鍵、掛けたっけ?




そっとドアノブに手をかけ、ゆっくりと手を回した。


かちゃり、と音がする。


この音は鍵がかかっていて、それでドアが開かない音。
そう願いたかったけど、残念ながらノブと連動するでっぱりが引っ込む時の音だった。


また鍵を掛けるのを忘れていた。


これで、何回目だろう。
自分でもいやになってくる。
何回も忘れないようにと心がけてるのに、同じことを繰り返してしまう。


そして、開いているということは・・・


 「やあ。遅かったじゃない。」

 「帰って下さい、カカシさん。」


人の家に勝手にあがりこむ人がいる。
何でか、この人は任務さえなければ何時もここにいるのだ。


 「つれないなぁ。今日はちゃんと言われたとおり、茶菓子持ってきたよ。」

 「そのエロ本を手にしながら喋らないで下さい。」

 「だって、暇だったんだもん。」


でも、客人は客人。
私は台所でお茶を淹れるべく、お湯を沸かす準備をした。
ソファにくつろいでいるカカシさんは、相変わらず本に目を通している。


 「いい加減、戸締りをきちんとするようにしたら?」

 「不法侵入するカカシさんには、言われたくないです。」

 「の身を案じて言ってるんだけど。俺は、いわば警備員。」

 「何も起こらないから、大丈夫ですよ。」


それだけ言えば、彼は黙り込んだ。
この話題はこれで終わりかと思っていたが、渋々といった感じでカカシさんは口を開いた。


 「この間、下着泥棒が入ってたのは、言わないでおこうかと思ったんだけど。」

 「・・・いつ?」

 「数ヶ月前かな。って可愛い下着を身に着けてるとは知らなかったよ。」


人が素直に感謝の気持ちを伝えようとすれば、この人は。
余計な事を言わなければ良いのに。


 「まさか、カカシさん。そのまま下着を盗んでませんよね?」

 「さぁ。どうだろう。」


かなり不安にさせる回答はいらないです。
彼の胸倉を掴んで真相をつきとめる。
ちゃんと言ってる言葉が伝わるように一つずつはっきりと発音しながら。


 「ぬ す み ま し た?」

 「いえ、あるべき場所に戻しました。」

 「それは、それは。どうもありがとうございました。」

 「お安い御用です。」


用意できたお茶を差し出して、私は床に座り込む。
カカシさんは恐る恐る、茶菓子を私に差し出した。


 「ありがたくいただきます。」

 「どうぞ。」


こんな日常はくだらない、と思いつつ楽しんでいたりする。
・・・もしかして、それで私は鍵を掛け忘れるんじゃないのかと考えるときもある。











いつもの習慣で、鍵を出す前にドアノブをまわしてみる。
しかし、今日は鍵が掛かっていた。
つまりは、カカシさんが不法侵入しているはずがない。



 「カカシさんは、いないか。」

 「呼んだ?」

 「うわ!?」


いきなり耳元で声をかけられて、大声を出してしまった。
カカシさんは何やら不満そうだ。


 「もうちょっと、色気のある叫びを・・・」

 「そう思うならいきなり耳元で喋らないで下さいよ。」


文句を言う私を無視して、彼は目を細めて私の頭を撫でる。


 「何ですか?」

 「今日は、ちゃんと鍵掛けたね。偉い、偉い。」

 「私は子供じゃありません。」

 「戸締りをキチンとできるようになったら、認めよう。」


もう、どうでも良くなってきた。
だけど、家の鍵を掛けたにも関わらず、訪れてくれたカカシさんに驚いた。
これならカカシさんが里にいる間だけは掛ける必要はないように思えた。
その分、彼の時間を私が独占できると考えたから。


 「する必要無いんでしょう。警備員さん?」


微笑を浮かべた私の意味をとらえたカカシさんは、頭を掻きながらぼやいた。


 「参ったな。そうきたか。」

 「もちろん、お土産は毎回お願いしますね。」

 「ええ!?それは、キツイ。毎日じゃないか。」

 「あ、食べ物は毎日違うので。」

 「またさらにお金がかかることを言う。」


ざまぁみろ、と心の中で気分がすっきりしているとカカシさんがまた発言をした。


 「じゃあ、土産の代わりにの下着でももらっていこうかな。」



すぐにでもタンスに鍵をとりつけておこうと先の事を考えた。
















-back stage-

管:うわ、あんたって意外と書くの難しいね。
カ:何が難しかったわけ?
管:口調。
カ:・・・え、それだけ・・・?
管:それだけ。
カ:そ、そう。まぁ、がんばれ?
管:安直なネタになってしまったのも悲しいな。話がよく分からんし。

2005.02.10

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