定まらないモノ



 「?」


教団のどこかにいるはずの女を探し回るなんて、滑稽な姿だ。
自分の今していることが可笑しく思えながら、僕はもう一度その名を口にした。


 「


大抵の場合、僕が帰ってきたら真っ先に飛んでくるんだけど。
しかもその後、ずっとウザいくらいに、まとわりついてくる。
アリエッタよりは、しつこさが無いとは思うけどね。


そのせいで、いつのまにか僕はが居ないと落ち着かない。
だから、面倒だけどこうして彼女を求めて彷徨う。


 「それにしても、どこにいるんだか」


の部屋に行ってみたら、僕宛にメッセージがあった。
『かくれんぼ』、と。
僕に彼女を見つけろという意味なんだろう。


 「。いい加減、帰らないといけないんだけど」


はったりをかけてみるけど、反応は無い。
つまり、彼女は僕の近くに居ないこと。
そこで、まだ探していない図書室に向かってみた。







は、居た。
図書室で何やら懸命に本を読んでいる。
こういう状態では、僕が何を言ったって聞いていない。


 「よくも振り回してくれたね」


耳元で囁いてみても、やっぱり返事は無い。

退屈だ。
いつもなら、その眼差しは僕にしか向けられていないのに。
本は僕より勝っていた。


集中してるの髪をすくって、指に巻きつける。
すぐに指から落ちてしまうことが、まるで僕を拒絶しているように思えて怖かった。


 「早く読み終わりなよ」


無理矢理、の座る横に腰掛けて、その肩に頭を休める。
仮面をつけてるせいで、こめかみの辺りが少し痛い。

これだけ接近しても反応が無いのは普通じゃない。
絶対に変だ、この女。








 「げ。お、おはよう」


口を尖らしていたは、ばつが悪そうにする。


 「寝込みを襲うなんて、いい度胸だね」

 「そ、そんなつもりはなかったんだってば!」


体を起こした僕に対して、が必死に弁解する。
そこで素直にうんと言ってれば、キスぐらいさせても良かったんだけど。
代わりに、頭を軽く叩いてやった。


 「はい、捕まえた」

 「え?」

 「自分が言い出したくせに、忘れたわけ?かくれんぼ、してたんでしょ」


思い出したが慌てる。


 「今の無し!ずるいよ!」

 「先に本を優先してゲームを放棄したのは、そっちだろ」

 「だけど、シンクも寝てたじゃん」

 「うるさいな。文句は、僕を襲えるようになってから言ってよ」


僕がに捕まったことなんて一度も無いことを分かってるせいか、黙り込む。
こっちが図書室を出ると、金魚のふんみたいについてきた。


これが、の居場所。
これが、僕の居場所。


だけど、やけに後ろが静かで不気味だ。
どんなに怒ってたって元気がなくたって、自分の話を一生懸命するくせに。
また調子狂うのが嫌で、仕方なくに声をかけようとした。



 「シンクを襲えたら、何言っても良いんだっけ?」



嬉しそうに言ったの顔がすぐ傍にある。
一瞬、口が塞がれた。


 「文句は言っていいって言ったけど。一回襲えたからって言えるとは言ってないよ」


別にキスなんて、僕からしようと思えば何時だってできる。
その方が手間がかからない。
だけど、にさせようとする方が面白いかもしれない。


 「減らず口。もうシンクに会わなくなるかもよ」

 「が、それに耐えられるわけないだろ」


今度は、僕の勝ち。
嫌われると不安がったが抱きついてきた。


 「ごめんなさい」

 「別に。僕は何とも思ってないけど」

 「そっか。ところで、どこに行くの?」

 「さあね」


さえいれば、どこにいたって一緒だからさ。


聞いたらが調子に乗りそうだから、言うのは今でなくても良いか。












-back stage-

管理人:んー、もしかしてシンクの口調がヤバイ?
シンク:そう思うならゲームし直したりして確認しなよ!
管理人:そんなことしたって、個人的に君に甘そうな話って合わない気がしてさ。
シンク:自分の好みの問題だろ。
管理人:ほのぼのって、意識して書こうとすると難しいね。
シンク:話を変える、いつものやり方も、いい加減やめたら?
管理人:・・・ぐすん。

2008.08.17

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