毎年、華やかな聖帝舞踏祭。
静かに盛り上がる会場から、そっと抜けた影が3つ。
止まらぬ涙
会場にいることが耐えられなくなった、瞬。
彼は人から離れるべくバカサイユに向かった。
室内の電気はつけない方が楽に感じた。
今夜の舞踏祭。
見たくなかったものを、知りたくなかったことを目にした、あの瞬間。
自分の思いが相手に通じることはないと気づかされてしまった時の虚無感。
力なくソファに腰をかけ、ただ何も考えなかった――何も考えたくなかった。
――あの人は、はなから俺を見ていなかった。
絶対という確信があったわけではない。
それでも、もしかしたらという淡い期待は残っていると信じていた。
カタン、とバカサイユの扉が開かれる。
開けた人物は、入っていいか戸惑っているようで、動く物音がしない。
「そんなところで何をやってる、」
「……すごいね、どうして私だって分かったの?」
は努めて明るく返した。
「他のヤツは大抵、騒ぐか帰る」
「なるほどね〜……そっち、行くよ?」
項垂れたままの瞬は、黙っている。
しかし、静かに彼の前にが立てば、ポツリと彼は呟いた。
「俺じゃ役不足らしい」
「……うん」
瞬の肩が震えだす。
「先生は、アイツが好きなんだな」
「……うん」
はそっと彼を抱きしめ、頭を撫でる。
子供のようにしがみついた瞬の声は震えた。
「先生……俺は……あなたのことが、好きなのに!」
今夜の舞踏祭。
知ってはいても、見たくなかったことを目にした瞬間。
は、瞬が担任と話したあとの顔を見て分かってしまった。
自分にはどうにもできなくとも、気になってしまう。
そして、つい彼のあとを追ってバカサイユに来た。
――やっぱり、来なければ良かった。
腕の中で震えながらも、泣こうとはしない瞬を見ては思った。
せめて悲しみを吐き出してもらえればと考えていたのに、それすらさせてやれない存在なのか。
彼もまた、の思いを知らないままでいる――知ろうとしていない。
つうと彼女の頬を伝った一筋の涙は、彼の代わりに流したものだろうか。
「ンだよ、暗くてもはっきり見える、高性能なカメラなんて設置するンじゃなかったぜ」
今夜の舞踏際。
気づきたくなかったことが嫌でも目に入った瞬間。
バカサイユの近くに出て、設置したカメラで二人の様子を清春が見ていた。
「とりあえず、ナナには飛びっきりの悪戯をしかけとかねェとな……」
元気のない友人を励まそうと、好意で言っているのを理解してくれる人は少ない。
そんなことは、気にしていなかった。
――ナナなんかのために泣くンなら、誰がオマエのために泣くンだっつーの。
のたった一筋の涙が清春の心を乱れさせる。
元気にさせたい気持ちがある一方、ぐちゃぐちゃにまで壊してしまいたい気持ちが生まれた。
その思いの名前に気づかないでいたいと彼は願った――知らないでいたいと。
「チッ、雪が降ってきちまったじゃねェか」
空を見上げる清春の頬に雪が触れる。
一瞬にして溶け、彼の代わりに頬を濡らしてくれた。
- back stage -
管理:見事な一方通行ですね。
七瀬:言うことは、それだけか?
管理:……やっぱりメモしてないと、最初の案が少し抜けてるなぁ。
仙道:他にもあンだろ?
管理:……もうちょっと頑張れたはずなのにな?
七瀬:行くぞ、仙道。
仙道:しょーがねェ、やってやるゼ!
管理:ふえ!?よ、よく分からんけど、ごめんなさーい!
2008.07.20
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