怒った翼が問いつめてくる。
どうして、と言われても……誰も周りにいなかったから?
「俺が助けると……信じてなかったのか?」
「別に、そういうわけじゃ」
「じゃあ、なんだと言うんだ!」
気迫に負けて後ずさると、背中に壁があたる。
翼はそんな私を逃さないように、肩をつかんできた。
「……とりあえず、怪我はないな?」
「う、うん。おかげさまで。ありがとね、翼」
笑ってみせると、安心してくれたのか、翼がいつもの強気な笑みを浮かべた。
「当然だ。は今、俺のメイドだからな。俺のモノを守って何が悪い」
「……翼のメイドになった記憶がないんだけど」
「さっき、ご主人様と呼んだだろう」
遊びでやったつもりだったのに、それを本気で捉えるつもりらしい。
だけど、真面目に翼のメイドになったら、後が辛そうだ。
「あれはふざけてやっただけで……そもそも、メイドじゃなくてウェイトレスだし」
我がまま坊ちゃんに付き合う永田さんは、本当にすごいと常々思ってる。
だからこそ、自分が仕えようとは思えない。
逃げようと試みるけど、翼は手を離してくれなかった。
「Masterが言うことには、逆らえないのがメイドだ」
翼の顔が近づいてくる。
女の子達が騒ぐ美形に耐えられなくなって、私は目を瞑った。
口に柔らかい感触があたる。
一度それが離れたとき僅かに口を開けば、その間から生ぬるいものが入ってきた。
「んっ……つばさっ……」
「違うだろう」
私の目を開けさせた翼は、変わらず笑ってる。
肩に置かれてた手は、いつのまにか私の腰に回っていた。
「ご主人様、だ」
むかつくけど、様になってる。
顔がいいから?
「じゃあ、ご主人様に聞いていいですか」
「なんだ?」
「どうして、そんなに怒ってたの?」
確かに、助けを呼ばなかったのは、私が悪い。
警戒心が足りなかったのも、私が悪い。
でも、翼が怒って心配するほどのことか疑問に思えた。
「……覚えてないのか?……いや、覚えてない方がいいのかもしれないな……」
言うべきかどうか悩んでる翼だったけど、私が待ってるのを見て口を開いてくれた。
「前に、がああいう連中に絡まれた時……俺たちは、何があったか知らない」
B6が助けにきてくれた時には、もう犯人はその場にいなかった。
もちろん、皆は誰が犯人かを突き止めて、報復以上のことをしてたけど。
だけど、その時の私は、かなり怯えていた……らしい。
「そこまで怖い思いしてたんだ、私……」
「……よほど怖くて、忘れたのか?……だとしたら、俺の心配は取り越し苦労だな……」
「え、何か言った?」
「いや。図太い神経をしてると言っただけだ」
なんとなく、違うことを言ってた気がするけど、答えてくれなさそうだ。
「図太くないです。今にも千切れちゃうんじゃないかってくらいに、細いんだから!」
「ふん。だったら、どうして、俺にそんな口をきく?」
「大変申し訳ありませんね、ご主人様。私は昔から口が悪いもので」
だからメイドだって言ってるのに。
あ、違った、ウェイトレスだよ。
翼に付き合ってると、こっちまで可笑しくなってくる。
「ならば、その口を塞いでやるだけだ」
顔を上に向けられて、距離が縮まる。
……まさか、またキスされる?
「ご、ご主人様、止めてください。人が来たらどうするんですか」
「平気だろう。誰もここに来る用事などない。大体、永田が外で見張ってくれている」
「……近くに人がいる状態じゃない!」
「Why?永田が俺の側にいるのは、いつものことだ。問題ない」
問題、ありまくりです!
- back stage -
管理:坊ちゃんは永田が常にいることに馴れすぎて、麻痺してます。
真壁:あ、あいつがどういう意味で言ってるのか、俺にも分かってるぞ!……一応。
管理:ほぉ。では、なぜ、わざわざ?
真壁:そ、それはだな……俺のものだということをさりげに伝えるために……
管理:ほほぉ。それはまた可愛らしいことを。
真壁:だ、黙れ!それより、なぜ俺のここの表記がFamily nameなんだ!
管理:私に合わせるため。権限はこちらにあるのだ、ふはははは。
2008.07.11
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