たとえ今でなくとも

いつかは貴方に惹かれる運命だったのだろうか



唄に残す想い


〜the deadline is two months〜



目が覚めて、まず私がしたこと。
大蛇丸様への連絡。
唄に伝えたい気持ちを込めて声に出す。



我は願う
己が再び舞うことを
我は願う
己が再び飛び立つことを

されど我は願う
己が眠りにつくことを
されど我は願う
己が未だ飛び立たぬことを



とりあえず、大蛇丸様へ自分の無事を伝える。
そして、2ヶ月程は安静にしているから戻れないと。

2ヶ月ぐらいは、ここを離れてはならない。
何故なら急にいなくなってしまえば、余計に怪しまれるから。
少しは信頼を得てからでなければ、相手に隙ができないから。


さて、大蛇丸様にも連絡をしたことだし。
次は自分の容姿を変えなければならない。

何故、と言われたら。気分転換、とも言えるんだけど。
本当の理由としては、大蛇丸様に私が今、木の葉の里にいることを知られたくないのだ。
ただでさえヘマをしたのに、『木の葉に助けられました』なんて言える訳がない。

だから、容姿を変えなければならない。
あの人のことだから、絶対に私がどこにいるのかを探り当てるだろうから。
簡単には見つからないように工夫をしなければならない。



黄金に輝く空の下
深紅の海が広がる中
我は目を凝らそう、その色に
我は溺れよう、その景色に
それこそ我が求める姿
それこそ己が求める形



唄い始めると同時に、私の髪の毛が金色に、瞳が紅色に変わっていく。
腰まで長かった髪も肩までの短いものとなった。


その様子を見ていたのか、ネジは縁側に座っていた私の姿を凝視する。
・・・ここは相手が話をきりだすまで待つとするか。


 「お前、どうしたんだ、その髪は。」

 「髪の毛?あ、あれ?短くなってる?」

 「それだけじゃない。色も変わっている。ついでに言えば、瞳の色もだ。」

 「色が変わる?嘘だぁ。ネジも冗談言う人なんだね。」

 「鏡で確かめてみろ。」

 「そう言われても。この部屋、鏡ないからまだ自分の姿見た事ないんだけど。」


記憶をなくしてる私が元々の容姿を覚えているはずなどない。
最後の一言に納得したのか、ネジはそれもそうか、と呟いた。


 「さっきの唄は、なんだ?」

 「分かんない。口を開いたら、出てきた。」

 「そうか。」


先ほどから『そうか』しか聞いていないような気がする。
なんだか、つまらない人だなぁ。
幾ら私が記憶喪失だからって、少しでも手がかりを得ようとすることしかしない。


 「ネジって今、彼女いるの?」

 「・・・は?」


しまった。いくら暇だと感じたからって。
唐突に聞くような質問ではなかったな。


 「それ以前に聞いてもいいか。」

 「なになに?」

 「お前は、何時の間に俺を呼び捨てで呼んでるんだ?」

 「別に何も言われなかったもん。で、答えは?」

 「いるわけないだろう。」

 「それは、ネジがモテないから?」

 「違う!」


モテないという言葉に過激に反応しなくても。
気にしてることを言ってしまったのかな?


 「俺は今は仕事に専念したいんだ。」

 「仕事?」

 「忍だ。」


この場合、反応しない方が良いのだろうか。
黙っていると、ネジは話題を変えた。


 「お前が元気そうなら、外へ出かけようかと思ったんだが。」

 「それは嬉しいけど、さっきから『お前』って呼ばれるのは気に食わない。」


せっかく、大蛇丸様の元から離れているのに。
偉そうにしゃべる人はあの人だけで十分。


 「我が侭だな、は。」

 「ネジの態度が悪いだけ・・・え?」

 「ほら、行くぞ。」


前を向いて歩き始めたネジの顔はよく見えなかったけど。
見えなくて、助かったかもしれないと思った。


ふいに名前を呼ばれたせいか。
きっと、今の私の顔は赤色に染まっているだろうから。





next


-back stage-
ネジ「こんなの早く終わらせて、帰るぞ。」
管「あっれー?ネジ君たら、なに照れてんのぉ?」
ネジ「て、照れてなんかいない!それより早く出かけるぞ、!」
管「それは構わないけど・・・アンタ、様まだ寝巻きなんだよ?」
ネジ「あ゛。」
管「忘れてたんかい。」

2005.09.04

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