「封印術をかけられたというのは、本当だったのね」


金属がぶつかり合う、鈍い音が空気に響いた。


永遠に




 「久しぶりに会ったというのに、随分なご挨拶ですね」


突然振り下ろされた短剣をジェイドは槍で受け止める。
彼が彼女の出現に驚かないでいる事に苦笑しながら、相手は間を置いた。


 「な、こいつ、何なんだ?」


怖いもの知らず、というより世間知らずなルークがジェイドに声をかける。
相手が攻撃をしてこないのを見て、ジェイドは簡単に説明をした。


 「私の元戦友ですよ。名をといいます」

 「ジェイドこそ冷たいじゃないの、その態度。昔はよく二人で遊んだっていうのに」

 「アレが、遊びですか」


戦場での彼女の戦いぶりを思い出したジェイドがため息を漏らす。
それを見たは、顔をしかめた。


 「遊びだったでしょう。私にとっても、あなたにとっても」


状況が掴めないルークとティアは、ただ呆然と二人の話を聞いていた。
それ以上は言うな、と目で訴えるジェイドを見ると、は短剣を持ち直した。


 「何でも良いけどね、貴方と戦えるなら」


短剣が再び振りおろされる。今度は、ガイがそれを防いだ。
その隙にジェイドとティアが詠唱を唱えるが、に先を越された。


 「サンダーブレイド!」


雷鳴が地に轟き、ジェイド以外は避けられずに攻撃を受けて気を失ってしまった。
幸いにも、彼らは致命傷を負っているわけではなさそうだ。
その事を瞬時に判断すると、ジェイドはに向き合った。


 「さすが、ジェイド。封印術かけられたぐらいじゃ、殺られないか」

 「貴女も、相変わらず素早いですね」


倒れた彼らを巻き込まずにこの場を逃げる事を考えていると、またがジェイドに近づく。


 「戦闘中はよそ見をしない、でしょ」


不適な笑みを見せて、はジェイドの右肩を傷つけた。
痛みに耐えながら間合いを置くが、傷は深く、右腕を動かせそうにもない。
彼の肩から流れる血を見ながら、は短剣についた液体を舐めとった。


 「簡単すぎて、つまらないなぁ」


今度は彼の腹部を狙うが、ジェイドは上手くかわす。
舌打ちをしたは、退屈そうに頭を掻いた。


 「ま、どうせジェイドの事だし、解こうとしてるんでしょ?」

 「?」


短剣をしまう彼女の行動を見て思わず名を呼んでしまった。
は彼の言葉に耳を傾けず、彼に近寄ると怪我をした肩に治癒術をかける。
自分で深く斬り付けた傷口が塞がるのを確認して、は優しく微笑みかけた。


 「今のジェイドを倒しても、満足できないわ。私は、貴方と真剣勝負したいの」


そのために、対立することを選んだんだから。

彼女のその笑みに、ジェイドは過去を見た気がした。
ただ、ひたすら自分の求めるモノを追い続けていた姿を。
そして、それを止めることは難しいという事を思い出す。


ジェイドは苦笑しながら、やれやれ、と肩をすくめた。


 「できれば、とは戦いたくありませんが。言う事を聞いてくれるわけないでしょうね」

 「昔の約束を果たすだけじゃない。お互いの実力を見せ合おうという約束を」


戦場での会話。
共に生き残る為に交わした約束だった。
しかし、彼らの実力での真剣勝負は、すなわち死を意味している。
それほどまでの力を持つゆえに、周りが彼らの戦いを阻止し続けていた。


 「早く解除して、本気を出せるようにしてよ」

 「そのような事を言われては、解除する気が失せてきました」


互いに笑いあっているのに、気持ちが通じ合っていない。
だが、は気にしていないようだ。


 「次に会う時、情けは無用だから」

 「当たり前です。私の邪魔をすると言うなら、とことん相手になりますよ」


今ボロボロにやられた人の台詞とは思えないわね。
そう言い残すと、は姿を消した。


 「やれやれ。厄介事が、増えてしまいましたか」


できれば、このまま彼女と会う事がなければ良いのですが。



ジェイドが見上げた空は、彼の心境とは裏腹に快晴だった。











-back stage-

管理人:設定としては、ゲーム序盤です。お題31と同一主人公。
ジェイド:おや?イオン様が居られないみたいですが?
管理人:戦闘モード時は出てきようがないじゃないですか。
ジェイド:それもそうですね。ところで、この話では彼女の名前が違うんですね。
管理人:はい、名前変換を設定してない方は気付くでしょうが、この子は違う名前なのです。
ジェイド:まさか、気分の問題で名前を変えたとか言うのではないでしょうね?
管理人:しませんてば!この子の背景が思いのほか膨れ上がっていって、自分の中で名をつけた。
ジェイド:それならば、始めから同一主人公として短編を書けば良いじゃないですか。
管理人:だけど、君とアッシュ(とピオニー)以外は考えてないんだ、話を。だからお題で消化。
ジェイド:なるほど、だから題名と内容が一致しないと。ああ、これは言ってはなりませんでしたか?

2006.07.11

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