突然の訪問者に目を疑いつつ、俺は声をかけてみた。
「何やってるんだ、?」
窓から外を眺めている後姿。
相手は、数年前に俺が軍を辞めさせたはずの女で。
そんな人物が、俺の自室にいる事が不思議に思えてならなかった。
「久しぶりだね、ウパラちゃん」
「俺をその名で呼ぶな」
変わらないな、こいつは。
真面目な顔して冗談を言うんだから、たまに本気なのかと無駄に悩んじまう。
苦笑しながら俺も窓へ近づいた。
こんな時でも可愛い事に、俺のペットは足に擦り寄ってくる。
「陛下は、こんな生き物に愛情を注いでるのね」
「何だ、ヤキモチか?安心しろ、への愛も忘れてないぞ」
「相変わらず馬鹿な事言ってるんだ、陛下って」
分かるようにため息を吐いて、目線を外す。
久しぶりに会話をするというのに、顔を見れないのは残念だ。
俺は、わざわざが興味を持っている話をきりだした。
「ジェイドなら、今、同じ建物の中にいるぞ」
「そうなんだ」
アイツの名前を聞くだけで笑ってたはずなのに、反応が薄い。
もうジェイドを殺すことを諦めたのか?
「興味ないのか?」
「ここで殺す気は無いの。それに、今日は陛下の顔を見に来ただけだし」
「嬉しい事を言ってくれるな。そのまま、俺からの愛も受け止めてみないか?」
「無理に決まってるわ、貴方は私にジェイドを殺らせてくれないもの」
「そりゃ、俺の大事な有能な部下だからな」
確かに、逃げる事が難しいであろう状態で戦いたくは無いだろう。
だが、は難なく俺の部屋に侵入してきた。
そんな事ができるなら、逃げる事は問題でない気もする。
しかし、俺に会いに来たと本人も言っているわけだし、ここは喜ぶだけで済ませよう。
口を開こうともせずに外を眺めるに、皮肉のつもりで言った。
「しかし、ジェイドも愛されてるな。殺したいほど想われてるだなんて」
「愛してるわけじゃないわよ。それに私、昔は陛下の首を狙ったことがあるの。知ってた?」
それは、初耳だ。
が俺の顔を見つめながら、淡々と過去話をした。
「そもそも、マルクト軍に入った理由が、貴方の暗殺のため。結局、依頼人を殺して止めたけど」
「それは、またどうしてなんだ」
そんな事、聞かなくても答えは分かるがな。
今日、初めて見る笑顔では答えた。
「だって、ジェイドを殺す方が楽しそうだと思って」
全く、何でこいつは、こんなにも可愛いんだ。
そんな風に顔を赤らめる対象を俺にして欲しいね。
殺されたいとは思わないけど。
「大丈夫よ。彼を殺したら、遺体は貴方に贈るから。盛大に葬式をだしてちょうだい」
「あんなヤツの死体は要らねぇぞ。お前のなら、大歓迎だ」
無言でお前を見ていただけなのに、何でそうなる。
本心を伝えれば、相手には嫌そうな顔をされた。
「私、死ぬ時は自分の体を燃やしておく」
「そうしたら、ジェイドに遺灰を届けるよう言っておこう」
「・・・ウパラちゃんは、私がジェイドに負けると思うわけ?」
お、珍しく不貞腐れてる。
てっきり怒るかと思っていた俺は、拍子抜けた。
「アイツが、誰かに負けるなんて想像できないからな」
「私が負けるのは、想像できるわけ?」
「それも無理だな」
「どっちなのよ」
ますます頬を膨らませる。
可愛すぎて、のその頬にキスをした。
だが、こいつはそれには無反応。
「おい、何か感想は無いのか?」
「そんな事をしても、私の気持ちは揺るがないわよ」
「可愛くないな、反応が」
「だったら、始めからキスなんてしないで」
キスもできるくらいの距離にいたは、帰るみたいだ。
背を向けて、真っ直ぐドアへと向かう。
「そっちは、兵士がいるぞ」
「知ってる」
一応忠告してみたが、平気そうに去ろうとする。
本当に、どうやって入ってきたんだか。
「また遊びに来いよ」
「気が向いたらね」
そう言って、はドアの向こう側へ行ってしまった。
しばらくそのドアを見つめた後、俺は足元に近づいてきたジェイドの頭を撫で始めた。
「も飼い始めるかな」
だけどジェイドとの間に子供ができたりするのは気に食わないから、十分に気をつけて世話をしよう。
そう心の中で決めて、早速、新しくブウサギを飼う準備をし始めた。
君との距離
-back stage-
管理人:31と80の女主と同じ設定でございま〜す。
ウパラ:ちょっと待て、何故俺の名前がコレなんだ!
管理人:三文字枠で、ちょうど綺麗に名前の部分が並ぶのよ。
ウパラ:だったら、「陛下」でも良いじゃねぇか。
管理人:分かったよ。正直に、ウパラって言いまくりたかったと言えばいいんでしょ。
ウパラ:おい。で、俺は何か?敵わぬ恋をする運命でも負わされてるのか?
管理人:そうかもね〜。あはは、いいじゃん、シリアスよか甘めになったし。
2006.07.21
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