「あ、いたいた。、ちょっと相手してやってくれない?」
仮面で顔を覆っている少年から声をかけられたのが、の一日の始まりだった。
かくれんぼ
「何の用?私は今から仮眠をとりたいんだけど」
けだるそうにシンクからの要望を突き放そうとする。
彼は大して感情を露にせずつっこんだ。
「仮眠って、さっきまで寝てたじゃないか」
「正直に言えば、二度寝ってことよ」
「それは正直に言いすぎ・・・です」
第三者の登場で、は露骨に顔をしかめた。
ぬいぐるみを抱える少女を指して、シンクに問う。
「まさか、相手しろっていうのは」
「アリエッタの事だよ」
「とも一緒に遊びたい・・・です」
子供の相手はしたくないんだけどな、とぼやく彼女を放って、アリエッタは話を進める。
既に強制的にラルゴやディスト、アッシュも参加する事となっているようだ。
「リグレットとヴァンは?」
「ヴァンは、今はアジトにいない。リグレットは仕事だってさ」
「一緒にかくれんぼしたい・・・です」
シンクの背後に隠れる彼女に、は申し訳無さそうに言った。
「ごめんね、遊ぶのはまた今度でお願い」
「嫌だ。も一緒に遊ぶの!」
駄々をこねるアリエッタは、の腕にしがみつく。
困ったは、シンクに助けを求めた。
しかし、彼にアリエッタを止める術はないようだ。
変わりに、アドバイスをくれた。
「早く諦めた方がいいよ。アッシュは三時間粘って負けたから」
その言葉では仕方なく、かくれんぼに付き合うことにした。
「アジトの中なら、どこでも隠れられる・・・です。外はダメ。」
グーに握られた手を出し、それを合図に皆も手を出した。
「最初は、グー」
じゃんけんぽん、と手を出せば、綺麗に一人だけ負けていた。
かくれんぼがしたいと喚いたアリエッタだ。
「皆、ちゃんと隠れてよ」
振り向いて数え始める前に睨みつける。
周りは渋々隠れる場所を探すべく、彼女から離れた。
スタートした部屋から出たところで、シンクは壁に背を預けて立っていた。
100まで数えようとするアリエッタの声が近くで聞こえるのに、全く動かない。
は不思議に思って声をかけた。
「シンク、かくれんぼする気ある?」
「全く無いね。僕も無理矢理付き合わされてるだけさ」
とりあえず隠れる振りだけでもしとくよ。
そう告げたシンクは、瞑想に入ったのか喋らなくなった。
やる気の無い彼は後でアリエッタが煩く言いそうだと考えながら、は隠れる場所を探し始めた。
「ディスト、姿消せる薬とか作ってないの?」
使えるものは使っておけ。
は、最初にディストの部屋を訪れた。
しかし、彼女の問いに返事は無い。
部屋の真ん中に置かれているカイザーディストに近寄ると、はそれを力いっぱい蹴った。
「何をするんですか、!傷がついたらどうするつもりです!」
「いるなら質問に答えてよ、鼻垂れディストくん」
「その呼び名は、さっさと忘れなさいと言ったはずです!」
彼は真面目に隠れていた。
ベッドの下から四つんばいになって這い出てきた。
彼の言う事を一切聞かず、は質問を繰り返した。
「姿を消せる薬、作ってないの?」
「あるわけないでしょう!そんなものがあれば、とっくに使っていますよ」
「そう。じゃあ、もう用は無いわ。じゃあね、鼻垂れ」
「だから、ジェイドから聞いた事は全て忘れなさいと言っているでしょう!」
キーキー煩いディストを部屋に残し、は真面目に隠れる場所を探すことにした。
「ラルゴ。それ、絶対に泣き喚かれると思う」
キッチンならば、それなりに隠れられる場所もあるだろうとは足を踏み入れた。
だが、そこには既に先客がいた――料理をしている状態で。
「悪いが、アリエッタの遊びに付き合う気がない」
「その気持ちは非常に分かるけど、それじゃ非情なパパになるわよ」
「パパ?」
「遊びたがる娘の期待に背いて、泣かれちゃうパパ。まさに貴方の近い将来の状態」
その言葉が効いたのか、ラルゴは料理をしていた手を休め、少し考え始めた。
どちらにせよ、ここでは隠し場所を見つけることはできないだろう。
そう判断したは他を探した。
リグレットの部屋の前を通り過ぎると、他の人の声も聞こえる。
彼女は仕事中のはずだが、関係の無い内容が耳に入り、は興味津々で扉を開いた。
「何やってるの、リグレット?」
顔を顰めてしまうのも、無理はない。
リグレットの部屋は何故か撮影所になっていた。
その中心で煌びやかな衣装を身にまとったリグレットが立っている。
「ああ、か。見て分かるだろう、写真を撮ってるんだ」
「何の為にリグレットの写真を撮ってるわけ?ヴァンにあげるの?」
「そうじゃない。活動の為の資金が少し足りなくなったから、急いで稼ぐ必要があったんだ」
それで自分の写真を売ってお金を作ろうとしていると彼女は述べた。
愛の力とは壮絶なのね。
が違う意味で関心していると、リグレットが彼女に声をかけた。
「も案外人気があるかもしれないな。一緒に撮らないか?」
「いえ、結構。今はアリエッタの相手をしていて忙しいの」
慌てて言い放つと、はすぐに部屋を出て行った。
また面倒な事に巻き込まれそうになった、とため息を吐く。
隠れる場所が見つからないままでどうすべきか悩むが、すぐに諦めた。
そして、諦めたは相手をする事を放棄して、外へ出て行った。
「部屋に帰って寝ようかしら」
その考えを何故もっと早く思いつかなかったんだろう。
まだ自分は寝ぼけていたのかと呆れつつ、自室へ戻った。
勢い良くベッドへ飛んで寝転がったは、何かにぶつかる感触がした。
よくよく見れば、布団に何かが包まっている。
もしや、と恐る恐る捲ってみるとアッシュがそこに居た。
「何やってるの?」
「・・・隠れている」
耳まで真っ赤にして答えるアッシュには不審そうに目を直視した。
「本当に?」
「本当だ」
目を逸らさずに言い放った彼の言葉を信用したのかしていないのか。
そんな事は関係なく、は取り上げた布団に包まった。
「じゃあ、勝手に隠れてて良いよ。私は寝るから」
「お、おい。お前は隠れなくていいのか?」
「私は、それより寝たいのよ」
結局、はその後アリエッタの友達に起こされる事となる。
しかし、彼女が眠りについた後、アッシュがどうしたかは誰もしるよしもなかった。
-back stage-
管理人:お題31・54・80で書いたヒロインで書きました。
結局、六神将の中で真剣にアリエッタの相手をしてくれるのは、ディストだけなのさ。
シンク:それは、アンタの勝手な想像でしょ。
管理人:でもこんな感じだと思うな、普段の六神将。
アッシュ:それより、元々のヒロイン設定と印象が違わないか?
管理人:ああ、それはこれがギャグ話&ヒロインはジェイド殺す以外は興味無いからだよ。
シンク:イメージが全く違うと思うんだけど。
管理人:だから、それはこれがギャ(以下略)
アッシュ:要するに、貴様はずっとシリアスで書けないって事だろう。
管理人:正解!
シ&ア:威張るな、そこで!!
2006.08.10
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