境界線
期末テスト明け。は、重い足取りで登校した。
「部活、バイトに勉強。全部バランス良くやるのは難しいよね」
今の自分を励ますかのように、彼女は呟いた。
今回のテストで赤点を三つとってしまったは、補習を受けるために学校に来ていた。
「赤城くんなら、こんな事もないんだろうな」
偶然に出会う事の多い、はばたき学園の生徒の顔を自然と思い浮べる。
彼の通う学校は、勉強ができる人が多いことで有名だ。
「やっぱ、一流大学に行くのかなぁ」
そんな高校に通う彼が、一番レベルの高い大学を目指さないわけがない。
進路など、まだ決めていないだったが、勉強ができる人を自分と比べ始めると凹む。
ただでさえ違う高校に通っているのに、さらに彼との間に距離ができたようで、寂しく思えた。
そんな暗い事は考えるな、と気合を入れなおす為、彼女は空を見上げた。
そのまま補習を受ける教室に目を向けると、窓に担任の姿が見える。
相手がすでに待っている事に驚いたは、慌てて学校の中へ入っていった。
「オッス。こんな所でも会うなんて、奇遇だね」
玄関には先ほどまで自分が思っていた相手がいて、は戸惑った。
しかし、挨拶をしないのも失礼にあたるので、何事もないかのように振舞って近寄った。
「オッス。赤城くんは、どうして此処に?」
「生徒会の野暮用。君は?」
「あたしも・・・野暮用」
まさか補習だとは言えず、は言葉を濁す。
そんな事だとは気付かずに、一雪は話を続けた。
「そうなんだ。テスト明けだし、てっきり補習かと思ったよ」
笑顔で喋る彼に、はカッとなる。
彼のように勉強ができないことを悔やんだばかりだった。
それを出来る人に指摘され、何だか相手に馬鹿にされた気分になった。
「そうだよ、補習だよ。ごめんね、あたしは赤城くんと違って馬鹿で」
彼女の棘の刺さる言い方に、一雪は顔をしかめる。
「何だよ、その言い方。僕に文句でもあるわけ?」
「別に。頭が良いのは羨ましいなと思っただけです。やっぱ、はばたきは違うよねぇ」
嫌味を言ってることが分かった一雪も怒った。
「ああ、違うさ。それじゃ、僕は行くよ。君と違って、忙しいから」
「それは、それは。お忙しいところ引き止めて、すみませんでした!」
来客用のスリッパに履き替えた一雪は、怒ったままその場を離れた。
パタパタと足音が遠のいていくうちに、は熱がひいて後悔し始めた。
自分の苛立ちを彼にぶつけてしまった事の方が情けなく思えた。
今なら、まだ間に合うかもしれない。
頭を冷やした彼女は、靴を履き替えることも忘れて、一雪の後を追った。
そして、彼の後姿をとらえると、その背中に向かって叫んだ。
「これは、すごく大きな独り言だけど!」
の声で振り向いた一雪の目には、申し訳なさそうな顔で拳を握り締めているが映る。
「さっきは、ごめんなさい!」
は意地っ張りで、最初に謝るのはいつも一雪の方だった。
そんな彼女が、今にも泣きそうな表情で謝っているのだ。誰が許さないと言うだろう。
一雪は笑って叫び返した。
「勉強、がんばって!」
許してもらえたことに、は安心して微笑んだ。
だが、その幸せにひたる時間は与えられなかった。
一雪は笑顔を見せたまま、続けた。
「その前に、ちゃんと上履きに履き替えてから行きなよ!」
-back stage-
管理:話が浮かんでしまって、衝動的に書いてしまった。
一雪:だから、話がちゃんとまとまってないんだ。
管理:ま、まとまってないかな、やっぱり・・・冷静になれなくて分からん。
一雪:そんなモノをのせたら駄目だろう。
管理:うー・・・いいの、自己満足だから。
一雪:それで客を逃さなきゃいいね。
管理:うるさいよ、君。ちなみに、「境界線」は普通に二人の関係を示してると思って選びました。
一雪:つまり、話の内容とは全く関係ない、と。
管理:口を閉じてください、あなたは。
2006.08.29
ブラウザでお戻り下さいませ