大きなため息は見ている側にとっても、疲れてくる。
いつも思うけど、ショウちゃんって、常にストレス溜まってるのかな?


「どこからでも、どうぞ」

「……そういう問題ではありませんが、さんがそう言うなら、そうします」


眼鏡の縁に触れてから、まずは1つ目のツッコミ。


「どうして、ウェイトレス姿なんですか?あなたのクラスは、喫茶店ではないはずです」

「悠里ねぇのクラスに遊びに行ったら、翼が出してくれた」


何か言いたそうにしてるけど、2つ目のツッコミ。


「そのような浮かれた姿で、学園内を歩き回っていたんですか?」

「悟郎が宣伝のために私を連れ出したけど、勝手にどこか行っちゃって」


ああ、眉間の皺が、これでもか!というほどに増えている。


「それなら、すぐに着替えに戻れば良かったでしょう」

「その途中で、あの生徒達に絡まれた」


3つ目のツッコミ。
それ以上は出てこないのか、指摘する元気がないのか。
ショウちゃんは質問に変えた。


「以前にも、さんはB6を妬む生徒と問題があったはずですよね」

「あったね……あの時、すごい騒動だったなぁ。B6総出で犯人退治してて」

「笑い事ではないし、懐かしむ事でもありません」


彼は諫めながら苦い顔をする。
そうだった、教師はそれを止めに入って、散々な目に合ったんだっけ。
……衣さんだけは最後まで無傷で笑ってたけど。


「仲間を思う気持ちと団結力は素晴らしいものですが……違うところで発揮して欲しいものです」


少しずつ、話がずれていく。
この隙に逃げ出そうと、忍び足でドアに近づくも失敗した。


「あのような騒ぎが起こると分かっているはずなのに、どうしてまた絡まれてるんですか」


あ、その言い方は気に食わない。


「あっちが勝手に来たんだから、不可抗力だと思うんだけど」

「そんなことが起こらないように、対策はできたと思いますよ」


それを言われると、こっちは反論できない。
なので、誤魔化してみた。


「このような不祥事、二度と致しませんので、どうかお許しを。ご主人様」

「……あなたは……それで許されると思ってやってるんですか?」


通用しないかな、やっぱり。
頭を下げてるから、表情は見えないけど、呆れてそう。
その態勢のまま伺えば、驚くことにそのポーカーフェイスが崩れていた。


「……何を物珍しそうに見てるんです」

「えーと……許して頂けますでしょうか、ご主人様?」


ご主人様、というところでショウちゃんの心が乱れてる。
よく分からないけど、意外とハマってるみたいだ。
彼自身、そのことに戸惑ってる。


「今回は事前に防げましたし、これ以上責めるつもりはありません。ですから、遊ぶのは止めなさい」

「遊んでませんよ。この格好をしている時は、あなたは私のご主人様ですから」


無理矢理すぎる言い分なのに、ショウちゃんはつっこんでこない。
……大丈夫かな?


「もし、私があなたの主だというならば……言うことを聞くんですか?」


しまった、その手があったか。
すでに口にしてしまったことを取り消すのは、さすがにできない。
大人しく従うことにした。


「では、。あなたは、そのままここで待っていなさい」


呼び名が変わった……あ、そうか。
自分のメイドなら、下の名前で呼んでも可笑しくないもんね。


「何故でしょうか?」

「あなたの着替えを引き取りに行ってきます。誰もここに近づかないでしょうから、問題は起きないはずです」


それなら、一緒に行けばいいだけだと思うんだけど。


「主の命に従えないんですか、?」

「い、いえ。従います。ご主人様が戻ってこられるまで、お待ちしております」

「よろしい」


そして、帰ってきたショウちゃんが外で見張ってくれてる間に私は着替えた。
ショウちゃんと別れてから、私は悠里ねぇ達に顔を出しておこうと、教室に戻る前に向かった。


「何も無かったようで、安心したわ」


悠里ねぇは、B6の皆から事情を聞いてたみたいで、無事を喜んでくれる。
優しいなぁと思いながらも、彼女は気になることを続けて言った。


「二階堂先生も、本当に良かったと思ってるでしょうね」

「……ショウちゃん?どうして、そこでショウちゃんが出てくるの?」

「あの人もちゃんのことを探してくれてたのよ。いつも冷静なのに、ちょっと取り乱してたみたい」


あのショウちゃんが取り乱す、というのは珍しい話だ。
よほど私が変な顔をしていたのか、悠里ねぇが笑った。


「それだけ、ちゃんは二階堂先生に気にかけてもらってるのよ」

「そう……かな?あまり、そう感じないんだけど」

「絶対にそうよ。だって、先生、ちゃんのウェイトレス姿をこれ以上他の人に見せたくないって……」


あ、といった顔で悠里ねぇが口を塞ぐ。
ごめん、悠里ねぇ……そこまで言っちゃったら、何を言おうとしてたのか分かるから。
何で私が資料室で待たされたかは理解できたから。


「大丈夫だよ、悠里ねぇ。ショウちゃんには秘密にしたうえで、からかうから」

「助かるわ……て、からかうの?」

「絶好のネタだもん」


あのポーカーフェイスが崩れる、素敵な情報。
どう攻めるべきか、じっくりと考える必要がある。


「どうしようかな〜」

「ほどほどに……ね?ちゃん」


私にとっては、意外な収穫を得た、楽しい文化祭になった。
















- back stage -

管理人:ショウちゃんの愛、分かりにくー!(笑)
二階堂:失礼なことを言わないで下さい。
管理人:やっぱ、ラブラブってのは難しいのかなぁ。
二階堂:あなたの力量が足りないだけです。
管理人:ぐっ……きつい……事実なだけに。
二階堂:あなたの得意とする、ほのぼのでやってみたらどうですか?
管理人:ああ、それ?あなたとは無理そうだから諦めてる。
二階堂:…………。

2008.07.11

ブラウザでお戻り下さいませ