、の隣に立つ。
それを太公望が間に入ることで邪魔をし、そのまま花火をする準備を始めた。
「今、ここでやるの?」
「善は急げとも言うであろう」
「早すぎだろ」
「おぬしは黙っているか、のために水を汲んでくるかしてこい」
「水なら私が汲んでくるよ」
「いや、そういう仕事は王天君に任せればよい」
太公望は、まさかに仕事を任せるとは思わないといわんばかりの目で彼を見つめる。
かかか、と笑う彼の言う事を聞くのは苦痛だったが、王天君は仕方なく動いた。
「すごい、綺麗!」
「おお、さすがは科学オタク。腕は良いのう」
「気をつけろ、。火傷するなよ」
「分かってるって」
分かってないだろうから言ってるんだ、阿呆が。
花火を手にしたは、楽しそうに振り回していた。
王天君はその事をさほど気に留めていない太公望を睨みつけることで、苛立ちを彼女にぶつけないようにした。
「痛っ」
花火が自分の手にかかったのか、は持っていた花火を手放した。
太公望は心配そうに駆け寄り、王天君は呆れてため息を吐いた。
「大丈夫か、!」
「うん、なんとか」
「だから、気をつけろって言ったんだ」
王天君は、の手をひいて水で火傷したところを冷やそうとした。
しかし、その前に太公望がの手を引いていた。
「ほれ、こういう事もあろうかと氷を用意しておる」
氷を手拭で包み、それをの手に当てる。
準備が良すぎだと、王天君は彼の思惑に気付いたが、の為になったので黙ることにする。
治療を終えると、は再び花火を手にしようとした。
それを慌てて王天君が止める。
「は、ロケット花火でも眺めてろ」
これ以上、怪我でもされたら困る。
その気持ちをはありがたく受け取り、王天君と太公望が見せる花火を楽しんだ。
「と、いう素敵な夢を見たんだ。」
「何が素敵じゃ、ボケ」
の話に伏羲は毒づく。
しかし、彼女は気にせず、空を仰いだ。
「楽しかったなぁ、太公望と王天君と一緒に遊ぶの」
「現実には、ありえんだろうが」
わしらは二人で一人なんだ。
夢のように上手く事が運ぶほど、現実は甘くない。
そう彼に言われても、は笑っていた。
「だから、楽しかったんだよ」
会話が途切れ、静寂が訪れる。
それは普段の自由気ままな空気とは異なっていた。
「のう、」
自分が王亦として生きていくことが、を悲しませているのだろうか。
そんな不安にかられながら、彼は口を開いた。
「おぬしはわしと王天君、どちらを選んだのだ?」
「どっちも。王奕か伏羲を選んだことになるのかな?」
即答にも近い、迷いのない返答に彼は微笑んだ。
「二股か。も罪深い女だのう」
「二人のどちらかを選ぶ必要がなくて、ラッキーだと思ってますから」
くすりと笑うを抱き寄せ、伏羲は遠い空を見つめる。
彼が幸せそうな顔をするので、は言った。
「楽しそうだね」
「うむ。なかなか、『伏羲』で在る事を楽しんでおるよ」
「私のおかげでしょ?」
「違うわ、ボケ」
彼の照れ隠しにがまた笑った。
しあわせ
-back stage-
管理人:太公望と王天君と一緒に過ごせるって、素晴らしくない?
太公望:初っ端から、そのコメントかい!
王天君:案外、最後の「どちらか選ばなくてラッキー」ってのは、こいつの気持ちじゃねぇの?
管理人:あはは、バレたか。
太公望:己の欲望でしか書いていないのか、お前は。
管理人:夢なんだもん、あたりまえでしょう。
王天君:開き直るなよ。
管理人:まぁ、結局夢オチでしたけどね。
太公望:たんに、誰と夢を見たいか自分で選べなかっただけだろうが。
2006.08.29
ブラウザでお戻りくださいませ