宿で一泊することになったユーリ達は、それぞれ借りた部屋に別れた。
エステルは早速着替えようと荷物を出し始めたが、首を傾げる。


 「あれ?可笑しいです…」


がさごそと荷物を漁るエステルにリタが訊ねた。


 「どうしたのよ?」

 「替えの下着が見つからないんです」

 「そんなことなら、どこか違うところにでも紛れてんじゃ…」


リタが自分の荷物を確認してると、手が止まる。


 「リタ?」

 「無い!あたしのパンツも無いわ!」


下着泥棒かもしれないと、2人は慌てて隣の部屋に行く。
残りの女の仲間にも下着の確認をしてもらった。


 「無いわね」

 「無いかも」


ジュディスとは、大して慌てずに答える。
リタの怒りは頂点に立ち、男の部屋に乗り込んだ。


 「ちょっと、おっさん!今すぐ死にさらせ!」


宿屋にいることを一応は考慮し、リタは帯でレイヴンに攻撃をしかけた。


 「いっ…あいたた!ちょ、リタっち、タンマ!」

 「問答無用!」


レイヴンが痛い目にあっている間に、カロル達はエステルに事情を聞いた。


 「それが…私達の下着が盗まれてたんです」

 「なるほどな。それで、おっさんが疑われてるわけだ」

 「でも、レイヴンは犯人じゃないと思うよ?」

 「あら、そうなの?」


カロルの発言に、ジュディスが拳を引っ込める。
リタが落ち着いた後に殴る気だったようだ。
それを聞いたリタも、攻撃を止めた。


 「どういうこと?」

 「ゆ、ユーリとレイヴンも下着が見当たらないって、今ちょうど話してたんだよ」


睨まれたカロルが泣きそうになりながら答える。


 「まさか、ユーリ達も下着泥棒に?」

 「ガキんちょの下着だけ盗まれてないことを考えれば、可能性は高いわね」

 「え、リタのまで盗まれてたわけ!?」


カロルの考え無しな発言に、リタは制裁を下す。
悲鳴をあげる彼は置いて、ジュディスは意味深にを見た。


 「ユーリとおじさまの下着だけなら、が犯人だったんだろうけど」

 「あ、そっか。あたしらのと男のとで犯人が違うなら…」


少しずつ冷静さを取り戻してきたリタが、を疑う。


 「変態だとは思ってたけど、男の下着を盗むってのはどうかと思うわ」

 「ちょっと待ってよ。女子の下着泥棒が別だとしたらの話でしょ?」

 「ユーリはともかく、おっさんの下着が盗まれるなんて、相当マニアックじゃない」


アンタ以外で盗むやつなんているわけ?
それを言われて、否定ができないに誰もが呆れた。
だが、エステルが助け船を出す。


 「でも、皆の下着が一斉に盗まれたなら、犯人は一人だけかと思います!」

 「ま、そうでしょうね。そんな偶然、滅多に起こらないでしょうし」


分かってはいたが、リタとしてはに警告をしたかったようだ。


話の流れが途切れる。
じっと皆の様子を見ていたユーリが、ここで口を開いた。


 「まだ確認できる場所は確認しておこうぜ。それからでも、下着が盗まれたって考えればいいだろ」


その確認をエステルとカロルがするため、部屋を出ていかせた。


 「で?ジュディは分かってんだろ、犯人」

 「あら、バレちゃってたかしら?」

 「バレバレだ。まあ、俺も予想はついてるが」


二人の間で話が進むのをリタとレイヴンが割り込んだ。


 「ちょっと!2人が分かってるってことは…」

 「いたいけな嬢ちゃんと少年を出て行かせたってことは…」

 「ええ、そうよ。犯人は、ってことね」


は何の反応も見せずに、立っているだけだ。


 「そういえば、さっきリタっちがを犯人だって言った時、否定はしなかったような…」

 「で、でも、だって下着を盗まれたって言って…」


リタが途中で、の言っていた言葉を思い出す。


『無いかも』


 「下着が無いとは、断言してなかったわね」


ジュディスの補足を聞き、ユーリが口を開いた。


 「大体、俺達の下着が盗まれたら、こいつが黙ってるわけねえだろ」

 「あー…確実に羨ましがって、暴れるわね」


その光景が安易に浮かんだレイヴンが頷く。
すると、観念したは笑って誤魔化そうとした。


 「ごめん、ごめん。でも、嘘はついてないから、許してよ」

 「それよりも、あたしらの下着を返しなさいよ!」

 「えー…やだ」


怒ったリタがファイアーボールを出す前に、なんとかユーリが抑えた。


 「気持ちは分かるが、やるなら外でやれ!」

 「この変態を滅するためなら、場所なんて関係ないわよ!」


暴れるリタはユーリに任せて、レイヴンは恐る恐るに声をかけた。


 「ねえ、俺らの下着で何するつもりなわけ?」


ニコリと笑うに、さすがのレイヴンも身を引いた。


 「もちろん、オナニーで」

 「わー!わー!それ以上は言わなくていい!おっさんが悪かったから!」

 「ということは、私達の下着を盗んだのは、フェイクってことかしら?」


それならすぐに返してもらえるわよね。
そう確信してジュディスは言ったつもりだったのだが、はきょとんとした顔で答えた。


 「ジュディ達のも使うよ?」

 「あら、いやだ。手が滑って、の首が飛んでしまいそうだわ」

 「ちょ、ジュディスちゃん!気持ちは分かるけど、この子のために犯罪者になる必要はないって!」

 「でも害をなす要素は、全て駆除すべきだと思うの」

 「だから、抑えて!宿屋の人達の事も考えて、ね!?」


今度は、飛びかかろうとするジュディスをレイヴンが必死に抑える。
そんな二組をが笑顔で観察している間に、エステルとカロルが帰ってきた。


 「やっぱり、どこにも無かったよ…て、何があったの?」

 「ああ、おかえり、カロル。ごめんね、私が皆の着替えをまとめて管理してたのを思い出してさ」

 「そうなんです?」

 「うん、本当にごめんね。今すぐに持ってくるからさ」


気が治まらないリタがまだ文句を言い続ける。
ジュディスも武器を納めたとはいえ、まだ怒っている。
ユーリとレイヴンは、疲れてもう何も言う気力が無かった。


一人元気なに、事実を知る彼らはどんな罰を与えるべきか、後で相談することにした。


















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こういうキャラもいても良かったんじゃないかな←
いや、別に私が盗みたいと思ったとか、そんなんじゃないですよ?
でもこういうタイプって、何を罰としても効かないよね。

2009.09.25

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