「マオったら、いつも突然来るんだから」

 「えー?が怒ってるのが聞こえたから、帰ってきたんだよ」


もっと喜んでくれたって良いじゃない。
文句たれるマオだが、の怒りは増す。


 「圏内に居たなら、もっと早く来れたんじゃないの?」


彼が人の心を読み取れる距離は限られている。
その限られた範囲に、は自分の思いが伝わっていたことが何だか恥ずかしかった。
本人が訪れるまで、ずっと彼に対する愚痴を零していたからだ。


 「だって、僕、我侭なやつ嫌いだもん」

 「それなら、来なければ良かったのに」

 「来なかったら殺されそうだったからねぇ。仕方なく来たってわけ」


はマオが偉そうにソファに座る様を睨みつける。
その手には包丁を握っていた。

いっそのこと、刺してしまおうか。
殺気を感じたマオは、慌てて言い直す。


 「ま、まぁ、の手料理をご馳走になりたいなぁと思ってたから、ちょうど良かったんだけど」

 「これぐらいの冗談で慌てるなんて、マオもまだまだね。本当に心を読めてるの?」


くすりと笑うが、マオの心境は穏やかではない。
には殺意以外の感情が心に表れていなかった。
ある意味、彼女には逆らえないと悟る。


 「それで、マオは、どうして圏内にいたわけ?」

 「しばらく顔を出しに行ってなかったから、怒ってるかもしれないなぁと思って」

 「へぇ。それぐらい分かってるなら、わざわざ人の心を読む前に来ればよかったのに」


先程と同じ過ちを繰り返すマオに容赦しない
彼の髪を掴んで、包丁に当てた。


 「ご、ごめんなさい!僕が会いに来たかったんです、ごめんなさい!」


言う事を聞いたのを見届けて、は髪を切ることも無く手放す。
マオは、寿命が縮まった思いでいた。


 「やっぱ、C.C.が一番だよ。彼女は、みたいに乱暴じゃないし、優しいもん」

 「また彼女の話?こっちは、うんざりしてるんだけど」


マオが彼女をどう思ってるかだなんて、どうでも良いわよ。
心の声を聞いたマオが怒った。


 「C.C.を馬鹿にするなら、相手がでも容赦しないよ」

 「あのねぇ。私は、どうでも良いと思ってるだけであって、批判はしてないわ」


マオを馬鹿にするくらいなら、いつでもできるけど?
鼻で笑った彼女に腹を立てて、マオは家を出て行った。


 「やっぱ、子供ねぇ。女心が分からないなんて」


誰だって、好きな人が他の女の話なんかすれば、どうでも良く思えるわよ。
の声が聞こえる範囲にいるはずだが、マオは帰ってこない。
いつまでも届かないこの思いをいつ諦められるのかと、は気が滅入った。



一番好きなひと









-back stage-

管理:どうしてもマオとは甘い話が書けそうに無いな。
マオ:だって、僕の一番はC.C.だもん。当たり前でしょ。
管理:原作を無視しても書けるのが、夢見る者のすごいところなんだけどなぁ。
マオ:じゃあ、君がそれを望んでいないんじゃないの。
管理:「じゃないの」、て、アンタ、人の心読めなかったっけ?
マオ:読み取る相手ぐらい、ここでは選ばせてよ。
管理:・・・私の心は腐ってるとでも言うのか。

2007.04.02

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