「退屈ね」


短剣にこびりつく血を先程からずっと拭いている。
何度も汚すのなら、一回ずつ綺麗にしなくても良いのに。
そう思いつつ、シンクは青白い顔を仮面で隠した。


 「怖いの?」


何の反応も示さない彼に、は微笑む。
彼は吐き気がした。


 「退屈しのぎにレプリカ殺しをするアンタの気がしれないだけだよ」


これで、何体目だろうか。
地面に転がっているモノを数える気にもならない。


 「同胞が殺されたの、そんなに嫌?」


この女、滅多に笑わないんじゃなかったっけ。
目の前で肩を震わせるまでして楽しんでる彼女をどう見れば良いのか、見当もつかない。


 「人間として、アンタは可笑しいって言ってんの」

 「シンクの方が人間らしいってこと?」


レプリカである貴方の方が?

いちいち突っかかってくるに怒りが湧き上がらないわけではない。
しかし、シンクはただ立っているだけ。

その細い首には腕を回した。
互いの息がかかる距離になっても、彼は微動だにしない。


 「大丈夫、私はシンクが一番好きだから」


忌々しい顔を隠す為の仮面が外される。
無造作に捨てられたそれは、死体の山の上に落ち着いた。


 「別にアンタに好かれても、どうも思わないけど」

 「あら、残念。ふられちゃった」


わざとらしい言い方が気に食わなくて、彼は自分の知っていることを教えてやる。


 「アッシュがいるでしょ。いつも遊んでる」


目線が交わる。
間を置いてから、は笑みを深めた。


 「アッシュは、まだ駄目。もう少し育てないと」


の顔が近づく。
何の邪魔も入らず、唇が重なった。
シンクの乾いた心に潤いが戻るような感覚がする。


 「それに言ったでしょう、私が一番好きなのはシンクだって」


何を対象にして、一番と言っているのか。
『愛している』とは一度も言ってもらってないことも、知っている。
だが、のその言葉は安心できた。


 「別に。アンタに好かれたって、どうも思わないよ」


素直に嬉しい気持ちを表せなくても、手は動く。
の後頭部を掴むと、シンクは濃厚なキスをした。





求むもの






-back stage-

管理人:どうしても少年は手の上で転がされてれば良いという考えが離れない。
シンク:うわ、何、このヒロイン。何股するわけ?
管理人:ふむ。何股する気だろう?
シンク:無責任すぎるでしょ、それ。
管理人:いやいや、ちゃんと付き合ってる人は、君だけだよ?(今の所)
シンク:・・・なんか、最後に嫌なのが聞こえたんですけど。
管理人:魔法の呪文さ!(あとから変更しても大丈夫なように)
シンク:読んでる人、本気にするから、冗談はそこまでにしておきなよ。
管理人:ほーい。

2007.05.25

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