手紙
「はいけい・・・て、どうやって書くんだ?」
本来ならば、まだ授業を受けているであろう時間。
一は出席もせずにバカサイユで頭を抱えていた。
「背景・・・で、いいとして」
その続きが思い浮かばなくて、手を止める。
らしくもなく、手紙で想いを届けようとしているのが原因もかもしれない。
しかし、彼はめげずに書き続けようとした。
「ハ〜ジメ!なにしてるの?」
背後から抱きついてきた悟郎のせいで、邪魔が入る。
気分転換にもなるだろうと思い、彼は答えた。
「手紙を書いてるんだよ、に」
「に?それって、つまり、ラブレターだ!」
悟郎は楽しそうにするが、耳元で叫ばれてる一にはいい迷惑である。
「まあな・・・なんでも、直接伝えるよりも心がこもってるって、衣笠先生が言ってた」
「うーん。それは、人にもよると思うけど・・・手紙もいいかもね」
「分かったら、離れろ。書き終わったら、タマに送らせるつもりなんだ」
集中し始めた一が相手をしてくれないのを察して、悟郎は大人しく下がる・・・はずもなかった。
「だめだめだめー!そんな言葉じゃ、愛は伝わらないよ!」
「そ、そうか?」
「そうだよ!もっと、こう、情熱的な言葉を並べていってさ〜」
「『おまえへの思いが熱すぎて、爆発してしまいそうだ』とか?」
「・・・ねえ、本当にラブレターを書く気?」
不安を隠さずに聞くと、一はばつが悪そうな顔をした。
助言など受けず、自分が書けるものを書こうと決めた彼は悟郎を突き放した。
「こうしておまえに手紙を書くのは、ちょっと恥ずかしいな。・・・えーと、次は・・・」
まだ書き始めたばかりの手紙の続きを書いていると、突然、バカサイユが騒がしくなった。
「まて、仙道!今日こそ、ぶっ殺してやる!」
「キシシシ!俺が捕まるわけねぇだろ?」
暴れまわる二人の騒音に耐えながらも、一は手紙を書く。
しかし、清春が放った水鉄砲の液体で便箋が汚れた。
「おまえら・・・部屋の中を汚くするなって言ってるだろーが!」
さすがに紙が台無しにされては、一も黙っていられず。
結局、叱られたことで逃げた二人に代わって、一は黙々と部屋の中の掃除をする。
そんな一を不憫に思ったのか、黙って彼の様子を見ていた翼が声をかけた。
「一。letterが駄目になったなら、新しいのが必要だろう。俺のを譲ってやる」
「お、サンキュ・・・て、なんだ?この紙・・・金色?」
引きつった笑みで便箋を受け取る。
翼の趣味を分かっていたとはいえ、一はつっこまずにはいられない。
「ふっ。金箔だけで作らせた用紙に、シルバーの粉をまぶした」
「て、うお!?ちょっと持っただけで破れちまったぜ?!」
「なに!?それを作らせるのに苦労したんだぞ、一!なんてことをする!」
翼がどれだけの品かを延々と語り始めたので、一は慌ててバカサイユを出て行くことにした。
「よし!ここなら、誰も邪魔してこねーだろ」
屋上には机がないため書きにくいかもしれないが、少なくとも瑞希以外、人は誰もいなかった。
「んーと・・・今日は、に言いたいことがあって、手紙を書きました・・・」
順調に筆が進む。
と、そこに何やら馴染みのある音がした。
「こ、この音は・・・もしや、瑞希の・・・」
次の瞬間、空から大量の爬虫類が降ってくる。
召喚者である瑞希は埋もれて大変なことになっていた。
「すげー!今度もまた、珍しいのがいっぱいいるぜ!」
そして、一はすっかり手紙のことを忘れて、爬虫類と戯れていた。
「結局、放課後になっちまった・・・」
白紙の便箋を目の前にし、一はため息を吐く。
約束の時間だと、タマは教室で待っていた。
「タマ・・・わりぃ、もうちょっとだけ、待ってくれ。すぐ書き終えるから!」
急いで自分の思いを書くと、一は封筒に入れてタマに渡す。
それを口で受け取ったタマは、どこかにいるのもとへと走っていった。
「あれ、タマ?」
授業も終わったので帰ろうとしたを引き止めたタマに、彼女は屈む。
しきりに手紙をつきつけてくるので、それを受け取って欲しいということなのだろう。
その場で読むのを待っているのか、タマはの足元から離れない。
「ちょっと待ってね。今読むから」
封筒から便箋を取り出し、は目を通す。
しばらくしてから、タマに笑顔を向けた。
「この手紙を書いた人に伝えてくれる?名前くらいは書け、て」
にゃー、と泣いたタマが去っていく。
恐らく、手紙の差出人に今の言葉を伝えるのだろう。
はまた名無しのごんべからの手紙を見る。
そこには、大きく『好きだ!付き合ってくれ!』と書いてあった。
-back stage-
管理人:呪いに打ち勝つには、小説を書くのが一番かと悟ったので書いた。
ハジメ:え・・・俺が書きたかったからじゃねぇのか?
管理人:ぶっちゃけると、とある企画夢に提出するネタの1つだったけど失敗したからこっちに。
ハジメ:そうか。あくまでも、俺が書きたかったんじゃないんだな。
管理人:あ、でも、小野Dの呪いだから、一だけじゃ足りない?うわ、やべー。
ハジメ:おい。せめて、俺の話をしろよ、ここはあとがきだろ!
管理人:ごめん、いたんだ?
ハジメ:・・・・・・・・・。
管理人:あー、へこんじゃった。(※愛ゆえに、妥当?な扱い方)
2008.05.05
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