ある日突然、別世界と電波がつながった。


それは決まって、夜9時にかかってくる。






電話の音





携帯の着信メロディが部屋に鳴り響くと、すぐさま対応した。


 「今日はどんな用件で?」

 『ばーか、と喋るために決まってんだろ。』


くだらねぇ質問なんかするな、と文句を言われるけど、本気で迷惑だと思ってはいないことは承知だ。





彼と知り合ったのは一ヶ月前。
たまたまかかってきた電話を取ったことから始まった。


最初は、お互い不思議な事が起こったものだと思って終わりだった。
シカマルと名乗った彼は、電話を使わずに私の携帯に電話をかけたのだから。


だけど、シカマルが次の日同じ時間に私と喋るように試みると、また携帯につながった。
彼が別世界の人間だという事は、しばらく経ってから分かるようになった。






 『でよ、そん時に依頼主が・・・』


それからというもの、毎晩同じ時間に電話の音が鳴るようになった。
毎晩喋っていて飽きないな、と周りから思われるだろう。


でも、実際に毎晩会話をしていたわけではない。
私が出かけていて電話に出れないときもあるし、彼が任務で忙しくてつながる時間がない時もある。
今日の電話は三日ぶりだ。


 『お、そろそろ時間だな。』

 「もう?早いなー。久しぶりに会えたのに。」


本人に、ではなく声にだけど。
何時の間にか、シカマルの声を聞かないと不安になるようになった。


 『また明日会えるだろ。』

 「そうだけどさ・・・」


顔も知らないのに、シカマルのこと好きになったなんて可笑しいかな。


 『ちっ、面倒くせぇ。また明日な、。』


いつも名残惜しくて別れたくない私に、シカマルはいつも舌打ちを返す。
やっぱり、この気持ちは迷惑なんだろうか。









次の日の電話は、私の運命を変えるものとなった。


 「え。今、なんて言った?」

 『だから。やっと、お前がこっちに来れる方法をつかんだんだよ。』


あまりにも予想していなかったことから、思考が停止する。


 『?また阿呆面にでもなってんのか?』

 「なってないよ!」


思わずむきになって答えれば、どうだか、と愉快そうに笑われる。



 「本当に会えるの?」



不安そうに問いかけてみれば、シカマルの声は急に真剣になった。


 『ああ。だが、俺はお前を呼ぶ方法しか分からねぇ。』


それはつまり、私の世界に帰れないかもしれないということ。


 「それでも、会いたい。」


この世界を諦めることに抵抗はない。
いつかシカマルに会えたら、そうなると思ってたから。
迷いはすでに消えていた。


 『いいのか。』

 「うん。」


しばらく沈黙が続いたと思えば、シカマルは微笑んだ気がした。


 『よし。んじゃあ、面倒くせぇけど準備するか。』


シカマルが言うには、お互いの世界がつながる瞬間がチャンスのようだ。
よって、今もうつながっている状態では、会いに行くことはできない。



決行日は明日の晩。



 「なんだか、緊張するな。」


別れの時間がやってきても、もう名残惜しい気持ちはなくなっていた。


 『俺を信じろ。絶対に成功させてやるさ。』

 「信じないわけないでしょ、シカマルの言うことなんだから。」


緊張するのは、シカマルが私を見ても拒絶しないかどうかだよ。
決して可愛いとは言えないからなぁ。


 『見かけを気にしてるんだったら、俺もだ。』


シカマルに声をかけられて、彼の外見を想像してみる。
失礼ながらも、『面倒くせぇ』が口癖の彼が格好良いとは思えない。


 「そうだね。シカマル、実はすごくブサイクだったりして。」

 『いくらなんでも、そりゃねーだろ。』


否定はしねぇけど、と小さく漏れた言葉を私は聞き逃さなかった。
私が予想する以上に外見を気にしているようだった。


 「じゃあ、また明日。」


彼の台詞を奪ってしまえば、シカマルはどもりながら呟いた。


 『ちゃんとの面倒は俺が見るから、心配すんな。』







さて、残り23時間。

電話の音が聞こえるまで、何をしていよう?








-back stage-

管理:賢いシカマルでないとありえない設定でした。
シカ:別に俺でなくてもいいじゃねーか。
管理:確かに、ストーリー的にはありきたりかもしれないけど。
シカ:・・・それは俺のせいじゃねぇ。
管理:また君で書きたいな。
シカ:どうせ、俺の台詞は『面倒くせぇ』だけだろーが。

2005.09.29

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