幼い我愛羅と別れて、瞬きをした次の瞬間。
今度は緑に囲まれていた。
また、会おう
〜2nd story from Heroin's view point〜
「。お前を上忍に任命する。」
この里の一番偉い人である火影というお爺さんに告げられた言葉に、私は話がついていけなかった。
「あの、どういう意味ですか?」
周りの人間は口答えをするとは思っていなかったらしく、ざわついた。
「そのままの意味・・・で、納得はしてくれまいか。」
簡単にいえば、忍として才能があるから働いて欲しい、ということだった。
だけど、私は忍としての才能を何時見られていたのか疑問を抱いた。
「最初の日。正当防衛で戦っただろう。その時にな。」
私の質問は見透かされ、火影が答えてくれた。
正当防衛・・・確かにあの時は、自分の行動に驚いた。
我愛羅の家の屋根にいたはずが、次の瞬間森の中にいた私。
警備中だった人に不審者だと思われたのか、突然攻撃されたのだ。
それを無意識に体が動いて、相手を負かした様子を火影は見ていたらしい。
たまたま他国からの旅に帰ってくる途中に、だ。
「私は、この国の事も忍の事もサッパリなんですが。」
常識を心得ていない私をいきなり『上忍』というランクの高い職業につかせるだなんて。
このお爺さんは見かけよりもかなり肝が据わっている。
「だが、帰る場所がないなら、働いてもらおうかと思ってな。」
その一言は卑怯です。
事実なだけあって、私は否定することができなくなった。
「安心せい、一番年が近い奴を傍につけといてやる。」
私だけが何が起こっているのかを理解せずまま、集会らしきものは終了した。
火影につけてもらった男は随分と喋りかけてきた。
木の葉の里を案内してもらった事は、感謝するけど馴れ馴れし過ぎるのも嫌なもんだ。
少し彼の存在にうんざりしてきた一ヵ月後、里の中では中忍試験の話で盛り上がっていた。
男によれば、他国の忍もこの試験を受ける為に集まってくるらしい。
それ故、警戒心だけは高めなければならないと。
元々この里の人間でもない私にとっては、自分の身さえ守られれば問題は無い。
さほど真剣に聞かずに道を歩いていた。
すると、前方から背に瓢箪を背負っている赤毛の少年がこっちへ向かってきていた。
我愛羅と同じ髪の色だ、と頭だけを見てのんきに思いながら通り過ぎようとした。
だけど、何故だか顔を拝見したくなりチラリと盗み見をすれば。
まぎれもなく我愛羅だと私の中で確信できた。
「我愛羅?」
それでも不安で、声に出してみたら少年は反応してくれた。
振り返った彼を改めて見ると、私はどうやら数年後の世界へ飛んでいたようだ。
「誰だ、お前は。」
声が男らしくなってることに思わず胸をときめかす。
同時に小さかった頃とは違って、少し冷たさを感じた。
「あー、忘れちゃったか。仕方ないよね、我愛羅小さかったし。」
予想外、とまではいかないけど。
覚えてもらっていない事に胸がズキズキした。
だけどその気持ちを誤魔化そうと格好良くなったね、とか中忍試験を受けに来たのか、と明るく問う。
我愛羅が何も喋ってくれなくて、どうしようかと悩むと連れの男に腕を引っ張られた。
「。もう行こう。」
私が名を呼んで欲しいと思ったのは、貴方じゃないのに。
何となくそんな事を思いながらも、私は我愛羅に挨拶をして離れていった。
「アイツには近づくな。」
しばらくして、男が口を開いた。
当然、私には意味が通じない。
「なんで。」
「砂漠の我愛羅。アイツは、危険だ。」
詳しく聞こうとしても彼はそれ以上何も語ってくれなかった。
久しぶりに再会できたことが嬉しくて、私は中忍試験の会場前で待ち伏せをした。
「我愛羅、おはよう!」
そういえば、我愛羅と会ってたのは何時も夜だけだったね。
『おはよう』だなんて初めて言った。
思ったことを口にしても我愛羅は表情すら変えなかった。
よくよく考えたら、記憶に無い人物が馴れ馴れしく喋りかけてくるのは怪しい事かもしれない。
「私のこと覚えてないんじゃ、名前も知らないよね。私は、。」
改めて手を差し出して、握手を求めてみた。
また名前を呼ばれたいな、と気持ちを込めて。
だけど、彼は私を無視して会場へと向かっていってしまった。
行き場のない手を見つめていると、何故か涙が頬を伝った。
-back stage-
管:よっしゃ、2つ目終了。
我:やけに長かったな。
管:これでも説明は省略したんですよ?
我:だから、中途半端に意味が分からなくなってるのか。
管:・・・あと1つ書いたら、連載が始められる!
2005.10.25